奥多摩:久々の林道歩き

2007.Aug.18

春は里から上り、秋は山から下りてくる。8月も中旬を過ぎると植物も暑さで疲れてくるような気がします。カミキリムシ好みの花も稜線沿いでわずかに咲き残る程度。平地では相変わらずの暑さが続きますが、山ではもうそろそろ秋の気配が感じられるはず。

今までの奥多摩探索を振り返ってみると、この時期に灯火採集をしていないことに気づきました。もしかしたら、まだ採集できていない種類が来るかもしれない。いつも通りに奥多摩行きの電車に乗り込みましたが、灯火採集および翌朝の採集に期待を膨らませるあまり、研究室でのソーティング作業による疲労蓄積を軽く見ていました。


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終バスを降りて、灯火ポイントに向かいます。夕闇があたりを包むのと同時に、雲も空を覆っていきます。わずかな夕食を食べながら虫の飛来を待ちます。

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ビロウドカミキリ♀

一番最初に見つけたのがこのカミキリ。ガードレールに衝突した音が聞こえました。これが、今夜唯一のカミキリムシになろうとは、この時は知るよしもない。

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アカアシクワガタ♂

この他にミヤマクワガタの♀はそこそこ飛来しました。撮影後、クワガタ狙いの親子連れにプレゼント。

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ヒメドロムシの一種

一部の甲虫屋さんで人気がある微小な水生甲虫です。上翅の両脇の黄色い縁取りがかろうじて見えます。暗くなると電灯の周りを無数に飛び交い、しばらくすると消えてしまいました。

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ヘビトンボ

不用意につかまえると首を反転させてかみつきます。

全体的に甲虫の飛来は少なく、ミヤマクワガタが来る程度。鱗翅目の数も少なめです。そして、じきに霧雨が降り出しました。

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ヤママユ

霧雨の中、大きな体で外灯のまわりを飛び回ります。これを見ると、秋の気配を感じます。

なんだか疲れてきたので、日付が変わる前に眠りにつきました。

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翌朝

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空は相変わらず曇っていて、微小な霧雨が降っています。起きた時にはすでに6時半、始発電車+始発バスで来るのと同じ時間。腰と肩が異常に痛く、寝袋から這い出るのがものすごくつらいです。

天気も悪いし体調もあまり良くないので、当初予定していた登山は中止し、林道を歩くことに。

わずかな朝食を取って準備を進めていると、2年前から頻繁に遭遇してきたベテランの虫屋さんと今年2度目の再会。私がまだ採ったことないカミキリの話や、今年の奥多摩の異常乾燥ぶりなどを教えてくださいました。今後ともよろしくお願いいたします。

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毎度お馴染みの気温は20℃。まあまあの気温です。

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この林道を歩くのは5ヶ月ぶりです。しかし、ここまで来るだけで結構疲れてしまい、砂利道を歩くと、なんてことない場所で滑ったりします。

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「大自然のふところでやすらかにお眠りください」

登山道を選択するとここで供養されそうな予感。登山道への誘惑を振り切り、あくまで冷静に林道を進みます。

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清らかな川の流れ。林道から見ているだけでも癒されます。

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林道脇ではタマアジサイが花盛り。

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ヨツスジハナカミキリも少ないながら食事中。ヒメヨツスジハナカミキリではないことを確認しながら放していきます。

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イチゴ類の葉裏に静止するアオバセセリ。霧雨が降っているからか、夜の眠りから覚めていないのか。

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5年前、まだ虫屋2年目の頃に東京都2例目(1例目?)のハイイロハナカミキリを採集した場所。もはや当時の面影は残っていません。あの頃を思い出しながら、懐かしい道を歩いていきます。

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所々に小規模な崩落の痕が見られます。路肩が金網で覆われて多少は安全になりますが、ノリウツギなどの花が伐採されてしまい昆虫採集には適さなくなっていきます。

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金網がない場所はほとんど石垣になっていてあまり面白くないのですが、たまにこのようなむきだしの斜面があります。

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イケマがあるなと思ったら、すぐに見つかるホソツツリンゴカミキリ

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谷側の斜面には、工事や剪定で出た伐採枝が積み上げられています。土場がない現在は、こういう場所が貴重な採集ポイントとなります。

場所が場所だけに、ビーティングするのも容易ではないため、まずはルッキングでどこに虫がいるのかを把握します。

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トゲバカミキリ

このような伐採枝置き場ではもっとも普通に見られる種類です。

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ハスオビヒゲナガカミキリ

長い触角が非常に目立ちます。実は、奥多摩自己初。なので、撮るより採るを優先しました。

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ヤマグワを見上げると、梢には無数の食痕。何気なく見ていても、食痕の主は目に飛び込んできます。

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イッシキキモンカミキリ

一緒に網に入った食痕つきの葉とともに撮影。灼熱の日差しの中よりも微小な霧雨の方が活動しやすいのかもしれません。

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ある程度来たところでだいぶ疲れてきたので、ここから折り返すことに。出発前に、休憩も兼ねて周囲を探索。

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花といえばこれが一番目立ちます。ハチやアブが飛来するので、適度に採集。

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キオビクロスズメバチ

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モモブトハナアブの一種とハナバチの一種

飛んでる時は姿形では区別しがたいですが、飛び方で区別は簡単です。

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道端にある朽ちた木を何気なくひっくり返してみると

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オニクワガタ♂

奥多摩で探していたもののなかなか見つからなかった種類。小さいですが大アゴの形がとてもかっこいいです。本日一番の収穫です。

体力も回復したのでバス停目指して下り始めます。

途中、気になる脇道を発見して下っていくと、

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隠しつり橋?

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その近くに良さそうなミズナラがあったので、しつこく探してみましたが主はおらず。

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イヌブナの根元には真新しい脱出孔があったものの、主は当然のごとく見つからず。

不思議な脇道でした。

だいぶ下ってきたら、雨が止んで空がちょっとだけ明るくなりました。

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路上にはスミナガシの姿も。

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染み出し水にはカラスアゲハ。久々の降雨で生き生きしているように見えます。

林道を下りきり、多数の観光客とともに舗装道路を歩きます。

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道端のカラムシにはラミーカミキリの姿。休日を自然の中で過ごそうと、マイカーで山道に交通渋滞を引き起こしてまで訪れる人にはなかなか気づいてもらえない存在でもあります。


前回、ツガ林の下見をしておいたにもかかわらず、今回は体力の都合もあって林道歩きにしました。久しぶりに歩くと植生や道路の変化に驚き、採集ポイントの出現と消失に一喜一憂します。大した距離は進めませんでしたが、季節の移り変わりや虫の生息場所などをより一層丁寧に見た気がします。たまには、こういう気楽な採集もいいかもしれないと思いました。来週は腰痛・肩痛・首痛・頭痛が治っていますように。

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