2009.Jun.20
今日は1年で2番目に昼が長い日。このところ週末になるとトゲアリの巣を巡回するため里山に通っているが、そろそろ黄金の飛行物体がホバリングしても良い時期だろう。毎回観察しているクヌギの樹液も通うたびににぎやかになっているので、ネブトクワガタ、ヒラタクワガタなど夏の虫が出てくるはず。先週、開花直前だったクリの花ももう満開だろう。相変わらずの日常の悲しみを忘れて、今日も里山に出かけよう。
いつものように電車とバスを乗り継いで、里山の入り口に立つ。 いつも会うおじさんの家の前を通ると、ちょうど農作業に出かけるところだった。
「今日も、あっちで虫採らせてください」
挨拶をして、林の中へ。
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林の中の小道を歩いていくと、メマトイが集まってくる。今日はいつになく個体数が多い。黄金の飛行物体と同じDipteraということで、今日は期待して良いのだろうか。
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いつものクヌギ
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コガタスズメバチ
ここでは初登場となる。ざっと幹を一周見てから、トゲアリの巣を見に行く。
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第1ポイント
いつものように洞からトゲアリの行列が伸びるだけ。
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第2ポイント
ひこばえのアリマキ牧場をせっせと管理するトゲアリの姿があるだけ。
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いつものプチ棚田
ため池の水は底を尽く寸前で、干上がっている水田もある。
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第3ポイント
トゲアリの数がやや少なくなっていた。
この後、何回か時間を変えて見回ってみたが、オウゴンアリノスアブの姿は影も形もなかった。
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トゲアリの巣を見た後は、花掬い。その前に、林縁の下草や木を軽く眺めていく。
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ニセリンゴカミキリ
まだ発生しているようだ。
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ウラキンシジミ
まだ寝ぼけているのか、動きは鈍かった。
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アカシジミ
夏の到来を感じさせるチョウのひとつ。撮影前に驚いて高所に逃げてしまったのでこんな写真に。
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さて、気になる花の様子はというと・・・
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クマノミズキが絶好のポジションで満開となっている。今まで全然気づいてなかった・・・・。
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北向きに枝を伸ばしているので、まだ日がほとんど当たっていない。西日本では日が当たると虫が逃げるようなので、かえって好都合かも。荷物を置いて、長竿を伸ばして、慎重に掬ってみる。
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低くて目立たない部分を掬ってみると、ヒメアシナガコガネが無数に入った。
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続いて、梢に近くて目立つ部分を掬ってみると、ハナムグリ類が無数に入った。ほとんどがコアオハナムグリで、クロハナムグリが数匹。
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その後、適度な時間間隔をあけつつ掬ってみるが、どうも虫の飛来が思わしくない。下から見ていても、ハチや小型甲虫がまばらにしか飛来しない。東日本ではよほどの市街地の公園でもない限りあり得ないことだが、これが西日本では普通なのだと、2年目になってから思う。
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たまに大きな影が飛んでくるのが見えると、正体がわかっていても網を伸ばす。
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シラホシハナムグリ
樹液だけでなく花にも来るようだ。
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アオハナムグリ
奥多摩で見慣れているのでナミハナムグリとはすぐ区別がつく。
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ホタルカミキリ
本日、クマノミズキで入った唯一のカミキリ。悔しいが、これが西日本の厳しさ、自分の腕では及ばぬところなのだろう。
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すぐ近くには、クリの花が満開。こちらは日当たりが良くて、いかにも虫がいなさそう。下から眺めていても、虫が全然飛んでこないのがわかる。根元の伐採木にはミドリカミキリが群がるというのに。
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トゲヒゲトラカミキリ
クリの木で唯一得られたカミキリ。もうこれはダメだと思い、樹液へと移動することにする。
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ヤマカガシの若い個体
移動間際にクリの幹を降りてきた。
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ウツボグサ
ため池の土手で咲いていた。花と茎の特徴からシソ科ということは現地でわかった。きれいだったのでなんとなく撮影。
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ちょっと歩いて、クヌギの木に到着。先週よりもスズメバチの数が増えており、キイロスズメバチも初登場。これでオオ、モン、ヒメ、コガタ、キイロ、チャイロと、本州産Vespa がすべて確認できた。
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荷物を置いて、じっくりと飛来する虫を待つことにしよう。
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サトキマダラヒカゲ
農工大構内よりも個体数が少ないのがちょっと物足りないところ。
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シラホシハナムグリ
いつもは高い位置にいることが多いが、今日は低い位置にも進出してきていた。
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表面を眺めた後は、影になっている部分や洞の中もチェックする。
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洞の中を覗き込むと、緑色のハナムグリがいた。でも、先ほど見たアオハナムグリとは明らかに雰囲気が違う。体の横幅と厚みがあり、丸っこいのだ。カメラを幹に固定し、感度を上げて、シャッターを切る。
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これは、密かに狙っていたあのハナムグリに間違いない。
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キョウトアオハナムグリ♂
関東以西に分布し、近畿地方では多産地も多いという。背面はつや消しだが、小楯板だけキラリと光るのがポイント。
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これはさきほど採集したアオハナムグリ。小楯板もつや消しとなっている。
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さらに洞チェックを続けると、カラフルな模様の甲虫が顔を出した。逃げられないよう、うまく外へ誘導してから指でつまむ。
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キノコゴミムシ
生涯2個体目となる。オオキノコムシ類と似たような模様をしているが、防御物質の匂いはまったく違う。
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洞チェックも終了し、しばらくはゆっくりと樹液の前で虫の飛来を待つ。飽きてきたら、近くの池を見に行ったり、トゲアリの巣を巡回したりして時間を潰し、また樹液に戻ってくる。人がいる間は寄り付かない虫も、こうしていれば見つけられるのだろう。
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ハラブトハナアブの一種
ハチの威を借りてるのに、極端な恥ずかしがり屋。驚かすと目の前でホバリングしてクマバチの羽音で脅してくるが、効果なしとわかるとすぐ逃げる。
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3種類ほど似た種が記載されてるが、実は同一種の色彩変異という説が有力らしい。
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キョウトアオハナムグリの追加を狙ってだいぶ待つが、飛来するのはことごとくシラホシハナムグリ。いい加減飽きてきたので、ミドリシジミでも見てから帰ることにする。
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昨年、ミドリシジミを採集したハンノキ林。もともとは水田だったが耕作放棄され、ハンノキが生えるようになったようだ。昨年よりも地面の乾燥化が進み、下草が増えている。足もとを気にしながら歩いてみたが、結局見つけることはできなかった。やはり夕方に来て♂の縄張り争いを見るのが良いのだろう。
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すぐ近くの池には、昨年は目につかなかった水生植物が生えていた。浮き草のように水面に浮いているのはヒシという植物。<水際に生えている草は初めて見る。一体、何だろうかと眺めていると虫影が見える。この状況は、もしかしてネクイハムシでは? はやる心を抑えながら、土手を駆け降りる。
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たしか、このあたりにいたはず・・・・。
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間違いない、ネクイハムシの仲間だ。
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こちらの存在に気づいたようで、すぐに飛んで逃げた。でも、5m先の着陸地点までしっかりと目で追いかけて、今度は慎重に近づく。
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今度は慎重に、慎重に。
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よく見ると上翅に赤色の模様がある。
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小さいけれど、素晴らしいハムシだ。人生初のこのネクイハムシは、帰宅後にキンイロネクイハムシと判明する。
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第一発見場所をよく探すと、食痕らしきものが残されていた。キンイロネクイが食べるとなると、おそらくミクリ類なのだろう。
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モノサシトンボの交尾
他に岸辺で数個体が飛んでいた。
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タヌキモ
自生しているのを見たのは2回目。昨年はウシガエルしかいないと思っていたが、結構良い池かもしれない。帰りがけに、良いものを見ることができた。
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集落に戻ってくると、イチジクの枝にキボシカミキリ。
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イネは分げつ(茎分かれ)が盛んになっている。夏至(なつにいたる)とは、良くぞ名づけたものだ。
黄金の飛行物体との遭遇は今回も叶わなかったが、密かに狙っていたキョウトアオハナムグリを見つけることができ、キンイロネクイハムシとの予期せぬ遭遇もあった。狙ったものは見つからなくても、こうした出会いがあるからこそ、里山通いはやめられない。
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この後、摩耶山へ転戦。心臓と肺が潰れそうになりながらも登山口から山頂まで歩いて47分。先週は下りで30分かかったので、まあ良いタイムだろう。
セダカコブヤハズカミキリ♀が狙いだったが、影も形もなし。「虫を追わずに、人を追いなさい」そんな意味の声が聞こえたような、聞こえないような。
スミゾメハキリバチ♀(ムナカタハキリバチ)
ベンチで休憩する姿は、ぬいぐるみのようでとても可愛らしかった。
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