2006.Sep.30
稲刈り、ブドウ狩り、キノコ採り。 山も里も、本格的な秋を迎えようとしています。 カミキリムシでは秋になると、一部の種類を除いて 野外で成虫が見られる機会は極めて稀となります。
秋特有のカミキリ採集のひとつが コブ叩き。 秋に地面付近の枯葉に潜む習性がある コブヤハズカミキリの仲間が狙いです。 本州で狙えるコブヤハズは5種。 今回はタニグチコブヤハズカミキリを狙って、 昆研の後輩3名(ペプチドグリカン、橘氏、キヨタ)とともに 本格的な秋を目前に控えた山梨へ行ってきました。
今回はレンタカーで行きます。 ハンドルを握るのはほぼ1年ぶり。 29日夜10時頃、農学部で後輩3名を乗せて 青梅街道経由で山梨を目指します。
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日付が変わる前後に、柳沢峠に到着、休憩。 明かりには秋のガであるヒメヤママユがいくつか来ていました。 ひそかに狙っていたガは残念ながら見つかりませんでした。
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日付が変わって30日午前3時頃、暗い山道を延々と走って 八ヶ岳周辺に到着。 翌朝まで仮眠をとります。
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翌朝
7時に起きて、コンビニに寄った後、目的地を目指します。
これが今日の第一目的地です。 カラマツとモミの植林地が目立ちます。 もっと広葉樹が多いと思っていたのですが・・・。
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車を止めて、各自準備を整えます。 私とペプチドグリカンはビーティングネット。 橘氏とキヨタは捕虫網でそれぞれ挑みます。 1時間後に再集合する約束をして、3方向に分かれて探索開始。
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登山道沿いの枯葉を叩いたり手で握ったりしますが、 見つかるのはハサミムシ、ゴミムシ、クモばかり。 初めは植林地帯を探しましたが、 枯葉に残るギザギザの円形食痕すら見つかりません。 ササ藪の中に突入しても状況は変わらず。 途中、ペプチドグリカンに遭遇しても、
「採れない」
そうこうしているうちに1時間は過ぎ、 他の3名は採集していることを願って車に戻りました。
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まず、橘氏と再会。 「採れた?」と聞くと、表情を変えず
「1頭」
「何だって?」
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確かに、タニグチコブヤハズカミキリ♂。
「ササ藪の中に生える広葉樹の根元を叩いたら入りました」
この環境で採るとは、さすが・・・。
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次に、ペプチドグリカンと再会。 相変わらず採れなかったようです。 橘氏の採集成功を知り、「鬼だ~」などと言っていました。
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橘氏が採集したことに触発された私は キヨタが戻るまでの間に周辺を叩きまくる。
すると、
カッコウカミキリが落ちました。 これも、野外成虫越冬と言われていたはず。 通算2匹目です。
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そして、キヨタと再会。 今回がコブ叩き初挑戦となるのですが、 何も採れなかったようです。
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「もっと広葉樹が多い場所に行こう」
ということで、車で下りながら良さそうな場所を探します。
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すぐに、良さそうな場所が見つかりました。 車を止めて、今度は4名で突入です。
広葉樹主体の林、舗装がきちんとしていない路面。 コブヤハズが潜んでいることが多い ヤマブドウもあちこちにあります。
場所によってはササが生えています。 ただ、丈が低く叩きにくい・・・。
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しばらく叩くものの、先ほどと状況は変わらず。 ヤマブドウの枯葉も、コブヤハズの食痕がついていない。
アブの一種?
沢沿いの花の周りを飛翔していました。 紫色の金属光沢が素敵だったので、素手で採集。
2006.Oct.1追記 ルリミズアブに似ているが確信は持てず・・・
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ここもダメだという結論に達し、再び移動することに。
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しばらく、八ヶ岳周辺をウロウロしてみましたが、 植林ばかりでどこもダメそうです。 ここで思い切って、第2の目的地に長距離移動することにしました。
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第2の目的地とは、タニグチとフジの混棲で 一躍有名になったアノ場所の周辺。 しかし針葉樹の植林が現在も進行中で、 広葉樹林を好むタニグチはかなり少なくなっていて、 逆に幼虫が針葉樹食いのフジは増えているらしいという話。
とりあえず、フジは採れるだろうと2年前に採れた場所周辺に駐車し、 二手に分かれて探索開始。 すでに昼になっているので、ここで採れないとかなり厳しいです。
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私とキヨタは南へ、ペプチドグリカンと橘氏は北へ。 道沿いの枯葉を叩きながら進みますが、 途中で乾燥がきつくなり見るからにダメな環境になったので キヨタとともに引き返します。
そして、車の所まで戻ってきて、北へ進み始めようとしたその時、 前方を歩いていたキヨタが突然
「あっ」
直前に見た時は枯葉を叩いていなかったはずなのに、 なにやら網を見ています。
「いました」
あわてて駆け寄ります。
間違いない、フジコブヤハズカミキリ♀です。
「なんか網についていました。さっき下草を掬った時に入っていたんでしょうね」
うーむ、この環境で採るとは・・・。 しかも、コブ叩き初挑戦なのに・・・。
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キヨタが容器を取りに戻った1分後、 私の網にもやっと手ごたえが。
さて、どちらだろう。
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白紋があるということは、フジコブヤハズカミキリ♀。 中型の個体です。
採集したのは斜面に生えるこの枯れ木。 枯葉の一部が地面に接していて、 コブヤハズが登りやすくなっています。 左側の枯葉1枚を棒で触っただけで落ちてきました。
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しばらく他の場所を叩くも、追加は得られず。
林床で枯れ始めたヤグルマソウ(るどるふさん、植物名ご教示ありがとうございます)。 いかにも潜んでいそうな感じですが、ハサミムシしかいません。
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北進していた2名とも再会しましたが、0匹でした。 2人の情報によれば、すでに採集者が先に入っていて、この辺りは一通り叩いたそうです。 その方は1匹だけ、少ないと言っていたそうです。 ということは、さっき採れた2匹は叩き残しということか・・・。
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時間が残り少なくなってきましたが、 2年前に私のすぐそばでタニグチが採集された場所に移動し、 最後の悪あがきをすることにしました。
移動直前に採集したミノウスバ♀。 マルハナバチ擬態です。
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その場所に着くと、採集者の姿が・・・。 「来たばかりのところ悪いけど、この辺はいないよ」
でも、悪あがきはするしかないです。
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4名とも同じ方向に進みます。 舗装道路脇の乾燥した枯葉を叩いていきます。
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後輩3名の少し後ろを進むうちに、 道路右手の斜面を見て、私はふと考える。
「2年前は道沿いを散々叩いたけどダメだった。 今の採集者の方もダメだったと言っている。 でも、ベテランの方だったから体力の関係で道沿いか、 平坦な場所しか叩いていない可能性は高い。 今進んでいる場所の右手は少々きつい斜面になっている。 広葉樹林、下草も少々あるし、先の方には濃いササ藪も見える。 奥多摩のフジや他の場所のタニグチと同じく、 ササは重要な環境因子ではないのか? 人の足跡も見えない、ということは誰も入っていない。 普通の人と同じ採集をしていては採れないはずだ。 どうせならダメもとで、普通の人が行かない(行けない)場所を狙うべきだ。
文章にすると長いですが思考時間は20秒くらい。 斜面は奥多摩より楽に登れるくらいの傾斜です。 舗装道路を進む3名とは離れて斜面を登り、 所々にある枯葉を叩きつつササ藪の所まで行きます。
歩きにくいくらい生えていますが、 斜面に生えている分、網を下に入れやすいことが判明。 平坦な場所より叩く意欲が湧いてきます。 枯葉が多めにひっかかっている所を狙って叩くこと、2ヶ所目
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お、来た。どちらだ・・・。
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よし、この黒い紋、やっと来た、タニグチコブヤハズカミキリ♂。
これを採るために、はるばる東京から来たのです。 この、黒い目玉模様、なんともいえません。
「やった」と少し大きな声でみんなに知らせようとするも、 斜面のかなり上の方にいるので伝わらなかったらしい。 落とさないように、慎重に、タッパーに収納します。
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しばらくササを叩くも、追加は得られず。 密度は、かなり低いみたいです。 そのまま尾根に出て、車のある所まで叩きながら戻りました。
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車のそばにはすでに後輩たちが待っていました。 結局、採れなかったとのこと。 もう時間が迫っているので帰途につきました。
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甲州街道を途中まで進み、疲労で運転に危険を感じコンビニで休憩。 車での採集はメリットが非常に大きいですが、 帰りの運転が一番のネックになります。 私の代わりに運転できるのはペプチドグリカンのみ。 いつも電車+バス採集の私にはこの運転は結構つらい。 奥多摩なら1時間半ほど寝ながら帰れるのに・・・。
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車の返却時間も迫っているので、 高速道路に乗ってあっという間に府中へ。 1年ぶりの運転で勘を維持するには十分な行程となりました。
今回の採集で採れたのは4個体のみ。 非常に厳しい採集となってしまいました。 ポイント情報なしで遠征はなかなかリスクが大きいですね。 ポイント探そうとしても植林が多すぎました。
同行してくださった後輩の皆様、 今日の採集に懲りずにまた一緒に行きましょう。 来年はマヤサンかな、ちゃんと採れる場所を探しておく予定・・・。