秋の味覚イナゴ狩り

2008.Oct.4

実りの季節を迎え、食べ物がおいしい季節になってきた。山、里、川、海、それぞれに秋の味覚があるが、みなさんは何を思い浮かべるだろうか。

カキ、ナシ、ブドウ、・・・・果物

クリ、ギンナン、・・・・木の実

サンマ、サケ、・・・・・・魚

マツタケ、・・・・キノコ

サツマイモ、・・・野菜

全部楽しんでいたら一日3食では足りないし、財布も持たない。

なお、虫屋としては次の2つも忘れてはいけない。

イナゴ、クロスズメバチ(ハチの子)

どちらも美味・珍味として根強いファンがいるが、一方で「昆虫」ということだけで抵抗感がある人も少なくない。ハチの子は採集に専門技術を要するため、素人でも簡単に集められるイナゴ狩りを今年も行うことにした。


朝8時、この夏にミドリシジミを採集した里山を再び訪れる。秋の訪れとともに朝晩はだいぶ冷え込むようになっており、朝露が太陽の光を受けてキラキラと輝いている。


イナゴ袋(仮称)

洗濯ネットに塩ビ管をつないだもの。昔は手拭いを袋状にして竹筒をつないだそうで、それと構造は同じ。管を少し奥に差し込むことでイナゴが脱出しにくくなり、通気性のある袋によってイナゴが蒸れで弱るのを防ぐ。昔の人はよく考えて道具を作ったものだと思う。

刈り取りがまだ終わっていない水田では、イナゴが稲につかまっている。しかし、収穫目前のイネを荒らさないように採集するのは非常に面倒なので、もっと効率の良い場所、農家の方が気にしない場所を目指す。

イナゴ採りに適した場所は、このような刈田の脇の草が繁茂した畦。

草丈がちょっと長めの方がなお良い。

稲刈りで住処を追われたイナゴたちが一斉に避難してくるのである。

砂利が敷かれていない、土の農道。轍の外には適度に草が生えており、こんなところも良い住処となる。一歩足を踏み込むだけで5,6匹が飛び跳ねるというかなりの高密度地帯であった。

刈り取り前の水田に挟まれた畦はかえってイナゴの密度が低いが、片側だけでも刈ってあると、畦際のイナゴの密度が増す。一見するとここも良さそうに見えるのだが、いざ採集するとなると、驚いたイナゴが稲穂に飛び移ってしまうので、効率的な大量採集は案外やりにくい。

途中、農家のおじさん数名に話しかけられる。

「イナゴ採ってはるの?」

「はい、そうです。」

「ようけ採ったな。」(この時点で1kgくらい)

「はい、佃煮にして食べます。」

「あれはうまいもんな。」

イナゴ採りとイナゴの味、知っている人は知っている。

先週も訪れた畦を今日も歩いてみたのだが、前回よりさらに個体数が増している感があった。大学の本町水田とは比べ物にならない個体密度。人力では、とても採り尽くすことができない。

昔は、どこの水田もこんなだったんだろう。過去60年間でコメの収量は格段に増えたけれど、水生昆虫、アカトンボ、イナゴなど、失ったものも、また大きい。

6時間ほど黙々と採集して3kgほど採集(個体数に直せば4ケタは超えているはず)。動き回るイナゴのため、袋が少々温かくなっている。

せっかく里山に来たので、水田だけでなく雑木林も見てみようと思い、ちょっとだけ下見に行くことにした。

谷戸の奥にある水田の背後にある、コナラの並木道

雑木林には台場クヌギが作られており、樹液が湧き出ていた痕跡も。

雑木林の道はため池へとつながる。水生昆虫の越冬にはちょっと厳しいか・・・。

帰りに偶然拾ったヒメスズメバチ♂(かなり衰弱)。秋に出てくるオスだけは毒針を持ってないので素手で触っても平気だが、オスを見分けるにはコツが必要なので、慣れない人は絶対に真似しないこと。

女王と交尾した後は冬を越すことなく死んでしまう、はかない存在。この個体も、限られた時間の中で無事に相手を見つけられたのだろうか。同じオスとしてなんとなく同情を覚えながら、人もまばらなバスに乗って帰途についた。


今日は爽やかな秋晴れの空の下で、汗を流しながらのイナゴ狩りは、狙いの虫を求めて山を徘徊する普段の採集とは、また違った面白さだった。さあ、この後は佃煮作りが待っている。

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