摩耶山:静寂のカエデ

2008.Apr.29

我が目を疑うほど、甲虫が網に入らなかった3日前のカエデ掬い。連日の乾燥注意報、当日のやや強い北風、甲虫の羽化脱出と開花のわずかなズレ、・・。理由はいろいろ推測できるものの、花が満開なのにカミキリが1匹も飛来しないというのはとにかく信じられないの一言に尽きます。

先日お会いしたベテラン虫屋さんがおっしゃるように、「もう摩耶山では虫はあまり採れなくなっているのだろうか?」

いや、そんなことはないはず。減ったといっても、絶滅したわけではない。丹念に探せばきっといろんなカミキリが来るはず。奥多摩だって、現にそうだったではないか。

ということで、もう一度、摩耶山のカエデ掬いに挑戦することに。


前回と同じく、自転車で坂を登りきり、登山口へ。ケーブルカーはまだ動いてないので、トラップ回収も兼ねて歩いて登ります。

トラップ設置場所は、入り口からちょっと進んだこの斜面。見るからに乾燥しているけれど、何か入ってるだろう。

1個目は、獣に掘り返されていました。街中によく出没するイノシシでしょうか。

2個目と3個目は、落葉のみ。

4個目も、何もなし。獣にやられないように1つだけ何も入れずに仕掛けたものです。

まだ動き出していないのか、それともこの近くには生息してないのか。ひとまず、頂上付近に仕掛けてあるトラップに望みをつなぎます。

前回と同じく、雑木林の中を淡々と登っていきます。

途中、前回は気づかなかった伐採地を発見。展望台があって、そこから町がよく見えます。景色のためには簡単に木を切ってしまうんですね。

前回の伐採地よりも新しく、この冬に切られたばかりのようです。まだ時間が早いからか、虫の姿はありませんでした。5月になったら、けっこう面白そうだということをインプットして先に進みます。

しばらくして、前回の伐採地に到着。まだまだ時間はあるので、休憩を兼ねてちょっと採集していくことに。

まずは、ビーティング。コナラのひこばえをバシバシ叩いていきます。

ある程度叩いたら、虫がいないか見ていきます(職場でやってるのとあまり変わらないなと思いつつ・・・)

もっとも目につくのが、毛虫類。触るとかぶれる種類は毛虫全体のほんの一部なので、その風貌に慣れればまったく気になりません。


キクスイモドキカミキリ

1箇所叩くと0~2匹ずつ落ちてきます。東日本だとシナノクロフカミキリがポロポロ落ちるところですが、ここは関西、西日本。

前回掬ったアオダモの仲間も、まだまだ花盛り。

前回はヒメクロトラカミキリ1匹のみでしたが、今日はもっとたくさん採れるだろうか・・・。


ミドリカミキリ

それまで小さいカミキリばっかり見ていたので、網の中を歩く姿が見えた瞬間は、アオカミキリかと思ってしまいました。これが出てくると、もう初夏ですね。

この後、ビーティングと花掬いを適当に繰り返しますが、あまりパッとしません。飽きてきたところで山頂方向へ歩き出します。

「山の中腹で初夏ということは、山頂はようやく春になるのかな」

そんなことを思いながら、ロープウェイの駅を目指します。

休日だけあって、中高年のハイキング客が多いです。

駅構内に温度計を見つけたので、撮影。16℃ (10:15)、ちょっと低めですが昼までにはもう少し上がるでしょう。

5分ほどで山頂に到着。人影はまばらです。

そして、例のカエデ並木へ。風もほとんどなく、天気も良いので、これは期待できるはず。

と、思ったのですが、実際に掬ってみるとハナアブだらけで、カミキリムシがまったく入りません。関東であれだけ普通に見られたヒナルリハナカミキリすら入りません。

何か、この山、おかしいぞ!

おまけに、好奇心旺盛なおじさんおばさんから質問攻めに遭うので非常にやりにくい。30分ほど掬って、もう嫌になったので移動することにしました。

途中、林内にあったアカマツの伐採木。材の上をじっと見つめても、歩き回る虫の姿はなし。

Rhagiumでもいないかと樹皮を剥がすも、ゾウムシの幼虫のみ。

しばらく歩くと、人気のない道沿いに咲く手ごろなカエデを発見。

花つきも申し分なし。

さっそく、掬ってみます。

パッと見た感じでは、カミキリの姿はない。

でも、よく探すとヒメクロトラカミキリが1匹。

さらに掬ってみると、また1匹入りました。

さきほどのカエデよりはマシなので、ここで粘ってみることにします。

何回掬った時だったか、ようやく別のカミキリムシが入りました。あまり採ったことがない種類だったので、慎重にポリ袋に納めます。


オダヒゲナガコバネカミキリ♀

ヒゲナガコバネ類には縁がないので、とてもうれしいです。

すぐ近くにはモミの木が2本ありました。飛翔力が弱いので、きっとあそこから飛んできたのでしょう。

とたんにやる気が出てきて、掬っては5分待ち、掬っては5分待ち、を繰り返しますが、カミキリムシの追加は得られませんでした。

「これじゃ、農工大構内よりも種類数少ないや。あっちならヒメクロトラもオダも採れるし、ヒナルリハナ、トゲヒゲトラもたくさんいるのになあ・・・・」

昼過ぎになってやや風が出てきたので、花掬いは終わりにして下山することにしました。

途中、山頂付近でトラップ回収。

しかし、残念ながらどのコップにも何もいませんでした。

意気消沈して、再びロープウェイで下ります。

乾燥した小道を抜け殻のように下っていきます。

再び、伐採地に到着。

やや遅い時間ですが花を掬ってみます。

再び、ミドリカミキリ。本日一番の虫は、これに決定。山頂付近のカエデに比べれば、雲泥の差です。

行動範囲を広げると、ガマズミが咲き始めているのを発見。来週あたりはきっと虫が寄ってくるんだろうな・・・。

ビーティングをしてみると、相変わらず大量の毛虫に混じってキクスイモドキカミキリが落ちてきます。まるで、関東のシナノクロフカミキリと同じように。

しばらく叩いていると、なぜかカミキリムシの蛹が落ちてきました。トラカミキリ系で、この大きさだと、キイロトラカミキリかな?来週あたりは、きっと材の上で運動会状態になっていることでしょう。

(持ち帰ってみたところ、後日キイロトラカミキリとして羽化)

ビーティングと花掬いをある程度やったところで、再び山道を下ります。

陽だまりでトカゲが日光浴をしていたので、捕まえて撮影。

「もう初夏だというのに、カミキリは全然採れないなあ。」

前回よりも大きな疲労感とともに、自転車で宿舎へ帰りました。


結局、今回もカエデでまともにカミキリが採れませんでした。一体、この山はどうなっているというのか・・・。

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