2007.Mar.27-30
3月末は研究の世界では「学会」の季節。 同じ分野の研究者が全国から集まって 研究発表をするのですが(特に学生にとっては研究者デビューの場)、 実はその後の懇親会などで人脈を広げる方が重要だったりします。
今年は広島で行われる学会に参加し、諸事情の制約を受けながらも 研究成果を発表することになりました。 せっかく広島に行けるのだから、昆虫採集もぜひやっておかねば。 発表準備と同時進行で、地図見たり現地情報を教えていただきながら 今しかできない気ままな格安採集計画を作り上げました。
26日夜、夜行バスに乗って東京を出発。 今回初めて乗ったのですが、乗り心地は電車よりはるかに悪く 途中のトイレ休憩にはすべて目覚めて外灯めぐりをしてしまうほど。 イボタガやオオシモフリスズメなどを期待していたのですがまったくダメでした。
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翌27日早朝、福山駅前に到着。 広島大学まで直行する便もあったのですが、あえてここで下車するのはほかならぬ昆虫採集のため。
ここで青春18切符の登場。 学生長期休暇の格安旅行の定番です。 ここから広島大学へ電車で向いますが、 発表までにはまだまだ時間があるので途中下車して採集する計画です。
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途中下車した某駅前からの眺め。 のどかな風景が広がっています。
ここから歩いて山に入り、いろいろ狙うつもりです。 ただ、心配なのは天気。 実は駅に到着した時点で、わずかに雨が降り始めたのです。
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舗装道路から登山道へ。 雨は一度止んだのですが、いつ降りだしてもおかしくない状況です。 この時期ならギフチョウも飛ぶかと期待していたのですが、 この天気ではすぐ採集候補から外します。
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車も入れない場所まで来ました。 全体的に乾燥して下草も少なく、 アカマツの立ち枯れ・倒木がゴロゴロあります。 前方に見えている針葉樹は、すべてネズミサシです。
奥多摩ではまず考えられない状況にとても驚きました。
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適当な場所まできて、まずはオサ掘り。 アキオサムシ、ヤコンオサムシなどを狙って 林内、流水跡などいろいろな段差を崩します。
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しかし、ムカデしか出てきません。 もう活動開始しているのか、私の腕の問題か・・・。
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こうなると、もうカミキリ材採集しか手がなくなります。 事前情報では、西日本限定のズマルトラカミキリ(広葉樹細枝)、 カエデヒゲナガコバネカミキリ(アカマツ枯枝)、 ヒメシラオビカミキリ(同上)などが狙えるそうなので、 良さそうな枯木をポキポキ折りながら進みます。
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しかし、いつもの感覚でやっても食痕が全然出ません。 これはもう、数で勝負するしかないと判断し、 目に付く枯枝を手当たり次第折りながら食痕を探します。
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何十本と折った末に、ようやく食痕を発見。 よく見ると蛹室みたいなものも見え、 脚みたいなものも見える気がする・・・。 慎重に割ってみると、
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黒と白のトラカミキリが出てきました。 どうやらズマルトラカミキリのようです。 ようやく、西日本限定種に出会えました。
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その後も、枯木を折りながら登るのですが、 思うように虫が出てきません。
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広葉樹枯木から割り出されたトゲヒゲトラカミキリ
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アカマツ枯木から割り出されたキボシチビカミキリ幼虫
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本当にこれしか採れてません。 地元の方々の採集能力の高さを思い知らされました。
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そして、無情にも雨が強く降ってきました。 虫が入っているかよくわからない材をとりあえず確保し、 予定より早めに切り上げて下山して広島大学へ。
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宿に着いて着替えて、広島大学へ。 先生や昆研後輩と会場で合流し、一番手として研究発表。 その後の懇親会では、いつもお世話になっている岡山大のドクターの方とお話。 さらに、農工大同窓会で、昆研先輩と初めてお会いしてお話。 そんなこんなで、1日目は過ぎていきました。
2日目
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雨は止んでいたので バスは使わず広島大学まで歩いていくことに。 もちろん、途中で金網にからまるヘクソカズラのチェックをして虫エイを発見するなど、 自然と虫を探してしまいます。
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途中の公園でカクレミノが目に留まりました。 カクレミノin瀬戸内とくれば、アレです。
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枝先を切り落とした跡。 生息は確実なようです。 1株ずつ丁寧に枝を見ていくこと、5株目・・・
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いました。 中央部分、何か白っぽいのが見えます。
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タテジマカミキリ
おなじみのポーズで枝にしがみつき越冬していました。
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追加を探しますが、結局見つからず。 時間も迫ってきたので再び大学へ歩みを進めます。
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会場の様子
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カナメモチの生垣
ここでもルリカミキリは健在のようです。
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べニシジミ
数個体見られました。
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夜は、いつもお世話になっているムシムシQさんに お好み焼きをごちそうになりました。 その後、ご自宅にもおじゃまして コレクションを拝見してお土産までいただきました。 夜遅くまでどうもありがとうございました。
3-4日目
29日、午後の水生昆虫の発表を聞いた後、 再び電車に乗って東京へ。 しかしこの時間ではどんなにがんばっても 近畿地方を抜けられる程度ということは事前に計算済み。
目星をつけておいた某駅まで向かいます。
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翌30日、夜明け前に目覚めますが 外は雨、しかも時々、空が光ります。 これでは早朝採集は不可能、あきらめて始発電車で西に向かおうと また眠りにつきます。
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そして夜明けを迎えました。 雨は、止んでいます。 始発電車が来る10分前、判断を迫られますが、 せっかくここまで来たので 早朝採集を決行することにしました。
道路にはサワガニが歩いていました。
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山に入り、良さそうな崖を見つけては崩してみますが、 相変わらずムカデしか出てきません。
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日当たりの良い場所でキブシを探して シロスジドウボソカミキリを狙いますが、 肝心のキブシが見つかりません。
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かろうじて見つけたものといえば、
このようなアカマツの倒木
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樹皮をはがすと、やっとオサムシの姿が。 クロナガオサムシです。
そして、もう2匹も続けて。 これに加えて、ツヤヒサゴゴミムシダマシ1匹
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時間も迫ってきたので、 名残惜しいですがこのあたりで下山しました。
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途中、岐阜県内で1時間の接続待ちがあったので 近くの林に行きましたが、 アケビ枯蔓を得たのみでした。
久々に西日本へ行くことができましたが、 広島ではアカマツ・ネズミサシの乾燥した林に戸惑い、 近畿では時間の制約と天候に恵まれなかったこともあり、 思い描いていたような採集にはなりませんでした。
でも、いつも行く奥多摩とは違った環境をみることができたこと、 いろんな人との交流ができたことは大きな収穫だったと思います。 次回は用事のついでではなく、採集目的で訪れてみたいです。
最後になりましたが、現地でお世話になったムシムシQさん、 現地情報を教えてくださったaile21さん、 どうもありがとうございました。