2008.Aug.16
ちょっと登るとメジャーな登山道に合流し、すぐに平坦な道に出る。山頂はもうすぐそこ。
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道端には刈られたアオキが放置されていた。「各種広葉樹、特にアオキの枯葉に潜り込む」というツチイロフトヒゲを期待してすばやく網に移して叩くが、何も落ちてこない。
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山頂手前で、伐採木置き場を見つける。タブノキ、スダジイなどで構成されており、隅々まで目視したが、何も見つからない。
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ヒナカマキリ
叩いてみると意外と多く落ちてきた。照葉樹林の林床に生息する、日本最小のカマキリ。
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そして、山頂を過ぎると舗装道路に切り替わる。時間はまだ8時なのだが倒木ルッキングで疲れたので、ここは気分転換に林縁のルッキングに切り替える。
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道端には伐採枝が積まれている。じっくり見てから叩いていくが、カミキリの姿はなかなか見つからない。
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でも、この環境なら数打てば当たるもの。
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ノグルミの伐採枝に、ポツンと黒い影が浮かび上がる。これは、もしかしてセダカ?
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ちょっと期待したものの、ヒメヒゲナガカミキリだった。採集依頼があるので、慎重に生け捕りにする。
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日向にあるアカメガシワの新しい伐採枝。ヒメヒゲナガがいそうな気がしたので、思い切りビーティングしてみる。
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ダニまみれで、触角が切れた個体が落ちてきた。もう発生末期なのだろうか・・・。かろうじて3匹を追加、計4匹となる。
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日が高くなるとともに舗装道路を歩くのがつらくなってきたので、薄暗い竹林に避難して、再びセダカ探し。
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こんな倒木や、
こんな倒木を見て回る。
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ホソクビキマワリ
下膨れの体形がちょっとだけセダカに似ている。セダカと同じく、翅も退化しているのだろうか。
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暑さはしのげるものの、今度は蚊の猛攻を受ける。セダカは見つからないまま、また舗装道路へ戻る。
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時間は9時、雲が出てきて気温上昇は鈍くなる。先ほどと同じく、道端の伐採枝を見ながら歩いていく。
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タブノキの伐採枝
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ヤハズカミキリ
まだ生き残っているようだ。
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ちょっと日陰になったところでは、オサムシがミミズを食べていた。種類は、恥ずかしながらわからない・・・。
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落葉の上で力尽きるノコギリカミキリ♀。腹を鳥に食われていた。
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しばらく舗装道路を進んでいくが、ここで粘ってもセダカやツチイロフトヒゲが採れるわけがない。飛翔能力を捨ててまで豊かな自然林を追い求めたカミキリに出会うには、やはり蚊の猛攻を覚悟の上で森の中に分け入らなければ。
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ということで、9時に再び森の中へ。なんとなく踏み跡がついており、ノコギリで切った枯木やゴミが落ちている。おそらく採集者が時々入っているのだろう。
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ここでは倒木に加えて立ち枯れもそこそこあり、地面に近い部分を中心に、念入りに見ていく。
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倒木
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立ち枯れ
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倒木
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立ち枯れ
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根返り
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斜面を這いずり回っていると、もはや蚊の猛攻は気にならなくなる。半ズボンで足は無防備だが、刺すなら刺せばいい。それだけ集中して無数の倒木と立ち枯れを見ていくが、セダカは見つからない。
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ナガゴマフカミキリ
一瞬、ドキっとした。
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同じく、ナガゴマフカミキリ。薄暗い林床だと、非常にまぎらわしい。
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気づいた頃には、時間は12時。3時間も斜面を徘徊していたことになるが、結局セダカもツチイロフトヒゲも見つからない。腹も減ったので一休みして昼食を食べたら、集中が切れてしまった。水も底を尽いてしまったし、もう斜面を徘徊する気にはなれない。もうひとつのメジャーな登山道を下って、ゆっくり帰ることにしよう。
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メジャーな登山道
先ほどの道よりも、だいぶ乾燥している。これでは、セダカもツチイロフトヒゲも厳しいだろう・・・。まあ、ベーツヒラタが採れたからまだ救いはあるものの、淡路島まで来て目標の2種が採れずに帰るのは、悔しい。
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しばらく歩くと、カクレミノに見覚えのある穿孔サインを発見。タテジマカミキリの幼虫の仕業だ。
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普通なら成虫が幹についてないか探して、いなければ素通りしてしまうところだが、ふと頭にひらめくものがあって、その場を離れず、「あるもの」を探した。
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それは、幼虫によって切り落とされたカクレミノの枝。ちょうど根元のところに落ちていた。だいぶ新しく切られたものらしく、葉はまだ柔らかそう。これは、もしかして、いけるかも・・・・。
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狙い定めてすばやく拾い上げ、網の上で叩く。ポロポロと落ちた枯葉をかきわけると、そこには小さなカミキリムシの姿があった。
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ビロウドカミキリにも似ているが、あまりに小さく、体形もちょっと違う。
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間違いなく、ツチイロフトヒゲカミキリ
登山開始から8時間、ようやく見つかった。この出会いのために、わざわざ淡路島まで来たのだ。
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この乾燥した森の中では、タテジマカミキリ幼虫による枝の切り落としは、ツチイロフトヒゲカミキリに貴重な隠れ家とエサを供給することになるらしい。
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この先、しばらくカクレミノを重点的に探してまわるが、新たな枝の切り落としは発見できず。天然のトラップは、回収の手間はないものの、当たるのはちょっと難しい。
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しかし、じきに絶好の採集ポイントに出くわす。道端に、アオキの新鮮な伐採枝が落ちているではないか。近くには作業道具があったので登山道整備で刈られたのか、それとも誰かのトラップなのか。いずれにせよ、ありがたく叩くことにする。
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すばやく拾って網に移す時に、ポトリと黒い影が落下するのが見えた。飛び去ることはないのでそのまま枝を叩き、ゆっくり枯葉をかきわける。
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ツチイロフトヒゲカミキリ
本日、2個体目(帰宅後に調べてみると、1♂1♀だった)。
セダカは採れなくても、これでもう満足。
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やがて、道は階段になり、追加個体を狙えるような環境ではなくなる。
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下山開始から1時間半で、麓まで降りてきてしまった。もう、あとはバス停までのんびりと歩くだけ。
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途中、山がきれいに見える場所で記念撮影。高尾山よりも楽に頂上まで登れてしまう山だけれど、飛べないカミキリを養う豊かな森が残っている。これよりはるかに高い六甲山系とは、対照的だ。
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そんなことを考えながら、夕暮れが近づく淡路島を後にする。寝不足で疲れたけれど、目的のうち1種だけでも採れて満足だ。
帰宅後
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さっそく、ベーツヒラタが潜り込んでる材を取り出す。入り口に詰めた枝はかじりとられ、もう少しで脱走されるところだった。
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ピンセットを突っ込んで、噛み付かせる。そのまま、少しずつ引っ張り出す。
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ベーツヒラタカミキリ
生きている姿は初めてみた。遠目ではゴキブリに良く似ているが、こうしてみるとなかなかカッコイイ。
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こちらの孔には、大きいカミキリ幼虫が入っている。ウスバか、ベーツヒラタか、それとも・・・・。来年、何に化けて出てくるか、楽しみだ。
強行日程で臨んだ初めての淡路島だったが、未採集のベーツヒラタカミキリがなかなか珍しい状況で見つかり、ツチイロフトヒゲカミキリにもどうにか出会うことができ、行った甲斐があった。地図だけではわからないセダカの住む山を実際に歩いてみたことも、次の探索に向けて大きな収穫となった。来週は、セダカを探しに、もう少し足を伸ばしてみようと思う。
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