小田原オサムシ掘り

2007.Mar.10

先週、奥多摩で採集したオサムシ(♀)は エサキなのか?ルイスなのか?

なんとなくエサキっぽいものの、 ルイスであって欲しくもあり、 なかなか同定できずにいました。 図鑑の記述と照らし合わせるにも 比較対象の標本があった方がやりやすいと思い、 2005年12月にルイスを採集した小田原へ行くことにしました。 当時採集した場所は、神奈川県昆虫誌によれば シズオカオサムシはギリギリ分布していないようなので、 とりあえずルイスオサムシが採れればいいと思って 夜明け前に始発電車に乗り込みました。


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電車に揺られること2時間半、小田原に到着しました。 奥に見える山が今回の目的地です。

前回のルイスオサムシの採集場所は アカマツ倒木の樹皮下です。 でも、崖で越冬する個体の方が圧倒的に多いようなので、 今回はそちらに専念します。

事前に地形図で確認した限りでは 植林が果てしなく続いているらしいので、 良さそうな場所を見つけられるかが勝負です。

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30分ほど歩いた後、林道を見つけたので突入します。 薄暗いヒノキの植林です。

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そして、良さそうな場所を発見。 奥多摩ではまずお目にかかれない人工的な崖です。

さっそく、ピッケルを取り出して掘り始めます。

前日の雨のせいもありますが 適度な湿り気があり、 いつも掘っている崖よりもかたく締まっています。

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少し掘ると越冬窩が現れました。 でも、脚が黄色い、スジアオゴミムシです。 この状況で見つけたのは前に1回あるかないかです。

そして、2~3分後、崩れ落ちる土を見ていると

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今度はオサムシです。

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1年2ヶ月ぶりに見るルイスは大きく見えます。 前脚フ節が細いのでこの個体はメスだとわかりました。

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続いてもう1匹。今度はオスです。 なんかメスに比べて一回り小さい気がします。

その後、しばらく掘るも追加が出ないので ちょっと移動します。

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次のポイントはここです。 不法投棄の左側に崖があります。

荷物を置いて再び掘り始めます。

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オサムシではなく、縞模様が出てきてちょっと驚きました。 ヒメスズメバチです。 女王はもらい物しか持っていないので持ち帰ります。

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まもなくオサムシも出ました。 今度はメスのようです。 でも、さっきのメスより一回り小さい気が・・・。 なにかおかしい・・・。

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またオサムシが出てきました。 今度もメス、直前の個体より大きい・・・。

落ち着いて、両者を見比べてみることに。

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画像にするとわかりにくいですが、 右の個体の方が明らかに大きく、体形もやや太いです。 左は比較的赤みが強いです。

この瞬間、

「小さい方がルイスオサムシで、大きい方はシズオカオサムシではないか?」

という考えが浮かびました。

「分布はきわどいけれど、いても不思議ではないはず」

そして、その後追加は出なかったのでまた場所移動。

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今度はちょっと角度がきつい崖です。 倒木が崖の上部にもたれかかっているので、 そのあたりを重点的に掘っていきます。

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木の根が適度に入り込んでいて、教科書どおりの場所です。

ここを中心に、ルイスオサムシがかなり出てきて、 シズオカオサムシらしき個体もわずかに出てきます。

そして、

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アオオサムシらしいアオオサムシも出現。 シズオカオサムシらしき個体よりさらに一回り大きいです。 これにより、シズオカオサムシ説に確信を持ちました。

崖掘りをしていると、朽木崩しほどではないですがいろいろな虫が出てきます。

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オオスズメバチ

土中からは初めてです。

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オオホソクビゴミムシ

刺激すると爆音とともに高温ガスを噴射していました。

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ルイスオオゴミムシ

オサムシは掘り出してもなかなか動かないのに、 ゴミムシは掘り出すとすぐ動き出します。 前胸の紫色が今回はうまく撮れました。

ある程度採集して満足したところで 場所を大きく移動して、マイマイカブリを狙います。 2005年12月にアカマツ倒木があった場所へ向かいます。

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こんな倒木や、

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こんな立ち枯れをチェックしましたが シロアリの巣になっているだけでした。

帰り道、橋の下の菜の花を何気なく見ていると、

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ハナアブらしき姿が目に止まりました。

下に降りて寄ってみると

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間違いなくハナアブです。 シマアシブトハナアブ?

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横の花にも小さいハナアブが。 名前はまだ・・・。

駅についたのが昼過ぎ。 空いてる電車で眠りながら帰途へ。


通学経路に出る少し前になって目覚め、 ふとスギカミキリのことが気になったので電車を乗り換えて川崎市の元フィールドへ。

昨年、初めてスギカミキリを採集した場所へ。 ヒノキの根元を見ますが脱出孔は古いものばかり。

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樹皮の下にはオオトビサシガメ。 他にはヤモリがいただけでした。

しかたないので、アオオサムシでも掘ってみようと崖がある場所まで歩きます。

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ふとカエデの木を見上げると、 枝が途中で不自然に切れています。 下にはまだ葉がついた枝が落ちていて、 所々、脱糞孔が空いており、 折れ口はきれいに切れています。 きっと、これがアオカミキリの穿孔サインなんでしょうね (2003年に当地で1♀採集したことあり)。

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結構歩いて、良さそうな場所に到着。 ほんの30cmほどの、小さな段差ですが、これくらいしか掘る場所がありません。

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モグラの穴がある場所を避けて掘ると、アオオサムシが出てきました。 この時期に見ると、その緑色がさらに鮮やかに見えます。


今日、小田原で採集したオサムシを並べてみました。

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左から、ルイス、シズオカ、アオ。 左側がオス、右側がメスです。

ルイスはちゃんと崖から掘り出すことができ、 他の2種は予想外だったのでうれしいです。 これで、崖掘りに少し自信が持てました。

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