春を待つ河川敷

2009.Mar.1

例年よりも早く各地から梅の便りが届いてきて、いよいよ春の足音が聞こえてきた今日この頃。2月に夏日を記録するなど、史上稀に見る暖冬に世間は驚き、啓蟄を前にして活動を始める生き物の情報も飛び交う。フライング気味に活動を再開する生き物が目につく中で、大部分の生き物は、まだ春の訪れを慎重に待っているはず。

神戸に引越しして11ヶ月、関東に戻れる日はまだ先のこと。実家に置いてきた昆虫関係の資料を手元に揃えるために、2ヶ月ぶりに帰宅。時間はあまりないのだが、資料整理だけで帰るのはもったいないので、久しぶりに多摩川河川敷を探索してみることにした。


午前10時、多摩川流域のとある場所に到着。7月になるとヒゲコガネが夕暮れの中で乱舞することで知られているが(このような場所は多摩川中下流域で何ヵ所かあるらしい)、一昨年の猛烈な台風により、地形が大きく変化してしまった場所である。

今回は特に狙いの虫は決めていないが、あえて事前にイメージしたのは、

流木の溜まり場での朽木割り

崖(段差)でのゴミムシ掘り

以前、何回かやったことはあるのだが、時期が限られることもあり経験値は少ない。今回は限られた時間の中で、少し丹念にやってみようと思う。

良さそうな場所を探して歩き回るうちに、まず段差を発見。土質は粘土と砂が混じっており、やや粘り気がある。これまでの経験ではあまりゴミムシが出てこない状況なのだが、採れないことを何度も思い知るのも経験のうちであろう。100円均一のスコップを手にして、少しずつ崩していく。


コガシラアオゴミムシ

過去にも何度か出てきたことがある、おなじみの種類。

しばらく掘ってみたが、追加を1匹得ただけ。ムカデやミミズは多少出てくるくらい。これまでと同じ結果を確認したところで、次のポイントを探しにいく。


ヤナギの木

河川敷を代表する樹木のひとつで、いろいろな虫が集まる。


ゴマダラカミキリ幼虫の脱糞孔

河川敷のヤナギには必ずといっていいほど入っている。他にも、コウモリガの幼虫が穿孔していた。フクズミコスカシバの幼虫を期待していたのだが、見つからなかった。


幹に積もった枯れ草や泥

マイマイカブリが越冬していることが多いそうだが、見つからなかった。ちょっと水辺に近すぎたかもしれない。

さらに上流へ向かって歩いていると、ようやく流木の溜まり場を発見。こんな場所ならば定期的に朽木の追加が見込めるため、冬の材割り採集にはオススメ。遠くにかすむ奥多摩の山々をイメージしながら、探索を開始する。

まずは、このヤナギの朽木から。表面は乾燥しているようなので、側面の湿った場所から順番にナタで崩していくことにする。


アカシマサシガメ

かなり多くの個体が越冬していた。ここがメインの越冬場所だったのか。


キイロテントウゴミムシダマシ

局所的に集団で越冬していた。ヘクソカズラの種を小さくしたように見える。


ホオズキカメムシ

浅い部分に少数個体がみられた。


ハサミムシ

個体数は少ないが、意外と奥まで入り込んでいた。


ヨツコブゴミムシダマシ♀

乾燥した部分と湿った部分の境目に多くみられた。


アオゴミムシ

大きな集団でもせいぜい5,6匹。環境の変化なのだろうか、百匹単位の集団越冬は昔話となりつつある。


ヒメマイマイカブリ

多摩川では朽木で得た経験があまりない。

最初からかなり当たり材を引き当てたようだ。この調子で次もいってみよう。

2番目の材はこれ。なんの変哲もない硬そうな朽木に見える。

しかし、起こしてみるとカブトムシの幼虫が多数出現。堆肥を作らなくなった現在、朽木が安定供給される絶好の環境をよくみつけたものだ。腹を見て雌雄鑑別して、2ペアを採集して木を元に戻しておいた。

その後、いくつかの朽木を崩して、マイマイカブリの追加を得たりする。めぼしい朽木を調べ終わったところで、上流部分に見えていた新ポイントへ移動する。


泥の間に多数の礫が入り込んでいて、上面は草地になっている。今までの経験では、こういう場所で意外と多くのゴミムシを掘り出した。

百円均一のスコップで、少しずつ崩していく。礫が多すぎて一度に多くは崩せないのだが、そのために虫の見落としが少なくなり効率的に採集できる。


ヒメキベリアオゴミムシ

草地でおなじみの種類。


オオハサミムシ♂

大きな尾鋏が実にカッコイイ。


ハチの一種

名前は不明。5個体ほど採集。

土の中に部屋を作って、その中で越冬していた。


カワチマルクビゴミムシ

>府中市内では多産地があるが、ここでは夏場はどこにいるのだろう。


アオヘリホソゴミムシ

かなりカラフルで好きな種類


ウリハムシ

こんなところでも越冬するのか。


アカシマサシガメ

1個体のみ。朽木に到達できなかったのか。


ゲジ

崖の下の方の石の隙間に無数にいた。

時間の許す限り粘ったが、そろそろ帰らなければならない。夏の様子をイメージしながら、来た道を引き返す。

この湿地、何かがいそうな雰囲気があったのだが、それを確かめるのは当分先のことになりそうだ。


オオイヌノフグリ

有名な帰化植物、今まさに花盛り。

カミキリムシを追うために樹木はかなり覚えたのだが、草本はさっぱり。これもきれいだったので撮影したが、悲しいことに名前がわからない。

堤防では、春を待ちきれないツクシがはやくも顔を出していた。シーズン開幕も、もうすぐそこまで迫っている。

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