2008.May.4
集落付近でサクラの季節が終わると、山の木々が芽吹きはじめ、大型連休の頃になれば、さわやかな新緑の季節となる。カエデやウワミズザクラといった甲虫類が集まる花は、集落から尾根沿いまで順を追って開花していく。先日の摩耶山では悲惨なカエデ掬いだったが、奥多摩ではそんなことはまず考えられない。花を掬えば何かしらカミキリムシは採れるし、少なくとも甲虫は見つかる。たとえ小雨が降っていてもPidonia(ヒメハナカミキリ類)が必ず入るものだ。
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奥多摩の春先の花掬いでは、なぜか出会えないカミキリムシがいる。
ヒゲナガコバネカミキリ類
唯一採集したのは、ホソツヤヒゲナガコバネカミキリただ1個体、しかも、花ではなく林縁の適当なスウィーピング。昆研の先輩や後輩は他の種類もそこそこ採集しているので、これは狙っておかねば。ということで、帰省のついでに奥多摩のカエデ掬いへ。
自宅から始発電車に乗ると、3回~4回の乗り換えがあるため、どんなに早くてもフィールドに到着するのが9時になってしまう。せめてもう1本前のバスに乗って、8時にはフィールドに到着したいところ。何か良い方法はないか考えた末、2回目の乗り換え駅まで自転車で行き、その駅から始発電車に乗ることにする。
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朝4時、自宅を出発し、目的の駅まで自転車を走らせる。電車に乗り、寝て、起きて、乗り換えて、寝て、奥多摩駅に7時前に到着。
駅前では、フジの花が満開。
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電線にはツバメの姿。駅周辺は標高が低いので、すでに初夏を迎えています。
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バスの発車まで少し時間があるので、いつもの灯火ポイントへ鱗翅目昆虫の撮影へ。
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シャチホコガの一種
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ヤガの一種
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だんだん大型の蛾も出現してきていました。
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撮影を終えてバス停に戻ってくると、長い行列ができていました。大型連休とあって、山の呼び声を感じてやってくる人が普段より多いようです。臨時バス3台目にようやく乗って、いつものフィールドへ。
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バス停から降りて歩き、集落を抜けて新緑の中を進みます。
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山の中腹までは緑が鮮やかですが、尾根沿いはまだ芽吹いていないようです。
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おなじみの谷筋はすっかり緑に染まっていました。右手前に見えるトチノキは、まだ蕾です。
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気温は約17℃ (8:20)。天気も良いので、今日は20℃を超える絶好の採集日和になりそう。
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まずは、この時期にいつも掬っているカエデを目指して歩いていきます。
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途中にある土場を一応チェックしてみますが、ビャクシンとヒメスギの姿はありませんでした。昨年に比べて、1~2週間ほど季節の進行が早いようです。
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お目当てのカエデに到着。
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遠目ではなかなか良さそうに見えましたが、近寄ってみると、花は盛りを過ぎているようでした。例年なら満開になっているので、やはり今年は季節が早く進んでるようです。
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長竿を伸ばして掬ってみると、咲き終わった花がたくさん入ってきました。なんか、嫌な予感・・・。
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かろうじて、ヒナルリハナカミキリが2匹。花掬いには早い時間とはいえ、もっと入ってもいいはずだが・・・。適度な時間間隔をおいて、何度か掬ってみます。
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クビナガムシ
1年目の頃は、カミキリムシかと思ってドキドキしたもの。
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ミドリヒメコメツキ
小さいながらも金緑色の体は見事です。
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しばらく掬ってみたものの、やはり虫の飛来状況が思わしくないので、花掬いの黄金時間になる前に絶好の開花状況のカエデを見つける方が得策だと判断。体力はあまりないので、林道を登って標高を上げることにしました。
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途中、道沿いでウワミズザクラを発見。しかし残念なことに、舗装道路沿いで観光客の注目を一身に浴びる場所。日当たりもよくカラスアゲハが吸蜜に訪れていたので心がひかれたのですが、やむなく林道を目指すことに。
(この選択が今日の採集の分かれ道であったことは、まだ知る由もない。)
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キャンプ場で現代音楽を大音量で響かせる同年代の集団にあきれながら、新緑に包まれた林道をひとり静かに歩いていきます。
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日向を歩いていると、汗がしみ出てくるくらいの陽気です。
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陽だまりでは、ミヤマセセリが日光浴。すっかり春になったのを感じます。
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林道のど真ん中では、ミヤマカラスアゲハが日光浴。この時期の出現は、ちょっと早すぎでは?
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以前から目をつけているツガの丸太。前日までの雨で表面が濡れており、虫の姿はなし。
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サワグルミの丸太にも、ほとんど虫の姿はなし。
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良いカエデが見つからないまま林道を進んでいくうちに、少し雲が出てきました。経験上、カンカン照りよりも少し雲があった方が虫が採れるのでよしとします。
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しばらく進むと、とある建造物の前に到着。植栽された若いイロハカエデが、ちょうど満開になっています。
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荷物を置いてちょっと掬ってみようと思ったとき、カエデの周りを飛び回るアブらしき虫影を発見。花にダメージを与えないようにして、すばやくネットイン。
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コガシラアブの一種
金属光沢あり、立派な体格、そこそこの大きさ、なかなか良いアブです。
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慎重にチャック付ポリ袋に収めた後、カエデを掬ってみます。
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シロトラカミキリ
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トガリバアカネトラカミキリ
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ピックニセハムシハナカミキリ
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植栽の小さなカエデでも、摩耶山のカエデ並木をはるかに上回っています。ただ、集虫力はさすがに弱いようなので一度掬った後は追加はなし。
この時点で、10時半。ここで粘ってもヒゲナガコバネカミキリは期待できそうにないので、もっと大きめのカエデを求めてさらに林道を進みます。
(この選択が、今日の採集を決定付けるものとなることは、まだ知る由もない。)
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日当たりが良いカエデ、長竿が届くカエデ、満開のカエデ、・・・・。黄金時間が目前に迫る中、早足で林道を登るものの、いっこうに良いポイントが見つからない。実は途中で一ヶ所だけ良さそうな場所があったものの、もっと良い場所があるはずだと先に進んでしまったことが悔やまれる。
さっきの植栽カエデの前で粘った方が良かったのか、いや、それとも最初のカエデで粘った方が良かったのか。あの時の選択が、こんな結果になろうとは・・・。
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そして、黄金時間の始まりである11時を迎えてしまう。
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その時の林道からの眺め。まだヤマザクラが咲いており、カエデはまだまだ。どうやら、標高を上げすぎたらしい。
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こうなったら、もういいや、戻りながらビーティングでもしてみよう。
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ビーティングネット(70cm x 70cm)を組み立て、適当にヤマブドウの蔓を叩いてみる。
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オオナガヒラタコメツキ
いきなり、巨大なコメツキムシが落下
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ヨツモンナガクチキ
最初ゴミムシかと思ったが、いつまでも逃げようとしないので良くみると初採集となるナガクチキだった。
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その後、ビーティングをしながら下っていくものの、たいした虫は落ちてこない。ビーティングのセンスはほとんど無いに等しいことを再確認。
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そうこうしているうちに、途中ちょっと心ひかれたカエデに到着。花つきが悪いのと、沢沿いで風がやや強いのでパスしたが、一応ダメもとで掬ってみることに。
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ハナアブの一種
この前の摩耶山で採集したのとおそらく同種
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これは、ちょっと粘ってみる価値あるかもしれない。荷物を置いて、適度な時間間隔を置いて再度掬ってみると、
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トゲヒゲトラカミキリ
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フタオビヒメハナカミキリ
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ダイミョウヒラタコメツキ
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コシボソハナアブの一種
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途中で見つけておきながらパスしたことに後悔しても、もうどうしようもない。だんだん天気が悪くなってきたので、見切りをつけて帰り道を急ぎます。
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登りの時には「後で見よう」と通り過ぎた伐採木捨て場。天気悪くなっているけど何か歩き回っているはずと、目を凝らしてみる。
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カラカネハナカミキリ
色彩には変異が多いのですが、これはよく見る赤系の個体。
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キオビホソナガクチキ
かなりすばしこかったので、手づかみ撮影。
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他には特に見つからなかったので、再び歩き出します。
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林道入り口近くに戻ってくると、日が差してきました。ただ、おなじみの午後の風が今日はかなり強く、花掬いどころではない。
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バス発車までまだ少し時間があるので、奥多摩では未採集のヒラヤマコブハナカミキリを探すべく、観光客が途切れるのを見計らって川沿いの急斜面を下る。
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樹洞その1
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樹洞その2(人が入れるくらい巨大)
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樹洞その3
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しかし、ヒラヤマコブハナはみつからず、カマドウマがいただけ。
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気温は22℃ (14:30)。ああ、カエデの前で粘っていれば・・・。
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駐車場からあふれた車が路上駐車して道をふさぎ、かなり危ない思いをしながらバス停を目指す。
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バス停では、長い行列。
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車で来ても、バスで来ても、この時期は人ごみに悩まされます。
せっかく奥多摩のカエデの季節に来たものの、ポイント選択でことごとく悪い方を選んでしまい、またしてもヒゲナガコバネカミキリには出会えず、その他のカミキリムシにも大して出会えませんでした。
「移動時間を少なくして、良い場所ではなるべく粘る」という鉄則を無視すると、いくら通いなれたフィールドでもなかなか思うような採集はできないことを勉強しました。これで、ヒゲナガコバネカミキリ類(オダ、コジマ、コボトケ)の野外採集は来年以降に持ち越しかと思ったのですが、実は来週から研修で関東に出てくることになっています。その時に、もう一度。