2010.Nov.26
紅葉の盛りもとうに過ぎ、奥多摩にも冬の景色が広がり始める頃。街中にいると妙にもの寂しい気分になるのも、この時期特有のものだ。もう、今は、無理して追いかける虫が思い浮かばない。これまで訪れたことがない谷筋を、独り静かに歩いてみることにしよう。
夜勤明けで荷物を持って、上京。今回は実家に泊まって、始発電車で奥多摩を目指す。
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7時38分、奥多摩駅に降り立つ。散りばめられた雲も、時期に消えてなくなるだろう。
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いつもの店で食糧を調達。第2便のバスが出る頃から開店しているので、非常にありがたい。
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バス発車まで時間があるので、ちょっと蛾像収集へ。トンネルの脇には、色鮮やかなカエデが残る。
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トビモンアツバ
意外と鱗翅目の数は少なく、初見はこれだけ。
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第3便のバスで、出発。
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平日の第3便は集落を通り過ぎて、いつもの谷まで連れて行ってくれる。カエデ類がわずかに残る以外は、すっかり冬の景色だ。
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気温は7.5℃ (8:47)。冷え込みはそれほど厳しくはない。
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さて、まずは林道を目指して、虫に目を留めつつ舗装道路を歩く。
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ヤマノモンキリガ
近似種があと2種いるが、おそらく本種。初見のキリガだ。
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キボシカミキリ
まだ懸命に生きているとは、驚きだ。ちなみに、奥多摩では意外と珍種。
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オオスズメバチ♂
夜の寒さを路上で耐えたらしいが、すでに瀕死状態。今回は野宿をしなくて良かったと思う・・・。
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夏になると観光客でにぎわう河原も、今は誰もいない。イロハカエデの大木が、実に色鮮やかだ。
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林道に入ると、水の流れる音だけが谷に響く。誰もいない、静かな世界。
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しばらく歩いて、未踏の谷の入り口に到着。学生時代にはなかった階段を上って、散策開始。
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水源があるので、最初のうちは簡素な柵が設置されている。
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少し進むと、植林に突入。結構、長い・・・。
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ようやく抜けたかと思うと、
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すぐにまた植林へ逆戻り。
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そんなことをしばらく繰り返しながら、進んで行く。
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やがて、植林が完全に姿を消し、沢筋に近付いたところで雰囲気が一変する。
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小さな滝。落差は10mもないくらいだが、普段尾根筋ばかり歩いていると、これだけでも感激。
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滝の上に架かる橋を越えると、そこは別世界。
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湿度が保たれた、良好な環境のサワグルミ林。
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少し進むと、また滝が出現。
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こちらも落差10m未満の小規模な滝。夏場に来たら、さぞ涼しくて落ち着くことだろう。
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この先に、この谷の名物ともいえる大きな滝があるらしいが、左足親指の爪が半分剥がれている状態なので無理は禁物。このあたりで、少しだけ虫を探すことにしよう。
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道端に落ちていた、良い感じの朽木
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産卵マークもバッチリ
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ルリクワガタは、もっとも見つけやすい。
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ハナカミキリ亜科の一種(幼虫)
何に化けるか、お楽しみ。
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続いて、サワグルミの枯枝
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樹皮下には繊維状の木屑があり、材部への進入孔も見える。
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フトカミキリ亜科の一種(幼虫)たぶん、キモンカミキリに化けると思う。
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小屋の跡地に生える、緑色のツル植物
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アマチャヅルという、里山でおなじみの植物。モモブトスカシバのホストとして知られている。
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以前の奥多摩での経験をもとに根元を探すと、虫エイの痕跡を発見。残念ながら幼虫は見つからなかったが、生息は確実のようだ。またいずれ、機会があれば追加記録を狙いたいところ。
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続いて、サワグルミの根元で朽ちゆく材。遠目からでも、絶妙の物件。
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ルリクワガタ♂
きっと、多数の個体が潜んでいるに違いない。
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コメツキムシ科の幼虫
だが、残念ながら天敵にほとんど食われた後だった・・・。
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しばらく周辺を散策していて実感したのは、ルリクワガタ類に適した朽木が豊富だということ。
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部分枯れ
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落ち枝
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細い立ち枯れ
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奥多摩にいる3種が、すべて揃いそうな感じだ。だが、今はまだ無理することはないし、無理できる体調でもない。環境を下見できただけで、十分だ。
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日が傾き、急激に冷え込み始めた山道を引き返す。
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行きと同じ河原で、対岸に素晴らしい色調のカエデがあることに気づく。
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根元に歩み寄り、色とりどりの葉を見上げる。写真にはうまく写せなかったが、深まる秋を実感できる良い眺めだった。
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バスの発車まで時間があったので、集落内を少し探索。廃校になった小学校の校庭では、カエデが真っ赤に染まっていた。
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ヒメアトスカシバの虫エイ
ここ数年、集落内のヘクソカズラを重点的に探しているものの、いまだに中身が入った虫エイにはお目にかかれずにいる。
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エビヅルにできた虫エイ
バス停のすぐそばで発見。たぶん、ブドウスカシバが出てくることだろう。
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それでは、また来年。