今年最後のコブ探し

2008.Oct.12

10月も中旬に入り、朝晩の冷え込みも少しずつだがきつくなっていく。

街中にいても感じるくらいだから、山の中ではもっと厳しいことだろう。

晩夏から初秋にかけて枯葉を食べて肥えてきたコブヤハズカミキリたちも、

そろそろ地面に降りて快適な寝床を探し始める頃であろう。

関西に来て楽しみにしていたコブを探す旅も、今年はもうそろそろ終わり。

ツルギセダカ、サヌキセダカ、淡路島のセダカ、この3つには順調に出会えた。

しかし、六甲山系で36年間の空白を持つ幻のマヤサンコブヤハズカミキリには

何度か挑戦したものの、ついに出会うことはなかった。

六甲山で伐採を免れてわずかに残ったブナと同じく

寒冷期に日本海側から進出したと推測されている、この飛べないカミキリムシ。

分布の中心地域ではどのように生息しているのかを見てみたくなり、

今年最後のコブ探しはマヤサンコブヤハズカミキリに決めた。

果たして、どんな環境に生息しているのだろうか。


前日の夕方、電車を乗り継いで福知山駅に到着。

今回の目的地は兵庫県北部、ある程度知られた生息地であり、

バスと徒歩1時間で行けるのだが、残念ながら休日はバスが運休。

仕方ないので前日に最寄り駅まで行って、レンタカーで現地入り。

厳しい冷え込みに何度も目を覚ましてエンジンをかけて暖をとりながら

誰もいない林道で一夜を明かす。

朝6時、起床。

川沿いには冷たいそよ風が吹いていた。

半袖では5分も持たないほど寒い。

周りは植林が中心だが、広葉樹林も残っている。

身支度を整え、林道のさらに奥へ車を進める。

植林が途切れたあたりで車を停め、探索開始。

林道脇に咲くアザミ

「ビッチュウアザミの枯葉」という採集状況を思い出し、

ルッキングの後で叩いてみるが落ちたのはクモだけ。

いくら沢沿いとはいえ、風通しが良すぎるのだろう。

少し歩くと再び植林地帯に入ってしまったが、

右側の法面に見慣れた潅木が密生しているのに目がとまった。

オオバアサガラ

梅雨明け前に咲く白い花には、ピドニアが集まる。

奥多摩では林内でも幼木が育っていたので、シカが好まない樹木なのだろう。

落葉樹であり、柔らかそうな枯葉があちこちに落ちている。

軽く手前の方を叩いてみるが、クモとゴミムシが少々落ちてくるだけ。

ちょっと乾燥気味かもしれない。

ならば、奥の方、土に近いところはどうだろう。

マヤサンコブヤハズカミキリ♂

開始から5分そこそこで、もう見つかった。

さすがは有名な生息地だけのことはある。

しかし、こんな植林の縁でよく生き残っているものだ。

とりあえず、この時期でもまだ枯葉にしがみついていることがわかったので一安心。

オオバアサガラの枯葉はたくさんあるし、追加が期待できるはず。

期待しながらこのオオバアサガラ群落を叩いてみたが、

残念ながら追加はまったく得られなかった。

あれは偶然だったのか・・・・。

しばらくすると道が二手に分かれたので、古い道へ進むことにする。

もっぱら植林の中を突き進み、開けたところも多い。

日当たりも風通しも良いので、これは沢沿いとはいえ乾燥が厳しそう。

もともと苦手なビーティング、これではやる気がでない。

トカゲ

まだ寒くてすぐには動けない。

しばらく進むと、右手前方に先ほどと同じく

オオバアサガラの群落が見えてきた。

さきほどと比べて木が高いため、地表付近の枝葉の密度は低い。

それでも、枯葉はそこそこ見られるので、一応軽く叩いてみる。

1発目で、本日2個体目が落ちてきた。

寒くてまったく動こうとしない。

こんなことなら、叩く前にもっとよく見ておけばよかった・・。

さて、このまま叩き続ければ追加を得るのは簡単かもしれない。

でも、有名産地で数を稼いでもまったく無意味だ。

ここからは目視での探索に切り替えることにしよう。

林道から見えるところには見当たらなかったので、ちょっと斜面を登ってみよう。

林床付近にはしおれた草本の葉がある。

地表1m以内のところにも枯葉がわりとひっかかっている。

振動を与えないように注意しながら、丹念に眺めていく。

目で見て何もいなくても、念のため手で握る。

こうして、自分の目の確かさを磨いていく。

しばらくして、ようやく追加を発見。

この枯葉にいるのだが、逆光でよく写らない。

強制発光

横から見た時はわからなかったが、下から見上げたら脚と触角が見えたのだ。

枯葉をそっと取り除いて、撮影。

軽くつついても動かなかったので、寝ているのだろうか?

この後、しばらく追加は見つからなかったが、

もう1個体くらいいるだろうと思って探索を継続する。

目視探索は根気がいるのだが、有名産地では努力すれば報われるもの。

ふと顔を上げると、何かの視線を感じる。

自分で空けた小窓から、じっとこちらを見つめていたようだ。

わりと大きく、かわいらしい♀だった。

このくらいで探索を切り上げ、先へ進むことにする。

しばらく進むと林道は終わり、登山道になる。

沢を何度か渡り、植林の中を突き進む。

潅木がわずかに生えているくらいで、面白みに欠けるスギ林の小道。

山野草に詳しければ意外と楽しめるのかもしれないが、

残念ながら草本はまったくわからない・・・・。

ところどころ、オオバアサガラの幼木があるので

枯葉があればチェックする。

サヌキセダカ標準サイズ並みの、マヤサンコブヤハズ♂

こんなところでも、がんばって生きている。

このまま先に進んでもずっと植林が続くみたいなので、

ここで引き返すことにする。

林道の分岐点まで戻り、もうひとつの林道へ進んでみたが、

これは無駄な時間であった。

法面は大きく削られ、林縁との距離が大きすぎる。

奥の方へ行けばきっと良い環境があるはずだ、

そう思って歩くこと1時間。

尾根まで来てしまった。

森林限界というわけでもないのに、草原になっててがっかり。

県RDBで「生息基盤が脆弱」(準絶滅危惧種相当)とされる理由がよくわかる。

峠からの眺め:南方向

マヤサンがいた沢筋の道がはるか遠くに見える。

北方向の眺め

京丹波の山々が見える。さすがに日本海までは見えなかった。

こんなことなら車で登ってくれば良かったと後悔するが、

脚力維持に少し役立ったと思えばいいか。

帰り道では、気温が上がって活発に動き回るハンミョウの姿が目立った。

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