2009.Sep.19-23
3日目 9月21日
7時40分、起床。天気予報の通り下り坂で、今日は青空が見えない。
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初日に仕掛けたトラップを見て回るが、ゴミムシすらかかっていない。トラップ技術は短期決戦となる遠征で特に重要なのだが、未だに成功した記憶がない。まあ、あと2晩あるし、個体数を稼ぎたいわけではないので気楽に行こう。
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今日は島の北部を攻める予定。トラップ採集をしなくても良くなったので、その分を有効に使うとしよう。
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車を軽快に走らせるが、道の曲折が想像以上でなかなか北上できない。隣に大事な人が乗る時の練習と思って丁寧な運転を心掛け、それに疲れ果てた頃、目的地に到着。
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事前に教わっていた、枯れ沢。
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トラップの残骸があるので、間違いないようだ。
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今回はトラップを仕掛けるつもりはないので、大きめの石を選んで起こしながら、上流へと向かう。
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しかし、事前情報に添えられた干ばつの影響が深刻なのか、はたまた自分の腕が悪いのか、目的の虫は姿を見せない。
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サンショウウオの一種
おそらくツシマサンショウウオなのだろうが、画像が悪くて断定できず。
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しばらくしてゴミムシが1匹出てきたが、目的の種ではなさそう。
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そして、ここに来てようやく気がついた。ポケットに入れた毒ビンがないことに。
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水流が出てきて環境も変わってしまったので、とりあえず引き返して毒ビンを探す。
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探しながらも、採集は継続。
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ナミハンミョウ
青みが強いのは、対馬産だからなのか。
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スズキナガハナアブ♀
いつか採集できればいいなと思っていた、大型ハナアブ。
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結局、毒ビンは見つからず。考えられるとしたら、早朝のトラップ点検で落としたか。あれがないと、採集意欲がグンと落ちてしまう。往復するとなると時間が非常にもったいないので、とりあえずこの島に来た目的のひとつを達成しに行くことにしよう。
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アヤムネスジタマムシ
駐車場に落ちてた個体を拾って、さらに北上する。
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しばらく車を走らせると、事前にイメージしていた光景を見つけ、車を停める。
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対馬といえば、シイタケ栽培が有名。品質は国内でもトップクラスに入るというが、その脅威となっているカミキリムシがいるのだ。
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近寄ってほだ木の根元を見ると、幼虫が排出した木屑が堆積している。これは、生息は間違いなさそうだ。
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そして、顔を上げると、図鑑でみた特徴的な姿が眼に飛び込んできた。
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ハラアカコブカミキリ
これも中国や朝鮮半島にも分布している、大陸由来の種類。日本での自然分布は対馬だけだが、ほだ木の移動により九州や本州にも定着している。
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背中には大小のコブが配置されており、上翅基部付近にはフサフサの黒毛の束がある。
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腹面は赤い模様があり、現在の和名の由来となっている。
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その個体数は非常に多く、島内の至るところで見られるという。毒ビンがないので、持っている容器に確保できる数だけ持ち帰ることに。
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この姿形からして主に夜行性だと思うが、食事中の個体もいる。
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かつてはベニフカミキリ(紅斑天牛)という和名も使われていたが、このように真っ黒な個体もいるからか、現在ではあまり使われない。
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新鮮な羽化脱出孔
この時期に新成虫が羽化脱出してくるため、捕獲した個体の約半数は体がまだ硬化していなかった。ある程度の個体数を得たところで、車をさらに北へと走らせる。
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島のほぼ北端に到達。
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目的地は、ここ。わざわざ来たのは、あの可愛らしい姿を確実に見たいから。
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係員に同行されながら、飼育室に入る。
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ツシマヤマネコ
ゆったりと昼寝中だった。一番可愛い姿を見られて、満足。
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昨日登った山にも昔は生息していたのだろうが、今はみられないという。交通事故の数も減っているのは、喜ばしいというより、実は深刻な状態を意味する。
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出発前に、展望台へ向かう。夜に来れば対岸の明かりが確認できるという。写真には写し取ることができなかったが、かすんだ水平線の向こうには、大陸の影が確かに見えたのだった。
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来た道を一気に引き返し、毒ビンを探しに最初の場所へ戻る。
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無事に、発見。トラップのそばでしゃがみこんだ時に転がり落ちたようだ。これで、安心して採集を続けられる。
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ノコギリクワガタ♂
再度トラップを見て回ると、漆黒の個体がいた。赤褐色の個体が多いので、実にかっこよく見える。
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この後、H氏に教わった往年の樹液ポイントへ向うも、すでに時期遅し、泉は枯れ果てる寸前であった。仕方ないのでコップを埋めて、引き返す。
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日没まで中途半端に時間があるので、側溝めぐりをすることに。狙いはもちろん、ツシマカブリモドキやツシマオサムシ。
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しかし、狙いとは裏腹に、危険な虫を発見。
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ヒメスズメバチ対馬亜種
どこが違うかというと、腹端2節に黄色紋があり「尻黒でない」ところ。他地域の個体では腹端2節はほぼ真っ黒。これも密かに採りたかった特産の虫のひとつ。
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オオキベリアオゴミムシ
初採集となる、大型美麗アオゴミムシ。幼虫の餌はカエルという、特異な生態を持っている種類。
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ツシマヒラタクワガタ♂
残念ながら干からびた状態での発見だが、初めてオスを見つけられて嬉しい。
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ハナムグリの一種(幼虫)
なぜこんなところにいるのか理解できなかったが、とりあえず採集。ハナムグリにも対馬特産種がいたはずなので、それを期待。(後日、無事に羽化したがシロテンハナムグリだった・・・)
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こんな風に、側溝めぐりはいろいろと採集できて楽しいのだが、ひとつだけ注意しなければならないものがある。
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ツシママムシ
九州にいるニホンマムシとは別種とされている。撮影後、木の棒を近付けると飛びついてきた。小さい虫を見つけ出すべく眼を凝らしていると、大きな脊椎動物に気づかないことはよくあるのでくれぐれもご注意を。
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そろそろ日没が近づいてきたので、この前のアキマドボタルの場所へ向かう。
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安全な場所に車を停め、周囲の状況を観察しながら闇に包まれるのを待つ。
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19時、あたりは急速に闇に包まれていく。
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どこからともなくオスが現れ、1匹、また1匹と飛び立っていく。
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H氏いわく、H氏の母君はアキマドボタルのメスを見つけるのがうまいらしい。
「ふと、きらっと光るものが見える時がある」
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メスは翅が退化しているため、飛んで逃げることができない。発光することは外敵に見つかるリスクが非常に高いため、ごく限られた角度からしか光が漏れない位置を選んで潜んでいるのではないか。だから、オスたちは高速で休みなく旋回し続けているのかもしれない。弱々しい光がその視界に映る空間を、見つけ出すために。
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そんなことを考えながら、ひとつの草むらを様々な角度で眺めてみる。幼虫の小さい光は前回で見分けられるようになったので無視して、それとは違う光を、アキマドボタルのオスの気持ちになって探す。
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どのくらいの時間が経っただろうか。とある茂みに顔を向けること3回目、今までにない光が、ふっと周辺視野に捉えられた。首を固定し、光の位置を確認してから、枯草をそっとかき分ける。
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アキマドボタル♀
探し求めていた姿が、そこにあった。前胸から上は成虫だが、翅は小さく退化し、露出した腹部は幼虫そのもの。標本写真にはない、その透明感のあるピンク色が美しい。わざわざ対馬までやってきた甲斐があった。
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1匹見つけることができれば、それでもう満足。3日目で疲労も溜まってきているので、明日に備えてもう寝ることにしよう。
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不幸にも、ジョロウグモに捕えられたオス。飛び回るのも、命懸けだ・・・。
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