2010.Sep.25
日本最大のハムシといえば、つい最近まではキベリハムシであった。百年余り前に定着し、兵庫県内からほとんど出ることなくつつましく生活していた。
ところが昨年、それよりもさらに大きなハムシが日本に存在することが明らかになった。クズというありふれた植物をホストとし、東南アジア原産にもかかわらず日本での越冬に成功。平野部でものすごい勢いで分布を拡大しているという。実際にどんな様子なのか確かめてみたくなり、昆研OB2名を誘って伊勢国へ向かった。
和泉国から始発電車で眠りながら3時間、初めて伊勢国に足を踏み入れる。河内国のペプチドグリカンAは寝坊のため、先に採集場所へ向かう。
8時半、待ち合わせ場所である某橋に到着。鷹の眼で事前に見ておいた通り、クズが繁茂している。
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まもなく、尾張国からNT氏がバイクでさっそうと到着。自宅から1時間半ほどしかかからなかったという。
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とりあえず、河川敷に降りて軽く探索。もう成虫は発生末期と読んでいるので、幼虫採集がメイン。事前情報によれば、太めの蔓に大きな虫エイを形成するので一目瞭然のはず。
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だが、この場所のクズは細く、地を這うように伸びているため非常に探しにくい。20分ほど探しても手掛かりすら得られない。
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「ダメそうだな」
二人で話していたところで、電話が鳴る。橋のたもとには、こちらへ向かって歩いてくるペプチドグリカンAの姿があった。
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時間はちょうど9時。事前に武蔵国より得ていたピンポイント情報への移動も考えたが、橋の下流側を見てからでも遅くないということで、近況報告などをしながら歩いていく。>NT氏はこの夏に成虫を採集したそうで、その時の様子なども教えてもらう。
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かすかに見えていたクズ群落へ到着。ここは低木にからみついていて、蔓がとても見やすい。
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さて、虫エイはあるかどうか探そうとしたところで、NT氏が早くも何かを見つけたらしい。
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見たことのない、大きな幼虫。クズの虫エイを手で割ったら出てきたという。状況から見て、アイツに間違いないだろう。
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撮影後、周囲を探すとすぐに虫エイが見つかる。
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短い繊維状の木屑が噴出している、大きな虫エイ。
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割ってみると、同じ幼虫が姿を現した。これで間違いないだろう。
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一度実物を見てしまえば、あとは次々と見つかる。
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「これは、日本にいてはいけない大きさだろう」 by ペプチドグリカンA氏
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「ほんと、あちこちにありますね」 by NT
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虫エイの採集には剪定鋏が便利。ノコギリは使い勝手がイマイチ。
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ちなみに、知らないと間違えやすいのがこんな虫エイ。繊維状の木屑はなく、糞が糸で綴られてドーム状に膨らんでいるので区別は簡単。
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その主は、コウモリガ類の幼虫。様々な植物の茎や枝の内部に穿孔する。
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例のハムシはクズが絡まった植物にも穿孔するというが、その様子もしっかりと確認できた。樹種はハゼノキ。
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太めのクズさえあれば、群落でなくても良いらしい。例えば、電信柱に絡みついたこんな株。
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根元をかきわけると、多数の虫エイがあった。
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道路脇の一角ですら、繁殖場所としては十分らしい。
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ハゼノキに巻きついたクズに、大きな虫エイ。
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虫エイ内部が過密になって、新天地を求めて幹へ穿孔するのだろう。クズが絡みついてない木には穿孔は認められなかった。
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この虫エイでは、すでに繭が形成されていた。
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中身はまだ幼虫だった。この後、蛹化・羽化して、そのまま冬を越すのだろうか。
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それにしても、あまりにも数が多すぎて採集意欲を喪失。外来種の圧倒的な繁殖力の前に、なすすべもない段階まで来てしまったか・・・。
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ヤマトアシナガバチ♂
顔つきが働き蜂とは違うことを確認して、手づかみ採集。この河川敷を後にする。
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時間はまだ12時ということで、NT氏の帰り道にちょっとだけ同行。
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某川の河口付近。ここにも某甲虫の日本最大種がいるらしい。
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夏が戻ってきたような日差しの中、流木やゴミをひっくり返すが、その姿は見られない。
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コガネムシの一種
ペプチドグリカンA氏と私が持ち帰って飼育することにした。
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エリザハンミョウ
手づかみで採集。なかなか良い模様をしている。初めて見る姿にNT氏が妙に感激していた。
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結局、某甲虫にはお目にかかれず、無駄に日焼けをしただけで帰途についた。ペプチドグリカンA氏、NT氏、お疲れさまでした。