2009.Jul. 18-19
毎月第2、第4の水曜夕方から、梅田で開かれる関西甲虫談話会の会合。昨年冬から参加するようになったこの甲虫屋の集まりは、”カミキリサロン”と呼ばれる。先週の集まりの中で、氷ノ山1泊灯火採集の計画を聞く。この時期の氷ノ山といえば、ヨコヤマヒゲナガ、パキピド、オダイをはじめ、数々の魅力的なカミキリムシが発生しているはずである。まだ車の定員には空きがあるとのことなので、ご一緒させてもらうことに。久々に複数人での採集となるので、ベテラン虫屋さんの観察も楽しみである。
職場のエライ人たちとの飲み会をうまく抜け出して体力を温存する。天気予報では「ずっと雨が降る」だが、前日夜に雨天決行との連絡が入る。雨でも採集できるように準備を整えて、眠りにつく。
翌朝、8時に宝塚駅で合流し、北西へ進む。灯火採集に必要な器材が実はまだ揃っていないとのことなので、道中で店を探す。意外と手間取ったため、現地入りしたのは13時前になってからであった。パキピド(ヒゲブトハナカミキリ)の洞をチェックしていくが、残念ながら不在であった。そのため、林道の灯火ポイント目指して悪路を突き進んでいく。
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天気は曇り。だんだん晴れてくる気配がある。
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それぞれ採集準備をして、夕方まで採集することに。
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日向ではちょうどノリウツギが咲き始めている。しかし虫の姿はほとんど見えないのは、西日本ならでは。
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花掬いは諦めて、林縁や林内での採集を目当てに林道を歩いていく。
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ブナ巨木の立ち枯れ
昨年も見たものである。ネキの姿を期待したのだが、今年も見当たらない。
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ミズナラ立ち枯れ
ブナ立ち枯れのすぐ横にある。ササ藪の中にあり、ポジションや樹勢などなかなか良さそうだと思った。何度か見てみたが、ネキの姿はなかった。
(後で、これにオダイが来ていたことを知る。眼の付け所は合ってたのか・・・。)
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そうこうしているうちに、メンバーの一人が灯火採集の準備を始めた。白幕を張るための骨組みを組み立てていくが、なかなかうまくいかないようだ。このまま一人では暗くなってしまうと思い、電気系統を担当することに。
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買ってきた蛍光灯は完成品ではないので、組み立てなければならない。銅線をペンチで剥いて、圧着端子と電源プラグに接続し、配線する。中学校の技術工作の時間以来の作業である。
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30分ほどして電気系統の準備は完了したので、再び採集開始。
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シナノクロフカミキリ
枝にひっかかった枯枝をスウィーピングしたら入った。西日本では山地の自然林に行かないと見られない。
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しばらくスウィーピングや目視を続けていると、シナノキが咲いているのを発見。少々時間は遅いのだが、他に花がない状況ではいろいろ採れるかもしれない。
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シロスジナガハナアブ♀
♂は朽ちた切り株でよく見るが、♀は初めて。
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アオアシナガハナムグリ
山地で見られる大型のハナムグリ
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オオヒメハナカミキリ♀
ブナ帯でもっとも普通なピドニアである。
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ミワヒメハナカミキリ♀
奥多摩には分布していないので、初めて見るピドニアである。
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さらに、花に来ているというわけではなく、葉を後食していたものも網に入る。
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ハンノオオルリカミキリ♂
ハンノアオカミキリとは雰囲気が違うが、亜種でなく型でもいいような・・・。
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クロニセリンゴカミキリ♂
奥多摩で採った個体よりも毛が多くて白っぽく見える。
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日が傾いてきたので戻ってみると、幕の方も完成していた。足場が不安定な上に、風が強いため、相当苦労したという。暗くなるのを待つ間、メンバーの一人が林道脇の崖にコップをせっせと埋めている。ゴミムシ屋さんがトラップを仕掛けるのを見るのは、実は初めて。
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薄暗くなってきた頃、蛍光灯を点灯させ、灯火採集が始まった。Uさんの天気予報によれば、深夜に雨が降ってくるそうなので、それまでが勝負。
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フトハチモドキバエの一種
私以外は甲虫屋なので、私がいただくことに。何種類かいるらしいので、種名はあえて載せません。
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ヤハズカミキリ
これも頂き物。
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ミワヒメハナカミキリ♀
ピドニアも結構灯火に来るものだ。
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暗くなってくると、みんな夢中になって幕に飛来する昆虫を採っていく。だが、風が強く気温も低いため、小型種が中心。そんな状況でも、吸虫管を自在に操って採集し、毒ビンを真っ黒にしていく様子は圧巻であった。
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ハンノオオルリカミキリ
灯火にも割りと飛んでくる。
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ミヤマクワガタ♀
延べ3~4匹ほど飛来した。甲虫屋とはクワガタ屋とは一線を画しているため、誰も手を出さなかった。
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ムラサキトビケラ
世界最大のトビケラといわれる。その美しい後翅は撮影するのを忘れた。
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日付が変わる前に、疲れてきたので寝袋に包まって眠りにつく。夜明け前に起きるつもりだったが、目覚めた時にはすでに空が明るくなっていた。
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メンバーのうち2人は徹夜で灯火採集をしていたという。ベテラン虫屋の体力というものは、世の常識では考えられない。
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雲は尾根筋にかかり、今にも雨が降り出しそう。近くのポイントを確認した後、雨を逃れて標高の低い場所へ移動することに。
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林道から舗装道路へ出て、とある渓谷へ。なんとなく雰囲気が奥多摩に似ていて、なんとなく虫が採れそうな予感がする。本命のポイントに着く前に、車を停めて軽く採集することに。
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私は斜面を徘徊することに。ほんの10年前の奥多摩は、こんな風に林内に潅木が生えていたことだろう。
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立ち枯れや倒木などを見て回るが、虫たちは天候悪化を察知しているのだろう。ほとんど何も見つからないまま、徘徊時間だけがむなしく過ぎていく。
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ムネアカクシヒゲムシ
これくらいしか甲虫が見つからなかった・・・。
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斜面を降り、沢沿いのギャプに生えたリョウブを発見したのですぐに駆け寄る。メンバーで長竿を取り出した者は誰もいないので、まだ掬ってないはず。
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アメイロカミキリ
一応、虫は集まってきているようだ。
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アオカミキリ
これは今回の花掬いで最高のカミキリムシとなった。今年は関東方面でカエデめぐりで見つけてる人が多くてうらやましかったが、もう諦めていた時に出会えて、とてもうれしい。
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しばらくしてみんな戻ってきたところで、本命ポイントに進むことに。
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森が深くなる少し手前で車を停め、各自探索を始める。
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エゾエノキをチェックしたり・・・
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チビゴミ掘りを始めたり・・・
チビゴミムシの生息環境を少しだけイメージできた気がする。
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私も負けじと周囲をスウィーピングしたりするが、あまり虫は採れない。
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ニセシラホシカミキリ
林縁の枯れ蔓を掬ったら網に入った。不覚にも撮影後に逃げられてしまう。
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キイロクチキムシ
リョウブの花救いで入った。この鮮やかな黄色を見るとついつい採集してしまう。
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ツマグロガガンボモドキ
ガガンボにしては飛び方がおかしいと思ってネットインしたもの。翅が4枚あり、ガガンボ(双翅目)ではなくシリアゲムシ(長翅目)の仲間。動物行動学の教科書では有名らしいが、実物を知ってる学生は果たしてどれほどいるのだろうか。
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さらに、もう一ヶ所だけ確認したいポイントがあるそうなので、そこへ向かう。
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水量はそれほど増えていなかったので、川を渡る。
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渡った先には、平坦な空間が広がる。奥多摩のいつもの場所と雰囲気が良く似ており、良い虫が採れる予感が先ほどよりも高まる。
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この場所での一番の場所は、このヤマグワの部分枯れ。右の幹は生きているが、一番左は完全に枯れている。その、日陰になった部分に、なにやら細長い虫が静止していた。
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トラフホソバネカミキリ
通称「トラニウス」、実は初めて採集する種類である。上翅の模様が少々変わっていて、遠目からはオダイに見えてしまった。なかなか縁がなかっただけに、この特徴的な姿には惚れ惚れする。
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さらに林内を探索すると、ミズナラの倒木を発見。
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ナガゴマフカミキリ
折れ口のところに静止していた。遠目からはポエキラ(マダラゴマフカミキリ)かと思ったが、そう甘くはなかった。
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ハラブトハナアブの一種
倒木の洞付近を飛び回るマルハナバチ風の虫がいたので、狙い定めてネットイン。奥多摩でもよく見る種類とおそらく同じなのだろう。
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そして、残念なことに、調子が出てきたこのタイミングで雨が降り始めた。まあ、昼まで天気が持ったのだから御の字だろう。車に戻り、荷物をまとめて、撤収。
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こうして、今年の氷ノ山1泊灯火採集は終わった。
今回は時期としては良かったはずですが天候に恵まれず、事前に思い描いていたような採集には残念ながらなりませんでした。そんな中、ベテランの皆様と一緒に採集に出かけることで、そのテクニックや経験などを吸収できたのが一番の成果といえるかもしれません。Sさん、Uさん、Iさん、どうもありがとうございました。神戸にいる間は、サロンでまたお会いしましょう。
2日目にシデ倒木から割り出されたカミキリムシの蛹。私がいただいて、飼育することに。
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7月20日 羽化
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予定通り、カスガキモンカミキリに化けました。