鳳凰山

2009.July.26-29


最終日:7月29日(水)

朝6時、起床。昨夜はかなりの雨が降ったようだ。団体客が宿泊しているため、朝食は7時前までお預け。雨が降る中、トラップ回収へ。

もともとトラップセンスがない私としては上出来。マイマイカブリが入っていたのが一番うれしかった。

団体客の後、山小屋の方々とともに最後の食事。キノコ料理がとてもおいしかった。

団体客は雨が止んだところで、出発。まだしばらくは雨が降ると読んだ私は、山小屋で待機。しばらくして、大雨となる。

7時半頃、雨が小降りになったところで、最後の悪あがき。小屋周辺の花を巡回して、ピドニアを採集しまくる。


ヤグルマソウ

ピドニア好みの美しい花。


ショウマの一種

こちらもピドニア好み。

ニセフタオビヒメハナカミキリ以外の虫は、無心で毒ビンに放り込む。同定するために「種の定義」「種の境界」と向き合わなければならないピドニアは、とにかく多くの個体を採集して眺めることが遠回りのようでいて近道。

花の巡回が終わり、採集したピドニアを毒ビンからポリ袋に移し替える。その作業が終わる頃には、雨も上がった。

さあ、名残り惜しいが、そろそろ出発の時。山小屋の皆様とともに記念写真を撮影し、荷物を担ぐ。

帰り道でアラメハナカミキリやネキダリスが採れることを教わり、8時30分、みんなに見送られ、3晩もお世話になった山小屋を後にした。

振り返ってカメラを向けると、目が潤んでしまいそうだったので、みんなの姿が見えなくなってからシャッターを切る。またそのうち、足腰が立つうちに、今回見られなかった虫に会いに来ます。

昨夜から今朝までかなりの雨が降ったため、至る所に水溜りができている。登山靴はすでにボロボロなので、特に気にせず歩いていく。

下りは体力をほとんど使わないので、あっという間に針葉樹立ち枯れゾーンに到着。雲の中を歩いているので、展望はまったくきかない。

登りでヒメマルクビヒラタカミキリを見つけた辺りで、休憩も兼ねてちょっと探索。針葉樹の立ち枯れの樹皮が浮いていたので、ちょっと剥がしてみる。


ヒラタクチキウマ

亜高山帯まで登らないと見られない直翅目。奥多摩では晩秋に見つけたが、夏でも成虫がいるとは・・・。

このスタイルと、渋い模様。どこでも見かけるカマドウマにはない高貴な雰囲気がある。

これ以外は、何も見つからず。見切りをつけて、先へ進む。

10時、燕頭山に到着。登山地図に書かれたコースタイムとほぼ同じ。

ベンチに荷物を置こうとしたら、ルリハナカミキリが先に座っていた。荷物を置いて、休憩を兼ねて周辺を探索する。

このエリアであれば、針葉樹の立ち枯れにアラメハナカミキリが来ていそうなものだが、良い条件の立ち枯れはあっても虫の姿がない。

仕方ないので、道沿いのササに注目する。


ヒメアシナガコガネ

3個体ほど見つかった。


アオジョウカイ

だいぶ黒い。


アオハムシダマシの一種

細分化されたので、どれに該当するかは標本を作製しないとわからない。


ハエの一種

これがもっとも多くみられた。

10分ほど探索して体力が回復したところで、先へ進む。

なだらかな稜線歩きから一転して、急勾配の下り道。右ひざを無意識にかばううちに、健全だった右ひざの内側が痛み出す。それでも、休憩の頻度は登りの10分の1くらい。湿度100%の雲の中をはやく抜け出すべく、扇子で顔をあおぎながら、スイスイと下っていく。

12時頃、ゴールまであとわずかというところまで降りてくる。奥多摩のいつもの場所と標高はほぼ同じで、雰囲気もよく似ている。

霧がどんなに深くなろうとも、奥多摩での経験があるからちっとも怖くない。幻想的な景色を堪能するほどの余裕さえある。

さあ、登りの時に目星をつけておいた立ち枯れを見てみよう。

ブナやミズナラの美味しそうな立ち枯れはいくつかある。

でも、オオホソコバネカミキリやクロホソコバネカミキリといったネキダリスはまったく見つからない。ああ、もう少しだけ天気が良ければ・・・・。

12時40分、無事にゴールイン。早朝に同じ山小屋から出発した団体客が先に到着していた。

ちょうどバスが行ってしまったので、だいぶ待ち時間がある。4日間の山篭りでボロボロになった体をリフレッシュするため、温泉に入る。

温泉から出てきたら、薪置き場で最後の悪あがき。


セイボウの一種

刺されることは考えずに手づかみ。


ナガゴマフカミキリ

個体数は多かった。


キバチの一種

こっちに向かって飛んできたので素手でキャッチ。


ゴマダラカミキリ

これが、最後に採ったカミキリムシとなった。

他にも、チャイロスズメバチが草むらを飛んでいたが、さすがに素手では採集できなかった・・・。一般には珍種とされるこのハチには、なぜか縁がある。

15時10分、バスが到着。行きと同じ運転手さんに荷物をあげてもらって、席に座る。平日なので、貸切だ。

15時15分、定刻となったのでバスが出発。こうして、3泊4日の鳳凰山採集登山旅行は終わった。


シーズン当初からつきまとう心の迷いを完全に振り切って、逃げる夏を追いかけてハイマツ帯まで登り詰めた今回の採集旅行。終わってみれば、天気に泣かされた4日間であったが、好天の時に訪れるよりも、はるかに貴重な経験ができたのではないか。初めて見る天空の世界もとても美しかったし、山小屋のオーナーの秘伝により、短い日数でかなり経験値が溜まったように感じる。奥多摩探索でも、西日本の採集でも、きっと力になることだろう。

最後になりましたが、ろくな装備も持たずに来て、天気に関係なく早朝から夜まで採集ばかりしていた私を温かく見守って下さった鳳凰小屋の皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

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