2010.Jul. 8
家のベランダや通勤電車の中からはいろいろな山が見えるのだが、近場でブナ林が残っているのは、金剛山、大和葛城山、和泉葛城山くらい。いずれも生育範囲が限定されているのは非常に残念なのだが、古くから続いた伐採を免れて、人為がない時の環境を伝えてくれる、貴重な存在である。夜勤明け翌日の今日は、近場のブナ林を制覇するべく大和葛城山へ。狙いの虫は特にないが、歩けば何かしら出会えるだろう。
7時に家を出て、電車に乗り込む。目的地に近付くにつれて人が減り、車内は涼しくなっていく。
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あれが、今日の目的地。尾根筋では木々が1本ずつ識別できるが、なんと植林が多いことか。
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終点で降りて、バスに乗り換えて登山口へ。
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山登りが目的ではないので、ここは迷わず切符を買う。
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始発の便へ。山頂は、すぐそこに見える。
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1人貸切の車内から、大和盆地を見下ろしながら登っていく。
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山上駅に降り立つ。舗装道路と外灯は、高尾山を連想させる。
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駅のすぐ横には、立派なブナの大木。生い茂った青葉が、夏の日差しをやわらかくしている。
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ブナが伐採を免れたのは、この神社があったから。
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裏手の斜面には、実に良い雰囲気のブナ林が広がっていた。
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ついこの間も和歌山で見てきたばかりだが、何度見ても素晴らしい。
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ブナを見終わった後、道路を歩いていると側溝が目にとまった。甲虫屋の習性として、何か落ちていないか探さずにはいられない。
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オサムシを発見(♀だった)。かなり大きいので「ドウキョウ!」とも思ったのだが、確信は持てず。銅色の個体も出現するらしいが、イワワキの大型個体という可能性も・・・。
帰宅後の同定結果
ドウキョウオサムシ Carabus uenoi
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さらに、二匹目のドジョウを狙って側溝をたどっていく。
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センチコガネ
結局、甲虫はこれしか見つからず。林が途切れたので、ひとまず引き返す。
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舗装道路から離れて、散策路に入る。ブナ林とは違って細い木が多いので、伐採された過去を持つのだろう。
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散策路は良く整備されていて、登山靴でなくても快適に歩けるだろう。
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ただ、興ざめな部分が多いことも事実。
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その場から逃げることができない可憐な花を守ることは、昆虫と違って「殺生」という感情的な非難がしにくい上に、”愛好家”が比べ物にならないほど多いだけ、難しさがある。
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そんなことを考えながら、柵の脇にある古い伐採木を軽く眺めつつ歩いていく。
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ここで、足が止まった。
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見えるだろうか。
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イワワキセダカコブヤハズカミキリ♂
画像ではわかりにくいが、かなり小さな個体。花を見に来た人には、まず見向きもされない存在だけれど、この山の生き証人として、懸命に生きる姿がそこにはある。
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1匹見つけると追加を狙って意識してしまうが、結局見つけることができないまま、散策路は終わってしまう。
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今度は、山頂目指して舗装道路を進む。夏の日差しが厳しい・・・。
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ヤマトオサムシ
少し先の道路を横断していたのが目に留まった。岩湧山で採集済みなので、すぐ見分けがついた。
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やがて林が途切れ、道は草原の中を進む。
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ここが山頂。
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振り返ると、目と鼻の先に金剛山が見える。
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近くの建物で温度計を発見。気温は23℃ (12:08)。ここで昼食を食べ、草原の虫を少しだけ探索。
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ナキイナゴ
あちこちで鳴いているが、他の登山者は声の主を知っているのだろうか。
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ウラギンヒョウモンとミドリヒョウモン
ヒョウモンチョウ類の個体数は多く、アザミやオカトラノオで吸蜜していた。
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マメコガネ
個体数は非常に多く、いたるところで見られる。
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ヘリグロリンゴカミキリ
道沿いの低い位置をフワフワと飛んでいた。
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ラミーカミキリ
発生木は植栽のムクゲだろうが、こんな高地にいるとは驚き。
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ホタルの一種
ムネクリイロボタルに似ているが、たぶん別の種類。
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探索を続けるうち、ブユの数が多くなってきた。雲が広がってきたので活動が活発になったのだろう。なんとなく疲れてきていたので、このあたりで下山することにする。
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新しく整備されたという登山道へ。
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沢筋から尾根に登り、植林と二次林の境目を下っていく。
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途中で少しだけ虫を探したりもしたのだが、特にめぼしいものはなかった。
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登山口に近づくにつれて、大和盆地が眼下にくっきりと見えてくる。碁盤目状の区画に、教科書だけで習ってきた歴史の舞台を実感する。
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振り返ると、こちらにも整然とした山肌。
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でも、平地では通用しても、山地では無理なのだ。
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14時、下山完了。
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よりによって一番暑い時間帯に降りてきてしまった・・・。ラミーカミキリとともに、日陰で休憩してバスを待つ。
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40分ほど待って、バスが到着。山上に広がる雲を眺めながら、帰途についた。