初めての北の大地

2010.Jul. 26-31

狭いながらも南北に長い、日本列島。地域ごとに異なる環境があり、その中で多様な昆虫が生きている。虫屋と呼ばれる人々は全国各地を飛び回りながら、「南の島」では、亜熱帯気候のもとで東南アジアとのつながりを、「北の大地」では、亜寒帯気候のもとで大陸とのつながりを、”虫の眼”を通じて感じるのである。

これまで南の島には昆虫採集で何度か訪れ、国境を越えて台湾にも遠征したが、福島-新潟のラインより北には一度も進出したことはなかった。昨年あたりから漠然と考えていた「北の大地へ」を、社会人3年目の夏休みを利用して実現することにした。

北海道では採集ポイントの詳細情報が極めて重要になるらしいのだが、そこまでして何が何でも虫を手に入れたいとは思わない。今年は特に。採集エリアの選定のための大まかな情報だけ集めて、出発。「北の大地」の環境を自分なりの感覚でしっかりと捉えて、その中でひっそりと生きている虫に出会うのだ。


1日目 26日(月)

朝9時20分、関西空港へ。久々に復活した「誕生日割引」での飛行となる。

昼前に新千歳空港に到着。街道沿いでは、街路樹のナナカマドが目につく。この前の奥多摩で亜高山帯で花掬いしていたことを思うと、自分が北国へ来たのだということを実感する。

レンタカー屋で手続きを終えて、車で札幌へ向かって北上。これから採集エリアに入ってもできることは限られるので、とりあえずカミキリ屋なら誰でも知っている札幌市内のあの山へ。

なんとか車を停めて、登山口へ。大都会のすぐ横とは思えないような、うっそうとした林が広がっている。

登山道はよく整備されていて、サンダルでも歩けるくらい。画像ではわかりにくいが、巨木が意外と多いことに驚きながら歩いていると、周辺視野が動く影を捉える。

道端の伐採木で、黒い影を取り押さえた。


ノコギリカミキリ♂

北海道での記念すべき第1号となった。わりと良く見るゴキブリ似の種類だが、最初は嬉しいものだ。

道端には立ち枯れも残されている。この山の名物のカミキリムシがいないかと眺めてみる。


ウスバカミキリ

ちょっと影になった部分を歩いていた。これも本州でごく普通に見るが、北海道第2号というと立派に見えてくる。

さらに、地面にも虫の影が・・・。


ヒラタシデムシ

北海道特産種の第1号となった。最初は慎重に撮影したりしたが、登山客に踏みつぶされるほど無数に生息していることが判明するのに時間はかからなかった。

森の中は湿度が高くて汗が流れ落ちていくが、尾根筋に出ると風通しも良く、爽やか。所々に倒木もあり、何かいないかと眺めてみる。


ヨツスジハナカミキリ♀

本州のと若干雰囲気が違うようにも思える。ちょうど産卵中だったが、この後驚いて飛び去ってしまった。

やがて、山頂が見えてきた。


山頂から見る札幌市街

整然とした道路に沿って建物が配置されている。

気温は、24℃くらい。大阪とは10℃近くも差がある。

月曜の昼下がりだというのに数名の虫屋さんが張り込んでいた。さすが、超有名ポイント。

チャンバラは性に合わないので、ちょっと離れて探索。


クロオオハナカミキリ

山地のブナ帯で見るイメージだが、市街地の脇で見られるとは。


フタガタハラブトハナアブ♂

これも山地で見るイメージ。標高を500~1000mほど差し引いて考えるといいのかもしれない。

しばらくして戻ってくると、どうやらギガンテアが1匹飛来したらしく、生まれて初めてチャンバラというものを目撃した。これは、うむむ・・・。

その後、遠目からぼんやりと飛来木を眺めていると、キラッと光る影があったので、長竿を伸ばす。


ハンノアオカミキリ

日本の虫ではないようなきらめきだが、山地でごく普通に見られる。

その後、周辺の立ち枯れなどを物色。


ルリボシカミキリ

目の覚めるような青は、薄暗いところで見ると一層際立つ。


登山道脇の巨大な倒木

オダイの御神木だったそうだが、今はだいぶ衰えてしまったという。


センチコガネ

倒木の上でにおいを探っているところ。北海道産は飛翔能力がないという噂。いかにも飛びそうで、翅を開くことはなかった。

16時半過ぎ、もうここにいても仕方ないと思い、下山。一応、倒木や立ち枯れをチェックしながら進んでいく。


コバネカミキリ

実は、野外で見つけたのは初めて。夕暮れが近くなって、活動を始めたのだろう。


ニトベベッコウハナアブ

こちらは休息に入ったところだろうか。同じ色彩パターンを持つチャイロスズメバチは見かけなかった。

チャンバラも時には必要だけれど、この精神を忘れないでいきたいなあ・・・。

日没後、灯火採集の下見のために車を走らせる。


某峠の自動販売機


ヒゲナガカミキリ♂

今回、採集指令が出ているカミキリである。残念ながら、使い物にならない状態であった・・・。

追加の飛来を待つにしても、気温があまりにも低すぎる。


シロジマシャチホコ

鱗翅目ですら、非常に少ない。

とりあえず、今日はこのあたりで寝ることにしよう。

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