奥多摩:未踏の林道

2007.Oct.21

10月も下旬に入り、世間ではコブ叩きも終盤になってきました。この時期になると他の昆虫の姿も少なくなり、木々が色とりどりに輝くにつれて、なんだか少し寂しい気分にもなります。

奥多摩に初めて訪れてから6年目、これまでいろいろな場所を訪れてきましたが、未だに1回も足を踏み入れたことがない林道があります。普段は車(特に大型車)の往来が激しくて敬遠してきましたが、今年は台風通過後に林道が通行止めになっています。これはチャンスとばかりに、来シーズンの下見も兼ねて叩き網を片手に行ってきました。


前日の夜、電車に乗り込み、奥多摩駅へ。この時期、夜の採集はさすがに今まで挑戦しなかったのですが、学生時代最後の年ということで、少々無謀なことにもチャレンジします。

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古風な駅舎は夜になるとライトアップされて、それなりにきれいです。このまま寝てしまうのももったいないので、明るい駅の周辺を探索します。

この時期にもなると甲虫の姿はまず期待できないので、明かりに集まる夜の鱗翅目を重点的に探していきます。

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キノカワガ

多数の鱗翅目が見られた中で、すぐに名前がわかったものはこれとマメノメイガだけ。本来は樹皮と一体化するための模様ですが、建物の壁にも見事に溶け込んでいます。

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アオマツムシ

こんな山奥にも進出しているのは驚きです。電車に運ばれたか?

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キボシカミキリ

奥多摩で確実にキボシが見られる某所のイチジクにて。気温はかなり低いのに、ゆっくりと歩いていました。

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ハスモンヨトウ

今日の一番の鱗翅目はこれです。この迷彩模様がすばらしい。

日付が変わるあたりで探索を終了し、寝袋にくるまります。野外調査で氷点下の世界を経験しているので、今晩は暖かいほうです。

翌朝、始発のバスでいつものエリアに向かいます。

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空は雲ひとつない晴天。山も上の方は茶色になっていて、植林が一目でわかります。

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気温は、4.8℃(7:10)。ついに5℃を割り込みました。

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今日の目的地である林道の入り口。今まで行ったことがある林道に比べれば植林は少なめのようです。スタート付近はこのように明るい感じです。

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少し進んで斜面の形に沿って曲がると、このように日陰になります。

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一応、持っている叩き網の上で枯れ木を叩いてみるのですが、トビムシの姿に毎回驚かされるだけです。

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明るい道

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暗い道

明暗が適度な間隔で交互に出現します。あるハナカミキリで有名な林道だそうですが、その理由がなんとなくわかる気がします。

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黄色く色づいたカツラの木。林道沿いの木々はまだ夏の延長のようなのですが、たまに綺麗に色づいている木もあります。

特に虫を採るわけでもなく、沢沿いの木々であるヤナギやカツラがやたら多い場所や、カラカラに乾燥していて夏には何もいないような場所など、まわりの様子を頭に刻みつけながら進んでいくと、終点近くまですぐに来てしまいました。

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終点付近は、こんな荒れた風景

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斜面は一面のアザミ畑。咲き残りの株にはマルハナバチ類(3種ほどいる)が必死にもぐりこんでいました。晩夏に来ればヒョウモンチョウ類が乱れ飛び、あのカミキリももしかしたら生き延びているのかも知れません。

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砂利道から登山道に入り、さらに進むと、沢に出ました。水はとても澄んでいます。

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沢筋の斜面にはスズタケが生えており、セダカコブヤハズカミキリがいそうな感じだったので、シカ道を頼りに登ってみました。

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ヘリハネムシ

しかし、枯葉からこの甲虫が落ちてきただけ。無駄に体力を消費し、登坂経験値が上がっただけでした。

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少し戻って、アザミが多い斜面の近くで昼食休憩。

ぼんやりとまわりの景色を見ていると、路上を飛ぶハチの姿が目につきます。

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シダクロスズメバチの♂

ほとんどはワーカーですが、たまに触角が長い♂が混じってます。つかんでも刺す真似をするだけ。

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ヒロバネヒナバッタ

何か直翅目系の鳴き声がするので周囲を探したら、このバッタが飛び出してきました。後脚と翅をこすって発音します。かなり素早いので、捕獲には一苦労しました。

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ハネナガフキバッタ

このバッタも見られました。気配に敏感ですぐ飛び立つので撮影にはちょっと苦戦。こちらは捕獲はそんなに難しくありませんでした。

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キイロスズメバチの♂

シートに溜まった水を飲みにきていました。

結局、この場所で2種類のバッタと2種類のスズメバチを採集して、昼を過ぎたところで少し早いですが帰途につきました。

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ウラナミシジミ

林道脇の花で吸蜜する新鮮な個体。このあたりでは越冬できず死滅する運命にあります。

この他に、テングチョウ、キタテハ、アカタテハが見られました。

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ハタケヤマヒゲボソムシヒキ

今日は収穫が少ないので、これも迷わず採集します。毛がフサフサしていて暖かそうです。

帰りは下りなのであっという間に戻ってきてしまいました。

下見の成果としては、

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根元に新旧含め多数の脱出孔が確認できたイヌブナ。7月頃に要チェックです。

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転落防止柵と同じ高さで花が咲くクマノミズキ。同じく7月になったら要チェックです。

他にも、アオカミキリ幼虫が切断したイロハカエデの枝や、ちょうど良い高さに生えているシナノキなど、無数のチェックポイントを頭に叩き込んで林道を後にします。

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気温は、17℃(13:40)。昼夜の温度差がだいぶあり、これから紅葉が進みそうです。


というわけで、採集記にまとめると非常に短く内容もないものになってしまいました。下見が中心になってしまうと、どうしても秘密にしておきたい場所や、写真では伝えきれない場所をたくさん見てくることになります。今回紹介できなかった部分については、来シーズンをお楽しみに。

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