多摩川ヨシ原探索

2005.Dec.29

研究室連続来室記録を更新し続け360日を達成したこの日。 午前中に仕事を全部終わらせて、昼前には無事帰途につく。 午後からは多摩川のヨシ原を探索する予定にしていた。

今回の目的は、キイロホソゴミムシという小型のゴミムシ。 東京湾周辺と房総半島東側に分布が限定され、良好なヨシ原にしか生息しない。 河口と干潟の環境変化により絶滅に瀕しており、 現在の安定した生息地は千葉県の1ヶ所のみとされている。 原産地の東京でももはやその生息は絶望視されていた。

ところが21世紀になり、多摩川河口の神奈川県側で突如発見された。 対岸にはもっと広大なヨシ原があり、生息している可能性は高い。 でもなかなか調べる人がいないようなので、 新生息地発見を目指して、いざ出発。


13時30分、自宅を出発。 自転車でいつもの道を通って河川敷へ。 そこからサイクリングロードでひたすら河口をめざす。 でも、なんか工事している場所が多いような。

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河口に近づくにつれて工事箇所が増える。 本当に大丈夫なのだろうか?

橋を何本かくぐって、14時に目的地到着。

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かなり広大なヨシ原が目の前に広がっています。 とりあえず、工事で消滅ということはなくて一安心。

次は、自分がイメージした場所を探すこと。

簡単に言えば、干潟のような場所で、乾きすぎず、泥深くなく、ヨシの葉が敷き詰められている場所。 これをイメージしながら堤防を降りてヨシ原に近づく。

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ところが、近づいてみるとヨシの根元は水没している。 地図では陸地となっていたのだが。

仕方ないので、岸に近い部分で条件にあう場所を探す。 しかし条件にあう場所はそう簡単には見つからないものである。

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なんか網で護岸されています。

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消波ブロックとコンクリート護岸。

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水面との段差が大きく泥がない。

とりあえず、イメージとはちょっと違う場所でもゴミ起こしをしてみることにする。すると.....、

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いきなりカニが出現。そういえば付近の泥に穴があいていた。 ザリガニではなくカニの穴だったのか。 この後、無数のカニを見ることに。

小さな石をひっくり返すとトビムシ団子が爆発する。 茶色の個体が多い中に赤い個体もいてキイロホソゴミムシに見えてちょっとびっくりする。

さらに、海岸が近いということで

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フナムシまで出現。 石の下に結構な数が越冬している。

他にはクモ、ザトウムシなどが多数出現。 ここまでゴミムシ、甲虫はおろか昆虫を見ていないのでフナムシを2匹だけ採集。

2時間ほど探索したもののフナムシしか採れず。 ハイイロヤハズカミキリを狙うにしても折るべきヨシが多すぎる。 周辺部だけでも数千本はありそう。 10本ほど折って出なかったので、再びゴミムシ探索へ。

16時、だいぶ日が傾いてきて寒さも厳しくなってきた。< 帰る前にやや乾いた場所の木の板を起こすと

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やっとゴミムシが出現。体長7ミリ、記念に採集。

最後に、ちょっとだけ材採集。 ウメの枝が折れていたのでさらに折ってみると、

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食痕出現。さらに、幼虫も衝撃で飛ぶ。

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トラカミキリ系とみられる。海岸に多いヨツスジトラか、フタオビミドリトラか。 どちらも東京都では未採集なので飼育することに。


ヨシ原があればキイロホソゴミムシがいるというのは安易な発想だったのだろうか。 遠くからは同じように見えても近くで見ると根元の環境はだいぶ異なる。水没していたり乾燥して陸地化していたり。 干潟のような環境はなかなかない。キイロホソゴミムシが絶滅に瀕していることの意味がほんの少しだけわかったような探索活動でした。


あれから5ヶ月

ウメの枯れ枝に穿孔していたカミキリムシ幼虫はフタオビミドリトラカミキリとなって姿を現しました。


それから、さらに9ヶ月


キイロホソゴミムシ

二度目の挑戦で、ようやくその姿を拝むことができました。

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