奥多摩:夏の盛り

2006.Aug.5

梅雨も明け、いよいよ8月に突入しました。 8月にもなると山地でもカミキリムシのシーズンがピークを過ぎて下り坂に差しかかります。 当地ではこの時期もともと花が少ない上に、 集虫力抜群のリョウブ咲かないのでもう花掬いは不可能に近い。 狙うとすれば立ち枯れ、樹洞、灯火くらいです。

立ち枯れに来るカミキリムシで人気種のひとつがホソコバネカミキリの仲間(通称ネキダリス、ネキ)。 7月始めの採集ではオオホソコバネ・トガリバホソコバネを採りました。 奥多摩では他にあと2種が記録されています。 今回の目標のひとつクロホソコバネカミキリこれも記録があり近年の採集例もあります(未発表)。

今回は同年齢の虫仲間Tokiくんとほぼ2年ぶりに一緒に採集することになりました (本当は7月第3週に予定していたのですが雨で中止になってしまったのです)。 昆虫採集歴は私の2倍以上とあってなかなかの強者です。


金曜日、合流場所などを確定して2人で行くことが確定。 夕方、農薬分析を終わらせてギリギリで水田に戻り、 大急ぎで準備をして電車へ飛び乗ります。

1時間半後、奥多摩駅に到着。 なんとか終バスには間に合ったと思ったのですが、

mail「今青梅にいるんだけど・・・」

えっ?

(途中略)

どうにか、目的地に到着。 灯火のあるところまで歩きます。

しばらく歩いたところでTokiくんが急に立ち止まる。

T「ウスバだ」

G「え、どこ?あ、ホントだ」

T「あ、ここにもいる」

G「ホントだ」

2匹目は私の足元にいました。 この時私はメガネ着用、視力0.5くらい。 ちなみにウスバは当地では未採集、不覚です。 その後、真剣に路面を見ながら歩きますが闇が迫ってまったく見えません。

そして、灯火採集場所に到着。

light060805.jpg

気温22℃、いつもより3℃ほど高めです。 灯火を見るとガ、アリが群がっています。 甲虫はというと、やはり時期の問題なのか個体数は少なめです。

私はメガネからコンタクトレンズに交換、 視力0.5から1.5へ大幅upです。 夕食を食べて、互いに用意してきた酒類を交換して飲んだり、 網で灯火周りを掬ったり、薪を見たり、 虫の情報交換、世間話など。

hunter060805.jpg

私はウスバが採れずノコギリばかりでしたが、Tokiくんはその逆でした。 やがて私がウスバ1♀採集し、Tokiくんもノコギリを手にしました。

東京ではなかなか見られない満天の星空の中で粘りますが、 飛来する甲虫は相変わらず少ないまま。 私が近くで虫が落ちた音を聞いて行ってみたらヒゲナガカミキリ♂。 そのすぐ後、Tokiくんが灯火を見に行ったら電信柱に同じくヒゲナガカミキリ♂。

だいたい2人で同じような虫を採り、日付が変わる前には切り上げて それぞれ眠りに就きました。

その後、2時くらいに林道上部で水銀灯をつけていた虫屋さんが通りがかったので挨拶&いろいろ質問。

「ガを狙っていたが目的のは採れなかった、上にはヒゲナガカミキリがたくさん来た」

というような返答でした。林道での灯火、いずれは私もやってみたいです。

翌朝

morning060805.jpg

天気は問題なし。

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簡単な朝食を済ませて、 ミヤマクワガタの見送りを受けて登山開始です。 ただ、前日がんばりすぎたのでいつもよりペースダウンして登ります。

shinanoki060805.jpg

先々週、満開だったシナノキ。もう花は見る影もありません。 このあたりで休憩を兼ねてスイーピング。

私はカッコウメダカカミキリを採集。 実は自己初です。意外と良く見られる種でも結構抜けているのです。

goal060805.jpg

途中、いろいろ寄り道しながらも立ち枯れエリアに到着。 荷物を置いてまずはブナ立ち枯れを見に行きます。

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なかなか良さそうな状態です。 しかし、クロハサミムシくらいで他は何もいません。 しばらく待っても寄生蜂、イシアブなどが飛んでくるくらい。 クロホソコバネカミキリはもう発生終了なのか・・・?

立ち枯れがダメそうなので、それぞれ思い思いの場所で採集。 時々出会った時に、何が採れたか情報交換、そして採集再開。 こんな感じで、1~2時間が過ぎていきました。

では、実際にどんな採集をしていたか、その一部をご紹介。

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この辺りは倒木が多くキノコが結構ついてます。 眺めていくと、虫が見つかります。

kabutogomidama060805.jpg
コブスジツノゴミムシダマシ

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林内に落ちている小枝。 良く見ると、小さな虫がついています。

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おや、長い触角が見えますね。

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トゲバカミキリ

かなり個体数多いです。

ただし、触角が長いからといっても、そのすべてがカミキリムシとは限りません。

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クロオビヒゲナガゾウムシ

♂の触角はかなり長いです。 ちょっと古めの枯れ枝にいます。

倒木や樹洞の前で待っているとハチそっくりだけど動きがちょっと違う虫が飛んできます。 とりあえずネットイン、ハチとの判別はその次です。

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ニッポンミケモモブトハナアブ(2006.12.23 判明)

倒木にて採集

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フタガタハラブトハナアブ(2006.12.23 判明)

樹洞前にて採集

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シロスジナガハナアブ

切り株にて採集

こんな感じで良さそうな虫はそこそこ採れますが、 クロホソコバネカミキリはなかなか姿を現しません。

このあたりで、オオチャイロハナムグリを狙ってきたという虫屋さんと遭遇。 お話を伺うとHPをご覧になっているとのこと。 しばしお話をして、再び採集を始めます。

大抵、虫との出会いはいきなり訪れます。

「おーい」

林内にTokiくんの声が響きます。

「採ったよ」

これを聞いて斜面を滑り降りるようにして現場に急ぎます。 親指と人差し指の間にクロホソコバネカミキリがしっかりとつかまれていました。

リョウブの倒木の上にじっとしていたそうで、 はじめは寄生蜂かと思ったそうです。

「もしかしてリョウブに注目すればいいのでは?」

その言葉を聞いて、クロホソコバネに絞って探索を再開しました。

リョウブの立ち枯れ、それまで意識していなかったのに、 いざ探してみると結構たくさんあります。

pointtree060805.jpg

こんな感じでキノコまで生えているものも。この木を、私は左側、Tokiくんが右側から見て回ります。

「いた。交尾している」

「なに?」

今度は私が発見。

harmandipair060805.jpg
クロホソコバネカミキリのペア

♀の背中に小さい♂が乗っかっています。 私の腰くらいの高さ、こんな低い位置にいるとは。

さらに、そこからわずか15cm右側を見ると

「お、こっちは産卵しているぞ」

「まじで?」

harmandioviposit060805.jpg
産卵中のクロホソコバネカミキリ

こんなキノコのそばに産卵しています。

一瞬で1♂2♀を発見してしまいました。 これで、2人の予想が確信に変わります。

「ブナじゃなくてリョウブの立ち枯れ」

ということで、2人それぞれ別々に探索することにしました。

lookings060805.jpg

時々、3匹同時に採れた木を二人とも訪れます。

しばらくして、TKM事務局さんが登って来られて、 挨拶とちょっとした情報交換。 その後しばらく採集しましたが 私の方はネキの追加は得られず。 Tokiくんの方はクロホソコバネの♂を追加、 さらにオオホソコバネの死にかけ♀まで採集。 これもリョウブだったそうです。 私もブナを時々見回ってましたが全然ダメでした。

だいぶ疲れてきたので下山することに。 TKM事務局さんと分かれてすばやく下山です。

途中、枯れ沢で石起こしをしましたが プテロ(ナガゴミムシ)は見つからず。 疲れが増しただけでした。

道路に出て、ふとヤマグワを見るとイッシキキモンカミキリの食痕が。 こんな交通量多い所にも来るんですね。 網で掬うも、主は採れませんでした。

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無事にバス停に到着。 バス車内、電車内では2人とも熟睡。 私は危うく立川で乗り過ごすところでした。


今回は天気に恵まれ、虫仲間との2年ぶりの採集を楽しむことができました。 それぞれクロホソコバネも採れたし、花がない中では結構良かったと思います。

いろいろ教えてくれてありがとうございました。また機会があったら一緒に採集しましょう。

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