2007.Mar.31
3月最後の日、東京ではソメイヨシノが満開となっています。 このサクラの開花に合わせて野外に出現するのが、林業関係者には有名なスギカミキリ。 昨年は川崎市のフィールドで初めて遭遇して以来、 茨城県や野外調査地でも出会うことができました。 しかし、肝心の東京では奥多摩でボロボロの死骸を ヒノキ切り株から割り出したのみ。 やはり、生きた個体を見つけ、撮影しておかねば。 ということで、川崎市のフィールドから少し離れて町田市へ、ちょっと遅めのスギカミキリ探索に行ってきました。
ここは川崎市のフィールド。 サクラも良い具合に咲いており、 菜の花もいたるところでまぶしい光を放っています。
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道端ではキブシも花の盛りです。 今回の目的地、スギカミキリが待つ町田市へ急ぎたいところですが、 同じく早春出現のヘリグロチビコブカミキリも気になるところ。 ビーティングネットを組み立て、塩ビ管でキブシを重点的に叩きつつ、 ゆっくり歩いていきます。・
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ヒナルリハナカミキリ
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ナナフシの幼虫
もう卵から孵化しているようです。
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途中、道に迷いながらも都県境を越えて 目星をつけていた場所になんとか到着。
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ここが、今日の目的地。 川崎市のフィールドよりも雑木林の手入れが行き届いています。・
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ここで、スギカミキリ採集の基本を復習。・出現時期はソメイヨシノの開花と同調
・発生木はヤニがにじみ、楕円形の羽脱孔がある
・昼間は樹皮下や根元の落葉などに潜伏
・林縁や孤立木など風通し良好な場所に多い
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4番目の、発生木の条件が新規開拓ではとても重要です。 孤立木、林縁などにあるスギ・ヒノキをイメージしながら、 それらしい場所を求めて歩き回ります。
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しばらくして、条件に合う木を発見。 手前から2本目のスギです。
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新鮮な脱出孔もあります。 しかし、脱出孔はこれだけで、ヤニも出ていません。 根元などを探しますが、結局成虫は見つかりませんでした。・
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しばらくして、再び条件に合うスギを発見。
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雑木林の一角が切り開かれて明るくなっており、 中央にはスギの木が1本だけ孤立して生えています。 以前は果樹園として利用されていたのでしょうか?
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近寄って幹を見ると、 これでもかというくらい羽脱孔が空いており、 これは期待が持てる木です。
まずはぐるっと一周して潜伏候補を一通り把握した後、 一番可能性が高そうな根元付近の樹皮をはがしてみます。・
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ポロっと、地面に何かが落ちました。 視線をすばやく移すと、そこには10ヶ月ぶりのスギカミキリの姿が。 東京都産、生きた個体の、自身初発見です。
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他の潜伏候補も、慎重に探していきます。
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次に見つかったのはスギカミキリではなく、 マルムネゴミムシダマシ。 なかなか良いスタイルをしていたので迷わず採集。
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次は、スギカミキリです。 樹皮を横から見たら触角が見えたので デジカメの明度を最大にして撮影です。
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次に、少し上の方の樹皮をめくってみると、
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ちょっと雰囲気は似ていますが、ハズレです。 ゴキブリの一種の幼虫。
なんかとても綺麗に見えたのですが、 やっぱりパスしておきました。
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ある程度チェックしたものの、羽脱孔の数のわりには個体数が少なく、 スギカミキリは全部で2個体のみ。新たな発生木を求めて移動することに。
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途中で見かけた菜の花とムラサキハナナ。 ただ、天気はあまり良くないので訪花する昆虫はほとんどいないのが残念です。
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ビーティングもしながら歩いているのですが、ビロードツリアブは叩き落されても しばらく飛び立てないほど気温は低く天気も悪いです。
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しばらく歩くと、道端にスギが生えているのを発見。 羽脱孔は見えないのですが、非常に気になったので 根元の樹皮をそっとはがしてみます。
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やはりいました、スギカミキリです。 今度は落下しなかったので、ゆっくり撮影できました。
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ちなみに、潜んでいた木はこんな場所にありました。 比較的明るく、風通しは良好です。
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生態写真も撮れたので、今度は川崎市へ逆戻り。
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民家の脇にあった、スギの新鮮な伐採木。 こんなところも、実は要チェックです。
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丸太にかかっていた枯葉つきの枝を動かしてみると
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やはり、♀が潜り込んでいました。
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その近くにはヒメスギカミキリの姿も。
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そして、昨年初めて採集した思い出の場所へ。
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狭い隙間に♀が潜っていて、♂も潜り込もうとしています。 ♀の下にもさらに別の♂が潜っていました。
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昨年と発生木が変わってはいましたが、 かなりの数が発生していました。 まだ木の方は元気そうなので、 しばらくは確実に出会えるポイントとなりそうです。
長旅から帰ってきた翌日でしたが、 目的の東京都産スギカミキリを採集・撮影できて良かったです。 他にもネムノキ枯木に集まるホタルカミキリや チャイロヒゲビロウドカミキリ幼虫なども 頭にはあったのですが、一度にそう簡単には出会えません。 また来年になりそうです。