摩耶山:秋の足音

2008.Sep.27

彼岸を過ぎ、エアコンなしの自宅ではようやく熱帯夜が終わった今日この頃。早いもので、神戸に引っ越してきてから半年が経とうとしている。仕事では右も左もわからない状態はようやく脱出したが、専門外の小さな虫や制度のことなど、まだまだ勉強の日々は続く。

このところ淡路島や四国への遠征を続けてきたが、そろそろ財政難が・・・。ということで、通勤中や仕事中に毎日のように眺めているあの山、コブヤハズカミキリ類2種の模式産地となっているあの山へ、交通費0円で体力維持を目的に行くことに。

(採れる自信は0%、あくまで体力維持が目的。)



通勤途中にいつも見る風景

爽やかな秋晴れの中、自転車を軽快に走らせる。

坂道は自転車を押してなんとか登りきり、登山口に到着。水分補給をして、叩き網を装備する。

叩き棒をよく置き忘れるので、紐で枠につなげてみた。本当は剣山で試す予定だったが、枠を置忘れて今日まで持ち越していた。

まずは、階段を登っていく。

セダカもマヤサンもここでは山頂付近という固定観念があるのだが、今回はそれを白紙に戻して麓付近も探索してみることにする。とはいっても、林内は青空と同じく爽やかに乾燥していて、ササが生えているといえども、まったく採れる気がしない。

道の反対側はこのとおり。この前行ったサヌキセダカの生息地もこんな感じだったが、日射も風通しも段違いで、カラカラに乾いている。

ヤブツバキのひこばえが枯れていたが、もちろんコブの姿はなし。

しばらく登ったら今まで気づかなかった分岐があったので新しい道へと進んでいくと、尾根道に出た。南向きの斜面は日射がきついが、北向き(画面右)はちょっと良い感じがした。

イノシシの道を頼りに、下へと降りていく。

ハリギリが生えていて大きな枯葉が落ちているが、どれも乾燥気味。

コナラの枯葉つき枯枝もあったが、食痕すら見当たらず。

さらに降りていくと、コナラの倒木があった。枯葉もついているが、ちょっと古くてあまりピンとこない。でも、せっかくなので叩いてみる。


アカサシガメ

これが3匹落ちてきたくらいで、あとはクモが少々。

近くの枯れ沢には伐採枝が放置されていた。作業小屋がこの後ろにあり、人の手が入っているようだ。一応叩いてみようと近寄ってみるが、ジョロウグモが高密度で営巣していて振り払うのに一苦労。風通しが良すぎるらしい。

なんとかして叩いてみるが、乾いた枯葉がパラパラと落ちてくるだけ。

この先、沢筋を登って行っても尾根道に戻れるとは思えなかったので、一旦下ってもう一度登山口まで戻ることにする。

途中の道沿いにあったカエデの伐採枝。日当たり良好なので無駄だとは思いつつも、回り込んで叩いてみる。


ニセビロウドカミキリ♂

触角長い虫が落ちたということで、不覚にもほんの一瞬だけだが期待してしまった。>前脚のフ節が欠けており動きも鈍く、この夏最後の生き残りかもしれない。

しばらく歩くと地図が現れ、無事に登山口まで戻ることができた。さあ、今度は山頂付近を目指すことにしよう。

林内が薄暗いのは麓だけで、その先は明るく乾燥した道を淡々と登っていく。

この前、目をつけておいた伐採枝置き場。パリパリに乾いているが、万が一を考えて回り込んで叩いてみる。


パリパリの枯葉たち


ヒナカマキリ

これが落ちてくるところは淡路島を彷彿とさせるのだが、結構叩いたのにこの1匹のみ、かなり厳しい環境なのだろう。諦めて山頂を目指すことにする。

登山道は途中で寺の跡を通過するのだが、その手前でちょっと気になる場所を発見、道を外れて奥へ。


アオキの部分枯れ

今までの場所より薄暗い林内にちょっと期待したのだが、良い立ち枯れはあったものの、枯葉は意外と少ない。

収穫は、天高くそびえ立つスダジイの巨木

70cm四方の叩き網が小さく見える。かつての乱伐をかろうじて免れ、ここまで大きくなったのだろう。奥多摩のミズナラにはわずかに及ばないものの、周りの木が細いだけにその存在感には圧倒される。今日はいいものが見られた。

スダジイの巨木を後にし、再び登山道を淡々と登る。周りにどんな木が生えているか、地形はどうなっているか、少しでも多く頭に焼き付けながら。


陽だまりに静止するアサギマダラ。どこから飛んできて、どこへ飛んでいくのだろうか。

タンナサワフタギに残るニセシラホシカミキリの食痕。もしかしたらトガリバホソコバネも生息しているのだろうか?

そうこうしているうちに、山頂手前のササ藪に到着。秋の乾燥が激しい西日本の山々では、「ササ藪 → 湿度が保たれる → コブ生息に適している」となるのだろうが、これまでの経験からすると、「ササは人の目を惑わすものである」

ササ藪の上はいきなり高木層となっていて、低木層が欠落している。これでは、林内に風が通りやすく乾燥しやすいことだろう。

ササ群落をよくよく見ると密度がわりと低く、保湿能力が十分に発揮できないように見える。加えて、密度が低いことで枯葉もひっかかりにくくなっている。

可能性があるとすれば、ササの根元に落ちているホオノキの枯葉くらいか。

目にとまったものをすばやく拾い上げて叩き網の上でバラしてみるが、特にめぼしい虫は出てこない。


ツヤヒサゴゴミムシダマシ

逃げられたマヤサンコブヤハズ♀はちょうどこれと同じサイズだったので、落ちてきた瞬間は不覚にもちょっとびっくりしてしまった。


摩耶山の頂上

ちなみに、ギリギリで特別保護地区になっている。

少し歩いて、未練がましくこの場所へ到着。セダカ♀に逃げられた、サクラの丸太置き場。あの時と比べて、キノコがだいぶ生長している。

ひとまず、幻に近い摩耶山セダカが数ヶ月前には確かにここに存在した。可能性があるとすれば、この周辺。めぼしい場所を見て回ることにする。

伐採枝はあちこちに積まれており、枯葉つきのものもある。食痕の有無を確認してから、叩き網の上に手繰り寄せて叩いてみる。


コアリガタハネカクシ


鱗翅目幼虫


コガシラウンカの一種


ハネナシコロギス


ノコギリカメムシ幼虫

肝心のセダカは、当然のことながら影も形もない。

少し場所を移動してみると、小規模な伐採が行われていた。展望台への近道を作るためのものだろう。(こんなことするから乾燥がますます進むのに・・・・)

一応、叩いてみる。


ノミゾウムシの一種


チャタテムシの一種


イシノミの一種

ここも、ダメだった。

最後に、道路沿いのアカマツをチェックしてみるが、ケブカヒラタの脱出孔はなぜか見当たらない。

アカマツに巻きついたカラスウリの一種。葉が緑色のまましおれているのは、何かが穿孔しているサインでもある。

根元に目を移すと・・・

糞があちこちからあふれている。スカシバガ幼虫が潜っているようだ。なるべく根元に近い方を探ってみる。

すぐに幼虫を発見。候補はオオモモブトスカシバ、シタキモモブトスカシバ

この葉からすると、キカラスウリのようだ。幼虫が入った茎をほどほどに採集して持ち帰る。マヤサンもセダカも採れなかったけど、これでよしとしよう。


展望台からの景色

今日は紀伊半島の右側に、四国の山もはっきりと見える。吹きつける風で、じっとしていると半袖では寒いくらい。「もうすぐ10月、山はまだ緑だけれど、秋は確実に訪れているんだな。」毎年この時期に感じる一抹の寂しさを胸に、登山道を下って帰途についた。

inserted by FC2 system