2007.Nov.18
前回の採集の最後に偶然見つけた、ニシキキンカメムシ幼虫の死骸。日本産最美麗種かつ局所的分布を示し、奥多摩では幻のカメムシ。この時期は幼虫が越冬態勢に入る頃にあたると考えられていますが、交通事故に遭った個体が見つかるくらいなら、人手をかけて探せばきっと見つかるのではないか?
ということで、しまちゃんさん、ペプチドグリカンAさん、kamikiriさん(以上、年齢順)の合計4名で、奥多摩に錦の輝きを探しに行ってきました。
朝6時、府中に集合し、しまちゃんさんの車で一同奥多摩へ。だんだん夜が明けていくのを見ながら、空いている道路を進みます。
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7時30分、奥多摩町最北の集落に到着。中央が、今日の目的地。ツゲの自生地として有名です。気温は10℃以下、かなり寒いです。身支度を整えて、さっそく出発します。
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舗装道路、植林下り、橋、植林登り、広葉樹林急登、不毛な登山が1時間ほど続きます。
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ペプチドグリカンAさんは3回目、私は2回目の登山になります。分岐点につく頃には、みんな汗びっしょりになっていました。少し休憩して体力を回復させた後、いよいよツゲ自生地に挑みます。
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岩の頂上からは落葉と植林とがまだらになった山々が見渡せます。
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恐る恐る下を覗くと、1時間前に見た集落があんなに小さく見えます。
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頂上にあった小さな祠。お札には「修行」の2文字が見えます。かつて、集落の人々は年に一度、みんなで登ってきていたそうです。
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そして、ツゲ。ニシキキンカメムシ幼虫の寄主植物として知られています。意外と葉は小さいです。
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さて、苦労してツゲの自生地まで登ってきたわけですが、ここからさらに地道な探索が始まります。
方法は2つ。
1.落ち葉めくり
2.葉裏ルッキング
各自、身の安全に留意しながら探索を始めます。
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岩の上にはふかふかのコケが生えており、ミズナラなどの葉が積もっています。吹き溜まりのような場所を重点的に探していきますが、そのような場所は無数にあり、的が絞れません。
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日当たりが良い場所には、草本類がびっしり。
「完全にツマジロウラジャノメの世界だな」byしまちゃんさん
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結局、1時間ほど探索した結果は、ゴミムシダマシ少々、コメツキ、ハネカクシ。ニシキキンカメはおろか、カメムシ自体が見つかりませんでした。
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岩の上を歩く赤いクモはとても目立ちました
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もうここでは採れる気がしないので、下山途中でオサ掘りやルリクワ採集をすることにします。
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登山道を下って立ち枯れをチェック。隣の生木に右足をかけていないと落下してしまうほど急な斜面です。
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谷底まで降りてくると、太めの倒木も現れます。しかし、削ってもオサムシは1匹も現れず・・。
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かわりに、キイロスズメバチが出てきました。
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谷底の平坦な場所は探し尽くしたので、斜面にとりついて倒木を探します。なかなか良い朽ち具合の木は見つからないのですが、数多く探せばいつかは当たるもの。
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ルリクワガタ♂
産卵マークは見当たらなかったものの、非常に良い朽ち具合と思っていたら案の定、出てきました。
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近くにいたペプチドグリカンAさんとkamikiriさんに知らせたところ、kamikiriさんが登ってきたので、削りかけの材を譲って他の材を探しに行きます。
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富士山の大沢崩れのミニチュア版を登って倒木をチェックしていきますが、産卵マークはあっても食痕が見当たらず。画像中央付近に小さく写るしまちゃんさんは、材と格闘中。タッパーに何かを収納しているのが見えました。
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しばらく探索を続けているうちに昼時になり、誰からともなく昼食タイムに。kamikiriさんが削っていた材からは結局ルリクワの追加は出ず(コメツキにやられたか?)。しまちゃんさんはさきほどの材が大当たり、ルリクワを7匹も採っていました。ペプチドグリカンAさんはコガネムシ幼虫3匹とキイロスズメバチ女王。
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昼食が終わり、下山しながら探索することに。枯れ沢はこの秋の台風で磨かれて石灰岩がまぶしく光っていました。
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不毛な道を逆戻りして、再び集落まで戻ってきました。
「あんなところまで行ってきたのか・・・」
「1回行けば、もう2回目はいいや・・・」
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このままでは終われない、ということで前回の事故現場に行ってみることに。
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「ここだ」
2週間前、ニシキキンカメムシは確かにここを歩いていたのです。事故現場に来て、やることは、先ほどと同様です。
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地道に、落ち葉めくり
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地道に、葉裏ルッキング。頻繁に車が通るので、いずれも危険と隣り合わせです。
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一瞬、ドキッとしますが、
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オオトビサシガメ
至る所で見つかりました。
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時折、飛来するカメムシ。「ヨツモン」説と「ヨツボシ」説が唱えられましたが、ヨツモンカメムシのようです。
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だんだん飽きてきて、遺棄された機械をいじったりしながらもダラダラと歩いていきます。
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そして、お馴染みの風景。だいぶ紅葉が進んでいます。
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お馴染みの温度計。現在13℃、この時期にしては暖かいです。
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温度計の近くで、カメノコテントウにやられたkamikiriさん
「ああ、ピーマン臭い・・・」
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一同、完全にやる気を失い、車へ戻ることに。午後になると風が吹くのが常の奥多摩。今日の風は一段と冷たいです。
事故現場を過ぎたあたりで、急に風が強まり、枯葉が雪のように舞い降りて、足にパラパラと当たります。
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その時
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「うおーーーーー」
奇声を発しつつ、瞬時に身をかがめて手を伸ばす私。
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前を歩いていたkamikiriさん、後ろを歩いていたペプチドグリカンAさんが振り向く。
「うわーー」
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「写真撮ってもいいですか?」
「と、とりあえず袋に入れさせて・・・(風で飛びそう・・・)」
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前回とほぼ同じ場所で、幻のカメムシが、劇的な状況で再び私たちの前に姿を現しました
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「ちょっと色が違うような・・・」
「でも、個体変異じゃない?」
「アカスジキンカメムシの色ではないな・・・」
「風で枯葉ごと落ちてきたんじゃない?」
「REAL神風」
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風のいたずらによる、土壇場の発見。まさに、出来すぎの採集状況でした。
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「飼育どうしよう、越冬させるか否か」
「気楽にやればいいんじゃないですか」
「むしろ、このまま標本にするとか・・・」
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車までの道のりで、夢は大きくふくらみました。
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すでに、お気づきの方も多いと思います。
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前胸にある、白いふちどり。
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本物のニシキキンカメムシなら、前胸はすべて青緑色に輝いています。前回拾った死骸も、前胸はすべて青緑色でした。
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つまり、これは、アカスジキンカメムシということになります。白黒パンダ模様のイメージが強かったのですが、赤色型というのも出現するそうです(この時は知らなかった・・・)。まるで、人気者のニシキキンカメムシに似せているかのように・・・。
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この悲しい事実を知ったのは、延々と渋滞する道路を通り抜け、電車に揺られて自宅に到着してからのこと。
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それまでは、みんなで、夢を見ていました。
片道1時間ほどですが急な登山道、めくってもめくっても昆虫がいない落葉、割っても割っても虫が出てこない朽木。狙いの虫が虫だけに、修行のような採集になってしまい、最後に夢を見たものの、錦を飾ることはできませんでした。副産物もたいして得られず、企画者として申し訳ありません。
採集に加えて長時間運転をしてくださったしまちゃんさん、2時間睡眠+運動靴での登山を敢行したペプチドグリカンAさん、4時出発でギリギリの乗り継ぎで来たkamikiriさん、お付き合いいただきどうもありがとうございました。今度は、もっと確率が高い虫を狙って行きましょう。
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