2007.Apr.22
新緑の季節を迎え、日を追うごとに緑が増えていきます。東京近郊の里~低山地のカエデは今が花盛りで、カミキリ屋さんもあちこち出かけていることでしょう。
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さて、私の今年の目標のひとつは、コボトケヒゲナガコバネカミキリ。春に出現しカエデやミズキなどの花に集まる小型種です。本種を含むヒゲナガコバネカミキリ類とは相性が悪く、本種は未採集です。
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いつも行く奥多摩での出現はどんなに早くても5月中旬で、その時期はすでに大学の実験が開始しており、サンプリング&ソーティングで生きるか死ぬかの状態。しかし、里~低山地ではちょうど今頃出現しています。前日、野宿明けの野外調査地農家巡りから帰還し天気予報を見ると、天気は思ったよりも良さそうでした。「これは、多少無理してでも行くしかない。」
朝、本町水田に行き、ビニールハウスの窓を開けてから長竿を持って高尾山方面へ。
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電車の中で、地図を見ながら行き先を考えます。高尾山山頂付近、小下沢、日影沢、城山、・・・どれも駅から時間がかかり、人も多そうです。
コボトケヒゲナガコバネカミキリ(以下、コボトケ)の名前の由来である小仏峠は、本種のタイプ産地(新種記載の基になった個体が採集された場所)であり、その意味で虫屋さんには魅力的な場所ではあるのですが、ハイカー満載のバスに乗り、衆人環視の中で網を振らねばならない(実は先週、密かに行きましたが、行かなかったことにします。)
最終的に思い浮かんだのは圏央道建設予定地となっているあの場所。あそこなら訪れる人も少ないだろうし、虫屋さんもこの時期ならきっと誰もいないだろう・・・。
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人がたくさんいる駅から離れ、人があまり行かない方へひたすら歩きカエデの花を探します。
しばらくして、圏央道の工事現場に到着。正面に、なかなか良さそうなカエデの木が見えます。
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花はちょうど満開で、日当たりも良好です。右手には山が迫っており、虫もたくさん飛来しているのが下からよく見えます。6.3mの長竿を最大限に伸ばすとここまで届くので、梢部分以外はすべて掬えます。
唯一の不安材料は、断続的に吹く南風。風が止んだ時にいかに手早く掬うかがポイントになります。荷物を置いて、上着を木にかけて春のカエデ掬いの始まりです。
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ひと掬いして網の中を覗くと、かなりたくさんの虫が入っています。そんな中、真っ先に確保したのが、
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コシボソハナアブsp.
腹部の基部が細くなっていて、まるでハチのようです。ハナアブのホームページでこの仲間の存在を知り、こんなのを採ってみたいなと常々思っていました。これは幸先良いスタート、のように見えました・・・。
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ひととおり掬うと、網にはかなりの数の虫が入ります。多い順にあげると
双翅目(小型ムシヒキアブ、小型ヒラタハナアブ)
膜翅目(ハバチ、小型ハナバチ)
鞘翅目(ケシキスイ、コメツキ、カミキリなど)
カミキリで入ってくるのはヒナルリハナ、キバネニセハムシハナが圧倒的
次に多いカミキリがシロトラカミキリ。次に、トゲヒゲトラ、ヒメクロトラ、トガリバアカネトラが少々。
ヒゲナガコバネは網の中をいくらかきわけても影も形もありません。やはり、相性の悪さはそう簡単には変わらない・・・。
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しばらく無心で網を振り続けますが採れる種類は大して変わらず。時おり、室内採集用にいくつか虫を生け捕りにする程度。人通りはほとんどなく、昆虫採集の説明も2回のみ。
「どんな虫がいるかを個人的に調査しています」これが決まり文句です。
ひたすら網を振る私を不思議そうに眺める猫。この後、車で乗り付けた人にエサをもらってました。
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そして、カエデ掬いの黄金時間とされる午前11時になりました。しかし、この時間になると風がだんだん強くなり、時おり訪れる無風時間も短くなり、日差しが出てきて、甲虫の数が激減するなど、状況はどんどん厳しくなっていきます。
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何度目かで、トラフシジミが入りました。
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手に乗せてみたり
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カエデの木にかけていた上着に止まらせたり、気分転換に遊んでみたりします(この後、リリース。その後、もう一度網に入り、またリリース)。
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そんな中、網に他とはちょっと違う雰囲気の甲虫が入る。
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やっと来たか?と思っても、よく見るとハチということもしばしば。
「やはり、今日もダメなのか・・・」
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「もうダメだ、帰ろう」と「いや、あと一回」を繰り返し
無風・微風を狙って網を振り続け、中を確認することン十回目、今までとは違う、触角の長い虫に自然と手が伸びました。
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ついに、ヒゲナガコバネが網に入りました。触角が長いので、オスのようです。上翅に紋があるので、コジマか、コボトケ。斑紋を見る限り、コボトケのように見えます。
腹部にはきれいな縞模様が。コボトケで間違いないようです。この風の中、よくぞ来てくれました。
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1匹採れると、追加を狙ってしばらく粘ってみる気になります。
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すると、すぐに2匹目が網に入りました。今度も、オスです。
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またしばらくして、今度はメスが網に入ります。この後、さらに2匹ほど追加できましたが、いずれもオスでした。
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12時を回る頃、本日最大のカミキリが網に入りました。ベニカミキリです。天気が悪くなっている兆候を感じ、カミキリ飛来もピークを過ぎた頃ということで満足のうちにカエデの木を後にしました。
苦手のヒゲナガコバネ狙いでかなり苦戦しましたが最終的には目標を達成できて、コシボソハナアブsp.も運よく採れてしまい、無理して採集に行った甲斐がありました。
ただ、今回掬ったカエデが来年もあるかどうかは気になるところです。
これで、盛夏まで陸上用網は収納して、かわりに水生網を振り続けることになりそうです。
帰宅後、室内撮影で悪戦苦闘しているところ。