2007.Aug.11
立秋を過ぎたといっても、夏の暑さは今がピーク。冷房が存在しない研究室は外よりもさらに暑く、特に乾燥機で作物試料を処理している時は夜でも30℃を下回ることは決してありません。こんな時には、涼しい山へ行きたくなります。沢からの冷たい風に吹かれながら原生林の中を歩き回ること。もうカミキリの花掬いはほぼ終わりですが、とりあえず、秋の下見も兼ねて行って来ました。
前夜に平地で旬のカミキリ&コガネを探索したため、今日は始発から2本目のバスで奥多摩へ。
平地と同様に、空は快晴
気温は7時40分現在で20.5℃。これからグングン上がりそうです。
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いつものように急斜面の原生林を歩いていきます。沢からの涼しい風を期待していたのですが、林内はほぼ無風、湿度は非常に高いです。しばらく歩くと汗の噴出が止まらなくなり、衣服はどんどん濡れていきます。
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ある程度登って平坦な場所に出たところで休憩。スポーツドリンクは2L持ってきたのですが、早くも1/4を消費してしまいました。
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休憩場所の近くにはこんな樹洞があります。1ヶ月ほど前に確認した時はキイロスズメバチが営巣していました。まだ巣はあるかどうか覗いてみると
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門番をしていたのは、なんとチャイロスズメバチ。 しばらく見ていると、キイロスズメバチも出入りしていました。チャイロに巣を乗っ取られてしまったようです。登山道の脇1mほどにあるので、そのうち駆除依頼がどこかに舞い込むかも・・・。
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また歩き始めると、リョウブの花があちこちで目につくようになりました。
花は盛りを過ぎていて、虫もあまり来ていません。
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この分だと、秘密のノリウツギも終わっているだろうなと、登山道を大きく外れて見に行ってみると、
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予想に反して、まだ花が結構残っています。先週、奥飛騨に行ってたあたりが満開だったのかもしれません。
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虫も花めがけて飛んでくるので少々掬ってみることに。
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チャイロヒメハナカミキリ
まだ生き残っているとは・・・。
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ヨツスジハナカミキリとフタスジハナカミキリ
この2種は相変わらず多いです。
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キヌツヤハナカミキリ
生きてる時の鮮やかさは何度見てもすばらしい
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ジュウシチホシハナムグリ
奥多摩自己初、ちょっといい種類です。
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ヒメアカハナカミキリ
生態写真はなかなか難しいです。
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ハナノミの一種
なかなか大きいので採集してみました。
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今回の目的地はもっと先にあるので花掬いもほどほどにして先に進みます。
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標高を上げると季節の進行がやや遅くなり、リョウブも満開の株が出現します。誘惑にかられて掬ってはみるものの、虫は少ないです。
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そんな中で得られた、ちょっと良い虫がこれです。
コシボソスカシバ♀
シラカバがかなり生えているので可能性高いと思ってましたが、やはり生息していました。現時点でTKM未認定種。野外産は飼育した個体よりも腰のくびれが強くなります。
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周辺にはミズナラもわりと生えており、ミズナラの精がいるかもしれないのですが(実際、ちょっと離れたエリアで採集した先輩がいる)、木があまりに多いのでほとんど無視して歩きます。
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途中、周りの樹よりも明らかに太いミズナラを発見
「ちょっと見ていきなさい」
とでも言っているようなので、道を外れて見に行きます。
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「あ、いた、本当にいるんだ。」
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幹をチョコチョコ徘徊していたのは、まさしくミズナラの精
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「まずは、カメラ、カメラ。」
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しかし、シャッターを切る寸前、それは視界から消え去ってしまう・・・。
ブレた樹皮が写っただけ。落下地点をくまなく探すものの、二度と見つかることはありませんでした。
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1匹いたんだから他にもいるはずと幹周りを5周くらい探しましたが、見つかるのはムネアカオオアリだけ。
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6月のクモマハナと同じく、痛恨。その後、植生が変わるまでに見つけたミズナラはもちろんすべてチェックして歩きました。でも、再びその姿を見つけることはありませんでした。
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そして、目的地に到着。ツガとヒノキから成る針葉樹の林です。そう、今日の目的はオオトラカミキリ。標高は、関東で有名な某林道とほぼ同じくらい。
倒木もあり、
ヤニが噴出する樹も何本かあり、
ピークにあるので遠くから飛来するオオトラにもきっと目立つことでしょう。
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今が一番暑い時間帯、ツガの木を一本ずつ丹念に見回ります。
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looking, searching, staring, watching,
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ん、あれは・・・。
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アトコブゴミムシダマシ
大きくてゴツゴツして面白い形をした虫です。
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結局、オオトラ以外の虫に意識が散ってしまい、結局見つかりません。今日のところは「下見」と称しておきましょう。
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下山中、行きに逃げられたミズナラの精が忘れられず、植生が変わった頃から再びミズナラを探していきます。
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マツシタトラカミキリ
幼虫は生木の樹皮に穿孔するらしいので、産卵のために徘徊していたのでしょうか。
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結局、アリとザトウムシと寄生蜂以外は見つからないまま、さきほど逃げられたミズナラまで来てしまいました。
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御神木様、もう一度チャンスをください・・・
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「今度は、見つけたら迷わず採集するぞ」
周辺視野も含めて感度を最大限に上げて、ゴツゴツした分厚い樹皮を、アリ1匹見逃さないようにしてゆっくり見ていきます。
残すところあとわずか。結局、あの1匹だけでおしまいなのか・・・。
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そう思った時、腰くらいの高さをチョロチョロ歩く虫が・・・。焦点と露出を瞬時に合わせると、それはまぎれもないミズナラの精。
即座に採集しようと決めていたのに、いざ出会ってしまうと撮影のことを考えてしまいます。今度は逃げられないように、慎重に近づいて、薄暗いのでLEDライトを当ててシャッターを切ります。
クリイロシラホシカミキリ
幼虫はミズナラ・ハリギリなどの厚い樹皮に穿孔します。すでに左後脚が欠けており、発生末期の雰囲気を漂わせます。
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撮影もそこそこに指でつかみます。こんなに小さいのにヒゲナガカミキリの仲間とは、にわかには信じられません。
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そして、依頼されているDNAサンプル用に追加個体を探してさらに幹を3周しますが、追加個体は得られませんでした。
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御神木様、ありがとうございました。来年は、もっと早くここに来ます。
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水の蓄えも底を尽き始めたので大急ぎで下山します。
途中、立ち枯れで怪しく光るルリボシカミキリ
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やっとのことで舗装道路まで降りてくると、今度は灼熱の世界。
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気温は、16時40分でも30℃。
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ジュウシチホシハナムグリ、コシボソスカシバ、クリイロシラホシカミキリ
「どれも偶然だったけど、また新しい虫に出会えて良かったな」
満足しながら道路を歩いていると、周辺視野が反応。こんな場所で一体何が・・・。
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焦点を合わせた瞬間、思わず長竿を落としてしまう。
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アオカミキリ♀(瀕死状態)
この炎天下では、疲れて道路に落ちて人間に踏まれたりもしますね。
お盆近くにもなるとさすがに虫の数が減ってきて単なる山歩きにもなりかねませんが、ずっと同じ場所に通い続けていれば偶然でも何かが採れることがある、今日はそんな採集になりました。狙いのオオトラカミキリは、あくまで「下見」ということで。来週が、おそらく、勝負の時。