尾根道歩き

2009.Apr.18

相変わらず初夏のような陽気が続く今日この頃。例年ならば、駆け抜ける春を追いかける気力がみなぎっている時期だが、今年に限ってはなかなかそういう気持ちにはなれない。社会人2年目を迎え、年度初めの慌しさに戦力として埋没していることもあるが、それだけではないことは確かで、どうすればよいのか自問自答する日々が続く。

そんな毎日が続いてはとても持たないので、心のバランスをとるために、休日はいつもの里山へ。今回は特に狙いがあるわけではない。長い冬を越えて、一気に活気付いてきた新緑の雑木林の中を、先週に引き続いて歩いてみる、ただそれだけ。



谷戸の入り口のカエデ

先週はまだ芽吹き前だった。採集記を書くつもりはなかったけれど、ついついカメラを構えてしまった。

花は満開。時間は8時半、虫の飛来にはちょっと早いかもしれない。一応、長竿と網は持ってきてたので掬ってみるが、ハエ類とハチ類がほとんどで、甲虫はコメツキが2匹くらい。

もう少し待ってみようと思い、周辺を散策。

川沿いの竹林の手前に、白い花がたくさん咲いていた。調べてみると、シャガという中国原産の植物のようだ。目線を下げて眺めていると、ハナアブ類が飛び回るのがよく見える。いつの時期に、誰が何を思って、この場所にたくさん植えたのだろうか。

再び戻ってカエデを掬うも、新たな甲虫の飛来はない。川沿いで、気温がやや低いからだろうか。このまま待ってもあまり良くなさそうなので、先に進むことにする。

途中、前回見られなかったため池に立ち寄ったが、ウシガエルのオタマジャクシが泳いでいたくらいだった。昨年訪れた際にはヒシの存在を確認しているので、ネクイハムシ類を期待しているのだが、まだ芽が出ていない。

明るい放棄水田沿いの農道にはモンシロチョウ、ベニシジミ、ツマキチョウなどが飛び交う。道はやがて乾燥気味の薄暗い尾根道へと変わる。昆虫採集にはちっとも面白くない環境である。でも、この時期には木々の間から隣の谷戸や山が見えるので歩いていてもそんなに苦にはならない。

しばらく歩き続けた後、分岐を下って、先週ミドリシジミの幼虫を確認した谷戸へ立ち寄る。

たった一週間でずいぶん大きくなっていた。先週の探索によって目が慣れてきたこともあり、今日はあちこちに巣があるのがわかった。飼育用に少しだけ持ち帰ることにする。

尾根道に戻って、ひたすら先へ進む。ここから先は未踏の領域。

時々、谷戸へ降りる分岐があるのですべて下ってみるが、ことごとく耕作放棄されている。

谷戸の奥にあったため池の名残り。底はかなり浅くなっており、ドクゼリが岸辺から進出しようとしていた。

人手で苦労して田を切り開いて食糧増産に励んだ時代とは異なり、便利な機械もあるし食糧も(今のところは)それほど困らない現在。徒歩でないと入れないほど道が狭い場所は、真っ先に見捨てられる。

薄暗い尾根道を淡々と歩いていくと、急に左側の視界が開ける。

雑木林の中に突如として現れた棚田。

このエリアではいくつか見たことがあるが、ここまで大きいのは初めて。

池も3つあり、畦も斜面も、手入れがかなり行き届いている。

そっと覗き込んでみると、日光浴していたカメが水中に慌ててもぐり、小魚の群れが一斉に逃げていった。

ため池の上には、クリの伐採木が転がっている。うまい具合に直射日光が当たらないようになっているので、初夏になれば、カミキリムシやタマムシでにぎわうことだろう。

斜面を登り、伐採地へ。かなり太い切り株があり、ひこばえが育っていた。

その根元には樹洞があり、トゲアリの巣となっていた。梅雨の晴れ間には、例のアリノスアブがもしかしたら見られるかもしれない。

このあたりでカメラの電源が切れたので、撮影はここでおしまい。風景を目に焼き付けながら、ゆっくりと歩いていく。


道沿いのアベマキ

昨年は樹液が豊富に噴出していたようだ。幹周り半周ほど樹皮が剥がれているのでもう長くは持たないだろうが、今年はなんとか楽しめそうだ。

そんなこんなで歩き続けていると、いつしか道は集落へ。初夏のような日差しの中でなんとかバス停にたどり着く。まだ昼過ぎで時間が早いが、ちょうどバスが来たので帰途につくことにした。


昨年から何度か通っている里山ではあるが、尾根沿いの道で本線を歩き通したのは今回が初めてとなった。本線の終点はもっと離れた場所に出るのかと思っていたが、分岐でも本線でも出口はたいしてかわらないことがわかった。分岐の方はミドリシジミ以外はめぼしい場所がないので、今年は今日みた棚田を調べてみるのがいいかもしれない。

翌朝、起床時のこと・・・

「あれ、こんなところ(左腕)にホクロあったっけ?」

耕作放棄地を歩く際には、ご用心を。

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