盛夏のやんばる

2008.July.26-Aug.2


7月30日(水)

山にこもって4日目になるが、丸一日採集に費やせるのは今日が最後。いつも通りのビーティング中心の採集にも飽きてきたので、帰ってからも楽しめるよう、今日は材採集の日にしようと決める。

ようやく台風による風もおさまり、車の外に出るとそよ風が吹いている。今日も林縁を見て歩くのだが、昨日とは視点が少々異なる。探す対象が、虫が今の時点で来ていそうな材か、過去に来ていたであろう材か、という違い。

まず目についたのが、この中途半端に切られたタイワンハンノキ。すでにタマムシ系の脱出孔が2つほど空いているが、わりと新しい。

近寄って観察すると、コウノゴマフカミキリが樹皮をかじっていた。

その傍らには、伐採枝が積まれていた。同じく、タイワンハンノキ。直射日光を浴びず、かつ草にもそれほど埋まっていない。きっと何かが入っているだろうと思い、いくつか拾って切り分ける。

この後、材採集に熱中するあまり写真撮影が面倒になったので事後撮影のみ。


イタジイの部分枯れ


フウトウカズラの枯蔓

この他に、フヨウ、シマグワ、リュウキュウハゼノキを切って、トランクに詰め込んだ。

もっとたくさん材を採ろうとも思ったが、疲労もあって飽きてきたため、ヤンバルアワブキの花を見にいく。風が弱まっているので、きっと虫の数も増えていることだろう。

写真には写っていないが、昨日よりもチョウ類の数が多くなっていた。


リュウキュウムラサキ

あまり持ってないので、これは採集する。

長竿で高いところを掬うと、リュウキュウヒメカミキリが2匹入る。


オキナワナガハナアブ

体を掃除するため葉に止まっている。

風がないと、チョウやハチ以外の昆虫がよく集まるらしい。これが初日から続いてくれればと思うが、仕方ない。

「今までずっと山にこもっていたから、平地の様子も見てみたい」

昼前にふと思い立ち、地図で目星をつけた場所まで移動する。

目星をつけたのは、田園地帯。与那国島でもそうだったが、夏は休閑期。青々として見えるのは、刈り株から伸びている二番穂。

木陰に車をとめて、ちょっと歩き回る。

水が張られている水田を発見。ほぼ真上から日差しが降り注ぐ中、ちょっと水面を覗きこんでみる。


ミナミヌマエビ?


トビイロゲンゴロウ

ヒメトンボ

水面にはトンボが5種類くらいいて、縄張り争いをしている。これはシオカラトンボに良く似ているが、体サイズがふた回りくらい小さい。

この他に、サギが魚をつついてたり、オタマジャクシが泳いでいたり。多様な生き物をはぐくむ水田の機能が十分に発揮されていてうれしい限り。もっと探せばいろいろ見つかるかもしれないが、山の中と違ってものすごく暑い。早々と車に戻り、涼しい場所を求めて車を走らせる。

道路沿いに小川をみつけたので、ここでしばらく休憩することにする。裸足で川に入ると、ひんやり冷たくてほっとする。落ち着いたところでまわりを見ると、川の生き物の姿が見えてくる。


ハゼの一種


エビの一種

この他に、テナガエビもいた。


タイワンシマアメンボ

素手で10分ほど格闘した末に、ようやく捕獲。


リュウキュウルリモントンボ


アカナガイトトンボ

2種類とも、とても鮮やかだった。

この他に、川辺の砂利道にはオキナワハンミョウが群れていた。護岸されることもなく、ゆるやかに流れる平地の小川は、とても新鮮だった。

一時間ほど涼んだ後、川から上がって車に戻る。すると、目の前に光輝く大きな物体が飛んでいるではないか。紡錘形で、斜めの姿勢でゆらゆらとホバリングするその虫は、本州では見慣れていたものの、沖縄では初めて。方向転換して飛び去ろうとする気配を見せたので、迷わず左手で地面にはたき落す。


オオシマルリタマムシ

九州以北のヤマトタマムシと比べて、点刻が多くざらざらした印象。こういう大型美麗種は、採集難易度など関係なしにうれしい。

さて、どこから飛んできたのかと辺りを見回すと、道沿いに倒木を発見。タイワンハンノキのようで、根元付近で折れて道路側に倒れている。ギリギリで日陰になっており、タマムシのみならずカミキリも来ていそうな雰囲気。


ヨツスジトラカミキリ

産卵場面は初めて見る。これは期待できるぞと、視点を上にずらしていく。

すると、上からゆっくりと歩いてくる虫が。オオシマルリタマムシではないか。

短時間で2匹も出会えるなんて、今日はついている。

さらに、一番下の部分をよく見ると、コウノゴマフカミキリがいた。

上の方にはヨツスジトラカミキリがけっこう産卵に来ていて、この倒木はなかなか良いポイントのようだ。

この後、しばらく付近を探索してみるも、めぼしい追加はなし。オオシマルリタマムシがさらに1匹飛来したが、長竿を構える前に飛び立ってしまった。

暑さと疲労が採集意欲をだんだん奪っていったため、適当なところで切り上げ、ちょっと遅めの昼食を取る。その後、やんばる野生生物保護センターまで行って図鑑を眺めたりして、日が落ちるのを待つ。

日没後、コンビニを巡る。


オキナワカブトムシ♀

森の虫と思っていたが、こんなところにも飛んでくるとは・・・。

コンビニによって飛来する昆虫相がだいぶ異なり、ナナホシキンカメムシとツチカメムシが大量に来ているコンビニには少々驚いた。

その後、昼間の小川の付近まで戻り、蛍光灯をセット。夜中に一度目覚めて飛来状況を確認するが、大して虫は来ていない。

でも、タイワンハンノキの倒木には、ちゃんとコウノゴマフカミキリがいた。自前の灯火採集は、なかなか難しい・・・。

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