2006.July.23
例年より梅雨らしい天気のおかげで、 東京の日照時間が7月は平年の3割になりそうなこの頃。 雨も多く昆虫の活動はかなり制限されているはずです。 同時に、採集者の活動も制限されているはずですが・・・
梅雨の時期で重要なのは、 目的の昆虫が活動する天候になるかを 気象情報をもとに判断することだと思います。
たとえば天気予報で 「曇り」 と出た場合、 「晴れに近い曇り」 「雨に近い曇り」 どちらであるのかを見極めるのです。
前者なら長雨で休んでいた昆虫が動き出すはずです。 前日の天気予報は 「曇り時々雨」 (by Yahoo!天気情報) ですがこんなのはあてにしません。 (実際、マイフィールドではほとんど当たらない。)
私の予想は 「たぶん晴れに近い曇りになるだろう」 まあ雨が降ってもカッパ着用でなんとかなると (先週末は目的地まで行ったもののカッパ忘れたので断念しました)、 気楽に行ってきました。
土曜日の夜、圃場管理その他雑用を終わらせ、 奥多摩行きの電車へ。 青梅から先は単線なので、 時々列車すれ違いのため駅に短時間停車します。
ちょっと外へ出て灯火を見てみると、 大きな虫影が見えました。
シロスジカミキリ♀
上翅の紋がここまで赤いのは初めて見ました。
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そして、奥多摩駅に到着
画像には写っていませんが、 鱗翅目がそこそこ集まってきています。 2時間ほど歩き回りましたが、 甲虫の数は少なめでした。
ノコギリカミキリ♂
セミスジコブヒゲカミキリ♀
他の場所ではよく見ますが、 この場所ではいずれも初採集です。
さらに、こんなのも採れました。
♀個体で、未同定です(帰宅後に撮影)。 一見よく見るサビカミキリですが、 シナノサビカミキリのようにも見えます。 両者とも非常に良く似ているそうです。 図鑑を見ても決定打に欠けるので、 他のサビカミキリ標本と比較してみないとわかりません。
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今晩はこのくらいで就寝。
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翌朝
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空は曇っていますが、雨は降っていません。 むしろ晴れてきそうな予感。 このまま持ってくれと願いつつ、 始発バスで目的地へ向います。
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目的地に到着。 歩きながら登山口を目指しつつ、 灯火の居残りをチェックです。
ルリボシカミキリ♀
ササの葉の上に2匹いました。
オオモモブトシデムシ♀
網で灯火の周りを掬ったら落ちてきました。 この少し前にクロシデムシも採集しており、 1日でシデムシ2種、いずれも当地初採集。
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登山口に着く直前、 目の前をハチのような虫が飛んでいたので網で掬ってみると
ヨツボシモンシデムシ
アブかと思っていましたが、まさか甲虫とは・・・。 これでシデムシ3種目。
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この後、登山口から急斜面を登ります。 体調は今シーズン最高の100%。 呼吸がまともにできるとこんなに早く登れることに驚きました。
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尾根に出てしばらくして、断崖に咲くシナノキを発見。
まわりにも何本か生えているのですが、 花が咲いているのはこの木だけ。
ハチらしき虫がブンブン飛び回っています。
高さもちょうど良く、新しく買った6.3m竿で梢まですべて掬えます。
まずは目視でどこに虫がいるかを確認。 お、あそこに見える長い触角は・・・
クスベニカミキリ♂
今年初めて見ました。当地初採集です。
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掬ってみてわかったことですが、網に入る虫の95%は小さいハチ。 素早く動き回るハチの中から違う虫を探します。
サドチビアメイロカミキリ
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さらに、花だけでなく周囲の木も見てみると、 結構虫が止まっています。 手前のヤシャブシ?葉上に スカシバを発見
スカシバ不明種♂
この後、花を掬った時にも1♂追加。 腹部の黄色帯が1本少ないことから コスカシバではなさそうです。 そうなると、これは、もしかして、幻の、 ヤノコスカシバ?
2007年3月19日 追記
後日、予感は現実のものとなりました。
東京都初記録、本州でも2例目(公表済みの記録として)のようです。
月刊むし(434):46-47
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一通り掬ったところで まだ訪花のピークには時間があるので、 先に立ち枯れを見てくることにしました。
だんだん空が明るくなり、 森内にも日が差し込むようになりました。・
自己最速タイムで目的地に到着。 <まずは、クロホソコバネカミキリを狙って 立ち枯れへ一直線。
虫に気配を悟られないよう、少し離れて木をぐるっと見回ります。1周目、クロハサミムシ少々、他何もいない。 2周目4分の1を回ったところで、 上方に黒っぽい虫が飛来し、 下の方へ歩いてきました。 長竿を伸ばし慎重に落とします。
オオクロハナカミキリ♀
昆研合宿以来2年ぶりの再会です。 ハナカミキリにしては重量感があります。 当地初採集。
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3周目スタート地点、ふと下を見ると、
キヌツヤハナカミキリ
気配を察知して落下したようです。 これも2年ぶりの再会。 当地初採集。
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この後、時間を置いて5周くらいまわりましたが、 甲虫はルリゴミムシダマシのみ。
クワサビカミキリ
倒木の枝をビーティングして落ちました。 当地初採集。
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そろそろ訪花ピークの時間なので、 再びシナノキのある場所へ移動。
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移動中、天気が悪化しているのを察知。 道を急ぎます。・
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早朝と比べると風が吹いてきています。 この地域、午後になると決まって風が吹きます。 今日はちょっと早めに吹き始めたようで、 風が止んだ時を見計らって一気に掬います。
飛んでいてもすぐ判別できるヨツスジハナカミキリ、 シーズン終了を予感させるマルガタハナカミキリ、 まぎらわしいアオジョウカイやベニボタルの仲間など、 甲虫はあまり種類数多くないです。
そんな中、一押しがこの虫
ヤマトキモンハナカミキリ
木の中心部分に近い、風があまり当たらない場所を掬ったら入りました。 この系統の斑紋を持つハナカミキリを採集したのは初めてで、 クモマハナ?ヤマトキモンハナ?シララカハナ? その場では同定も撮影もできませんでした。
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天気はだんだん悪化してきたので、急いで下山することに。 下山速度は体調とあまり関係ないのでいつもの速度で降ります。
途中の枯れ沢で石を起こして、 プテロ(ナガゴミムシの仲間)を2匹採集。 テネラル(羽化直後の新鮮な個体)で かなり軟らかかったです。
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無事に下山し舗装道路を歩いていると、 天気はさっきより少し回復。 でももう時間がないのでバス停へ急ぎます。
途中、この虫だけ目についたので撮影&採集
ビロウドヒラタシデムシ
ミミズの破片を食べていました。 1日でシデムシ4種、こんな日もあります。
今回は天気と体調の負の相関関係が崩れ、 なかなか良い条件で採集ができました。 当地初採集のカミキリムシも5種となり、 この地での自力採集が100種(約6割)を超えました(材採集含む)。
奥多摩は林道開発が終わると同時 訪れる採集者も減っていったようですが、 まだまだ丹念に探すといろんな虫が見られます。 行く度に新しい虫との出会いがある。そこがこのフィールドの魅力です。