奥多摩:冬の終わり

2007.Mar.3

記録的な暖冬で、東京都心では降雪なしで春を迎える見込みです。奥多摩でも例年に比べて雪が少なかったようで、季節の進行も早いようです。

今日の目標は、奥多摩でわずかに記録があるルイスオサムシ。 崖掘りではアオオサ・クロカタビロ・マイマイ以外のオサムシは掘り出せないジンクスを持つので苦戦が予想されます。東京都は分布の境界に接するどうか資料によって扱いが異なるのですが、実際に調査をしてみないと分布境界なんてわからないものです。本命が採れなくても状況に応じて採れる虫を探すいつものスタイルで、昆研追いコンの後、睡眠2時間時間半、朝食・昼食抜きで行ってきました。


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山は相変わらず冬模様ですが、どことなく春の気配が漂ってきます。

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気温は、7時半で0度を上回っています。この時期にしてはかなりの暖かさです。

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クサギカメムシ

民家の植木鉢にくっついていました。暖かくなって出てきたものの、寒さでそのまま動けなくなったのでしょうか。

今日はルイスオサムシ狙いということで、東京都最西端の山の麓を目指し林道をひたすら歩きます。

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林道の様子

およそ2年半ぶりに歩くのですが、きれいに整備されていて乾燥していてあまり面白みがありません。

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ここは昨年、道路がすべて崩落したそうです。復旧工事で路面は舗装され、ますます乾燥が進みます。

前回訪れた時と比べて舗装が増えたと同時に、斜面を落石防止ネットで覆った区間が非常に増えました。斜面に生えるウツギ類やアジサイ類は5月6月のPidonia(ヒメハナカミキリ)採集の定番ですが、これでは満足に採集もできません。

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上の方まで来ると、斜面はむき出しの区間がほとんどになります。谷側の斜面にもギリギリまで樹木が生えてきます。

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キブシのつぼみ

平地では日向でもう咲いていますが、ここではまだまだです。

目的地目指して樹木チェックをしながら歩いていると、林道脇の落ち葉溜まりからはクモがぞろぞろ這い出してきます。アリも少ないながら活動しています。

ふと、道路脇で何かが飛ぶのが見えました。

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テングチョウ

越冬明けで日光浴に出てきたようです。このあと3個体ほど目撃しました。

林道終点手前で谷に降りて、川を渡って再び斜面を登り、目的地に到着。

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ブナを主体とした林です。

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倒木、立ち枯れは無数にありますが、南向きのため非常に乾燥しているのが気になるところです。

ここで、ピッケルを装備して探索開始。 まずは、定石通り良さそうな斜面を探して崖掘りをします。

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表面は乾燥しているように見えても、ちょっと掘ると凍結層が出てきます。100円手鍬では歯が立たなくても、安物ピッケルなら十分崩せます。

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ここは一見良さそうに見える斜面です。でも、この下30mほどにわたって崩落しており、土壌は薄くもろいようです。下の方から登って崩そうとしましたが、アリ地獄のように足元が崩れてここまで到達できませんでした。

良さそうな斜面を探して次々と掘ってみるのですが、クモ以外の生物が出てきません。こんな状況になると、自動的に朽木崩しにシフト・・・。

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クロトサカシバンムシ

乾燥した朽木から出てきました。頭部に鶏のトサカを思わせる突起があります。

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ハサミムシの一種

倒木の樹皮をはがすといました。

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ハネカクシの一種

同じく、倒木の樹皮下にいました。せっかくここまで来たので、採集しておきます。

そして、

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ついに、今日の初オサムシが出現。果たして種類は・・・・

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クロナガオサムシ♂

奥多摩で今まで一番多く見たオサムシです。

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こんな感じの湿った朽木に入っていました。

オサムシが採れたので気合をいれて周囲を探索しますが、柔らかい朽木を崩してもあとが続きません。

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そんな中、このマークが目に留まります。結構古くて形が崩れていますがルリクワガタ類の産卵マークです。ピッケルで外側を薄く削っていくと、

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ルリクワガタ♂

写真ではうまく表現できていませんが、かなり緑色が強いです。

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この倒木から出てきました。画面左下の、日が当たらない部分からです。

ピッケルをナタに持ち替えてさらに削るとオスがもう1匹でてきましたが、他の部分は乾燥していてダメでした。

ちなみに、この倒木に接する左の立ち枯れの上部には

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高密度でルリクワガタの産卵マークがありました。でも実はこの産卵マークがある裏側で折れていて、材が薄いため非常に乾燥していてまったくダメでした。

こうして、本来の崖掘りはすっかりあきらめ、朽木崩しを続けているうちに昼になりました。

昼を過ぎるとこの地域は風が吹き始めます。もう今日はルイスオサムシはあきらめて、そろそろ帰ろうと思って朽木を崩しながら来た道を引き返します。

すると、

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こ、これは、クロナガではない。

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脚は、赤い・・・

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これは、ルイスなのか、エサキなのか?

オスならば触角5~7節下面の無毛部の有無で見分けられるそうですが、あいにくこの個体はメス。ルイスであってほしいですが、この場ではわからないので自宅で詳しく調べることに。

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出てきた場所は、この朽木の地面との接点付近。かなり腐朽が進んでいてフレーク状になっていました。

このオサムシの発見で、今一度周囲を探索してみますが追加は得られず。時間もないので林道に戻り、帰りを急ぎます。

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ふと、林道脇にサルナシ発見。しかも、途中でバッサリ切られています。この状況だと、新鮮伐採木が好みのムネモンヤツボシカミキリが期待できます。滑落しないように慎重に近づいてみると

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脱出孔

あと1年早ければ・・・・

他にもいろいろ寄り道してケヤマハンノキやキブシの枯枝を持ち帰り、タラノキをじっと眺めてネジロカミキリを探したり、サルナシを見てキクビスカシバの虫エイを探したり、いろいろ物色しましたが長くなるので省略。

バス停にだいぶ近づいた場所で見覚えのある食痕を発見

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植栽されたサクラについていました。ヨコヤマトラカミキリ?

中は、当然のことながらカラでした。今年は野外で出会ったら生態写真を撮ってみたいものです。


帰宅後、例のオサムシを調べてみましたが、オサムシ初心者の私には難しく、「どっちかというとエサキなのかな・・・」という状況です。

崖掘りのジンクスが破られない以上、夏にもう一度行ってトラップ採集を試みるのが良さそうです。

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バス停にあるプランター

元気いっぱいのスイセンとしおれてしまったウチワサボテン

この花が咲く頃までにもう一度来れるでしょうか。

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