奥多摩:東京都最高峰

2006.Aug.20

東京都の西端にある雲取山。 東京都で一番高い山です。 8月も下旬に入り、下界ではセミの声は相変わらずですが 甲虫の数は少なくなりつつあります。 すぎゆく夏を追いかけて、 標高2000mを超える亜高山帯へ日帰りで行ってきました。

注:雲取山山頂付近は特別保護地区になっています。昆虫採集はできませんのでご注意ください。


土曜日、夜勤明けで一度自宅に戻り、 再び水田に来て荷物を整えて奥多摩行きの電車へ。

終バスに乗って、鴨沢へ。 鴨沢からの登山路は最短かつ安全とされています。 夜の登山は危険なので夜明けを待ちます。

夜が明けました。

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朝5時ちょうど、バス停を出発です。

集落を過ぎ、植林あるいは雑木林の中をひたすら歩きます。

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道はゆるやかな登りで単調な景色が続きます。 虫が集まりそうな明るい場所はほとんどなく、 網を一度も振ることなく歩き続けます。

何度目かの植林を進んでいたとき、目の前を路上を 黒くてフサフサした物体がこちらに向かって 少しずつですが動いてきます。

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どうやらモグラのようです。 ハエがたかっているところを見ると死んでいるようです。

では、なぜ動いているのか?

さらにじっくり見ると、下の方に黄色い触角が見えました。

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ヨツボシモンシデムシ

モグラをひっくり返してみると8匹ほどいました。 糞虫やシデムシなどはすぐに酢酸エチル処理すると腸の内容物が悪臭を放つ可能性が高いので、 糞出しをするため生かして持ち帰ります。

しばらく歩き続けて6時30分、尾根までの中間地点に到着。

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昔の人はここに来てバクチをやっていたそうです。 なにもこんなところまで来なくても、というくらい遠いです。

休憩の後、さらに歩き続けて、分岐点に到着

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7時ちょうど、七ツ石山直下です。

この少し手前にノリウツギを発見。

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が、花はとっくに終わっています。 あと2週間早ければ咲いていたかも。 リョウブは今年関東ではダメみたいだし、 これでは尾根に出ても花は期待できない・・・。

ちょっと登ると七ツ石小屋に出て、それを過ぎると水場に出ました。

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ペットボトルに水を補充です。 大学の冷水機並みの冷たさ(4℃?)でした。

さらに登ると、ようやく尾根に出ました。

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明るいところには必ずマルバダケブキが咲いてます。

尾根沿いに歩いて、坂を登りつめると七ツ石山に到着です。

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頂上は開けていて石がごろごろ。ミヤマハンミョウがいたので採集。

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山頂で記念撮影。まだ日差しも弱い、朝の7時30分です。

これから先は尾根沿いに進むだけです。

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マルバダケブキのみのお花畑

奥に見える尾根の防火帯にも黄色い花が咲いているのがはっきりと見えました。

休憩の後、最高峰目指して再び歩き始めます。

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道沿いのノリウツギの花

もうすっかり終わっています。

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これも花が終わった後の株。 あと2週間早ければ・・・・。

ところが、意外なことに

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リョウブは、花が咲いている!

林道沿いでは今年はつぼみさえ見なかったのに、ここではいくつかの株が花をつけていました。

ただ、まだ朝早いため、 帰りに掬うことにして先を急ぎます。

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道は多少の起伏はありますが基本的に明るい道です。 周囲はカラマツ林か落葉広葉樹林です。

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そして、道の脇にはマルバダケブキ。 シカが食べないこの植物だけが生き残り、ミヤマシシウドなどは食べ尽くされてしまったみたいです。 花畑の中にはシカ糞が非常に多く、花畑から逃げていくシカの姿も目撃しました。

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マルバダケブキの花に来る虫といえば90%がハナアブの仲間。 擬態のモデルとなるハチはごくわずか。

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こんな感じのアブたちです。一番左のみ、本物のハチです。

チョウではイチモンジセセリが多いです。

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山ではおなじみのアサギマダラ。それほど数は多くありません。

しばらく歩くと、なにやらいい香りがします。

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モミの伐採木が大量に積まれています。今年、伐採が行われたようです。

(国立公園の特別地域なのにいいのか・・・・?)

ここなら、依頼されたシラフヒゲナガが絶対いるはず。 そう思って探索を始めました。

5分後

材にいるのは①アリ②ハエ、 以上。もう一度、帰りに寄ってみることにします。

しばらく歩くと、開けた場所が。

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近くの看板を見ると、

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ヘリポートだそうです。 時間は、8時20分。山頂まで、あと3分の1。

しばらく進むと、唐松谷との分岐に出ました。 ここで、前から来たおじさんから質問

「なに採ってるの?」「チョウチョ?」 「チョウチョは採っちゃいけないんじゃないの?」 「腕章がいるんじゃないの?」

国立公園だとこういう人は必ず一人はいます。

①国立公園だから昆虫採集禁止だと思っている人

②チョウだけ特別扱いして採集禁止と思っている人

①は知らない人が多いからまあ仕方ないなと思いますが、 ②はちょっとね・・・。自然保護とは何かをもっと勉強してくださいね。

で、ちょっと休んでいるとTKM事務局さんと偶然にも再会。 おじさんが腕章のこと言ってた理由がわかりました。 ちょっと情報交換して、先に進みます。

しばらく進むと、あらかじめ地図に記入しておいた特別保護地区に突入。 ここから先は昆虫採集禁止なので網をしまいます。

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植生もなんとなく変化してきました。

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見慣れない針葉樹の葉です。

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部分的にきつい登りもあります。

しばらく歩いて、ようやく雲取避難小屋に着きました。 頂上はすぐそこです。

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9時40分(鴨沢から4時間40分)で東京都最高峰に到着しました。

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期待していた展望はあいにくの曇りで何も見えず。

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あたりの岩場にはミヤマハンミョウが多いです。

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採るのはダメでも撮るならOK

しばらく休憩した後、モミ伐採木・リョウブ花目指して来た道を戻ります。

高速移動をしてまずはモミ伐採木に到着。 荷物を置いて探索開始。

10分後

やっぱり甲虫は何もいない・・・。時期が遅いのか・・・。

再び高速移動を開始し、TKM事務局さんに追いつく。 スウィーピングで樹上性ゴミムシやら良いタマムシを採ったようで、さっそく私も真似します。

あちこちかまわず掬ってみるとガが意外と多く飛び出してきます。 網の中を覗くと、アトキリゴミムシの仲間がわりと入ります。

枯れ枝を掬ったら、

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かなり擦り切れたシロオビチビカミキリ。 今日見た初めてのカミキリです。

適当に掬いながら歩いて、先程通過したリョウブの所まで戻ってきました。

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いい具合に花が咲いていますが、雲行きがなんだか怪しくなってきていて虫も少ない・・・・。

とりあえず掬ってみるものの、ヤツボシハナカミキリ1♂、エグリトラカミキリ1ex.のみ。 もうカミキリは終焉なのか・・・。

そのまましばらく掬って、七ツ石山付近まで戻ります。 ふと来た道を振り返ると黒っぽいチョウが飛んできます。 そのまま私の横を通り過ぎ、岩場に止まりました。

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キベリタテハです。翅が欠けていますが、 東京都ではなかなか採れないので慎重に網をかぶせて捕獲。

少し歩いて山頂に来ると、今度は翅が完全なキベリタテハが。 今度も捕獲に成功し、網越しに胴体をつかんだ次の瞬間、急にはばたいて指をすり抜け飛んでいってしまいました。

がっかりして、そのまま鴨沢への分岐点に来た時、 急に晴れてきたので先程のリョウブの花へ急いで戻ります。

花を見ると、先程と同じく何も来ていない。 一応掬ってみると、意外にもハンノアオカミキリが。カミキリはこれだけでした。

その後、帰路についた辺りで雨が降ってきました。 急いでバス停を目指します。

途中、朝見たモグラを再確認。

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場所がちょっと移動していてmシデムシの姿はなく、 かわりにハネカクシとセンチコガネがいました。

午後3時、バス停周辺まで降りてきました。 ここで、朝通る時に気になったクワの前で休憩。

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道端に生えている、樹高4mほどのヤマグワ。 どこが気になったかというと、葉脈に沿って走る筋状の食痕。 この時点では雨も止み、晴れ間が出ていたので、 長竿を構えて先週と同じように梢を見つめます。

5分後

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イッシキキモンカミキリ

やっぱりいました。 場所はギリギリですが初の山梨県産です。

さらに、こんな虫もいました

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アカスジキンカメムシ

一部分だけ体色が変わっていました。

バスの時間もあるので、短時間で切り上げてバス停へ。 3時32分のバスで奥多摩駅に向いました。


学生のうちに一度は行ってみたかった雲取山に、強行スケジュールながら行ってきました。 天候がいまひとつだったこともありますが、 もう1~2週間早く行っていればもっと虫が多かっただろうという感じです。

一応、ひそかに期待していた蜂擬態カミキリの最高峰を、

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麓の方で生息だけ確認してきました。 来週、この場所でなくてもいいのでなんとか出会いたいものです。

途中でお会いしたTKM事務局さん、現地の情報ありがとうございました。

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