夏と秋の境目

2009.Sep.13

9月も中旬に入り、朝晩はずいぶんと涼しくなってきた。夜に窓を開ければ、草むらからは小さな演奏者たちのオーケストラ。物思いにふける季節が確実にすぐそこまで迫る中、同じように悩むのなら、部屋にこもるよりも、自然の中を歩きながら。かねてから狙っているハナムグリの探索を主目的に、季節の移ろいを感じて心のバランスを取るべく、いつもの里山へ。


10時、バス停に降り立つ。2週間前は緑一色だったのが、黄金色と緑のモザイク状になっている。

前回は頭を垂れるだけだった水田も、葉がだいぶ黄色くなってきた。

道を歩いていくと、驚いたコバネイナゴが次々と飛び立つ。この前よりもはるかに個体数が増えている感じだ。


林の入り口の近くにいる犬

寝てることが多いが、この日は起きていた。ちなみにかなりの大型犬で、体積は私よりも大きい。

さて、いつもの樹液ポイントへ。

曲がり角の手前から、風に乗って発酵臭が漂う。まだまだ樹液の酒場は健在なようだ。


スミナガシ

今日は珍しいお客が来ていた。ボロボロの翅が夏の終わりを感じさせる。


オオスズメバチ

激しく動き回って、樹液がもっと出るように樹皮をかじっていた。

昨日の雨の影響もあるのか、虫の数はかなり少ない。スズメバチだけは相変わらずだが、甲虫の姿はなかった。他のハナムグリ類がいなくなったところで、今日狙っているハナムグリが出現すると読んでいるのだが、その姿はない。

アテが外れたので、久々にプチ棚田を見に行ってみる。

すでに黄金色に染まっていた。緑色に見えるのはコナギやヒエなどの草だ。水不足の影響で生育は明らかに悪く、収穫量も少なそうだった。

棚田から戻って、もう一ヶ所の樹液ポイントへ向かうことにするが、その際、いつも通らない脇道を歩いてみることにする。

初めて通る道なのだが、どことなく甲府盆地の雑木林に似た雰囲気を持つ。生えている木もアベマキではなくクヌギが多いが、残念ながら樹液の匂いはほとんど感じられず。写真を撮る間もなく歩き続けてしまった。

アベマキにオオスズメバチが2匹来ていたが、樹液はほとんどでていない。

コナラの樹液も、ヒメスズメバチが占領していた。

このくらいしか見つけられず、雑木林を抜けて平場の水田に出る。

刈り取り機が入るために、入り口を手で刈り取ったところ。昼からいよいよ収穫が始まるのだろうか。

あぜ道では気の早いヒガンバナが咲き始めていた。無数にある蕾も、来週には一斉に開花することだろう。

日差しが照りつける中を移動していると、見慣れたシルエットが飛んできた。河川沿いの石垣の上に着陸したので、よじ登って採集。9月中旬にヤマトタマムシが見られるとは思っていなかった。梅雨明けがはっきりしなかった影響があるのだろうか・・・。

そんなことを考えながら、川を渡ってもうひとつの樹液ポイントへ向かう。

しばらく歩いて、前回スズキナガハナアブを採集した場所に到着。あの時のタラノキの花はもう散っていたが、別の株がちょうど満開になっている。

今回もいた、スズキナガハナアブ。動きが独特なので、ミツバチとはすぐ区別することができる。

ついでにタラノキの葉柄を見ると、センノキカミキリがいた。夏の名残りとして、まだ生き残っているようだ。

前回、カブトムシやノコギリクワガタがいた樹液。遠目にみる限り、目立つ甲虫は見当たらない。


スジクワガタ♀


スジクワガタ♂

近寄ってみても、このくらいしか見当たらない。もう、ほとんど期待しないようにして、すぐ近くの別の樹液へと向かう。


林縁から少し奥にある樹液

ちょっと風通しが悪いので、いつも虫の数は少ない。


キノコゴミムシ

昼間から樹皮の上を徘徊していた。オオスズメバチがうるさいので、早々に退散する。

退散途中、ちょっと怖いものを発見してしまう。


モンスズメバチの巣

段差のところにできていて、土が崩れて外被が一部露出している。巣から2mほどのところをいつも歩いていて、よくぞ刺されなかったものだ。そういえば、夜間採集の時に巣から1mのところに足を踏み込んだような気もする(採集記では面倒だったので省略しているが、バスを待つ間に下見のつもりで訪れていた)。これからの時期は巣が最も敏感になるので、歩く振動が伝わって襲われるかもしれない。もう近寄らないことにしよう。

最後に期待していた樹液ポイント。ここにはスズメバチすらいなかった。

この後、バスの時間が来るまで周囲を適当に散策。


熟したカキの汁を吸うハナムグリ類

左:シロテンハナムグリ、右:シラホシハナムグリ

樹液ではすっかり姿を見ないが、こんなところに来ているとは。


ギンヤンマ

ありふれたトンボでも、じっくり見ると鮮やかで美しい。


オニヤンマ

この澄んだ眼の輝きは、いつ見ても素晴らしい。


アサマイチモンジ

前回採らなかったので、今回はしっかりと網に収める。


キボシカミキリ

西日本型のわりには、ずいぶん遅くまで残っているものだ。

秋の訪れを感じながら、雨が降る前に帰途についた。狙いのハナムグリは見つからなかったけど、季節の移ろいを感じることで気分転換になったから、良しとしよう。

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