ミニ採集:晩夏の里のカミキリ

2006.Aug.13

このところ山地での採集が多く、下界で昆虫採集をしていない気がする。 奥多摩:晩夏のクワ探索が午前中で終了し、まだ体力が残っているので、 今が旬の里のカミキリを帰り道の途中で探索してみました。


その1 ブドウトラカミキリ

基本情報

栽培ブドウの害虫として有名なカミキリです。 成虫は晩夏に出現し、生枝の新芽に産卵します。 孵化した幼虫は新芽の周辺の樹皮下を少しだけ食べてから越冬します。 春になると摂食活動が盛んになり、樹皮下を環状に摂食して枝を枯死させ、 材部を猛烈に食い進み、樹皮を残すだけにしてしまいます。 晩夏に蛹室を作って蛹化・羽化し、数日間留まったのち野外に脱出します。

ということで、そろそろ成長が早い個体は出現しているはず。 でも、成虫は野外で見つけるのは困難らしいので、確実に採集するなら材割りです。

家へ向う電車を途中下車し、昨年ブドウトラを採った稲城市某所へ。

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道端にある、ほとんど放置されたブドウ。

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実は袋かけされておらず、甘い香りに誘われてシロテンハナムグリが来ています。

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枯れ蔓を見ると、直径7ミリほどの羽化脱出孔が。もう発生は始まっているようです。

一応、野外成虫を探してみますが、案の定見つからないので材割りをすることに。

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幼虫が穿孔している枝は材部がほとんど食べつくされて、このように樹皮だけ残っています。 慣れてくると触っただけで穿孔しているか否かがわかります。

この枝、中央部分に蛹室みたいなものが見えますね。

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別角度から。なにやら虫影が見えます。慎重に割っていくとブドウトラカミキリが現れました。

さらに、先を割ってみると

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もう1匹入っていました。すぐに逃げようとするので脚を押さえての撮影です。

その後、もう1本だけ穿孔材を見つけたので割ってみます。

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なかなかいい形で出てきてくれました。

さらに別の材を割ると

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こちらはまだ蛹でした。これは持ち帰って羽化を待ちます。

狭いポイントなのでたくさん採ってもしょうがないので成虫4匹くらい採って帰りました。


その2 タケトラカミキリ

基本情報

柵や工芸品などタケでできた製品の害虫として知られています。 成虫は盛夏に出現し、竹林や竹垣などで見られます。 産卵は林の中の枯れた竹や竹材に行われます。 幼虫は外皮と内皮の間の部分を食い進み、夏に蛹化・羽化します。

ということで、もう成虫は出現しているはずです。 野外で採れなくても、成長が遅い個体を材割りで採ることも可能です。

夕方、世田谷区某所の竹林の跡へ。

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ここは2年前に皆伐されたため、大量の材が出現しました。 タケ自体はしぶとく生き残っています。 この、長い切り株に飛来しているかをチェックしますが、 運を使い果たしているため見つかりません。

次に、積み上げられているやや古い材を見ます。

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どうやら確実に発生しているようです。 この材、大きさのわりには孔が少ないので、まだ中に残っている個体がいるとみて割ってみました。

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幼虫出現。おそらく、ベニカミキリです。 ここではまだ採集したことがないので持ち帰って飼育することに。

いくつか材を割りますが、食痕のみで幼虫・蛹・成虫は出てきません。

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5本目くらいの材で、やっと蛹が出現。 たぶん、タケトラカミキリでしょう。持ち帰って羽化を待つことに。

だんだん蚊の攻撃が激しくなってきたので、この辺で撤収しました。 これら2種のカミキリ、山地でも採れなくはないのですが平地の方が採りやすいです。

この2ヶ所のポイントでは、市街化の波に呑まれつつもなんとか存続しています。 いわゆる普通種とされるカミキリですが、それさえもいなくなってしまう環境はとても味気ないものです。

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