早春の和泉葛城山

2011.Apr.15

春の到来が遅かった分、ひとたび始まれば駆け足で季節は進む。平地では桜が早くも満開を通り越して散り始め、若葉が展開してきた。もうすぐ山でも芽吹きを迎え、新緑が美しい時期を迎える。閉塞的な浮世を忘れて自然の中に溶け込むためには、冬の間に衰えた足腰と心肺を鍛え直しておかねばならない。睡眠不足というハンディキャップを抱えながらも、朝から弁当を作り、頂上から職場が望める泉南の山へ登ることにした。


10時過ぎ、バスに揺られて登山口に到着。穏やかに晴れた空の下、さっそく登山開始。

少し進むと、道端にはサクラの花びらが積もる。ここでも若葉の季節に向けて準備が進んでいるようだ。


キシタトゲシリアゲ♂

春に見る印象が強い、シリアゲムシ類。獲物を求めて飛び回っていた。

登山道にはヤマザクラが所々に生えている。この時期、地面に散りばめられた花びらがその存在を知るきっかけになる。

植林の中では、シダ類が新芽を伸ばしていく。樹冠よりも地面の方が、春の訪れは早いらしい。

10時50分、休憩ポイントに到着。予報では天気は下り坂だが、今のところはいい陽気。汗が噴出するので、水分補給は欠かせない。ここから先は、ゆるやかな上り坂になる。

しばらく進むと、林道に出る。ここからは舗装道路をしばし歩く。


ショウジョウバカマ

道端にひっそりと咲いていた。図鑑で見るよりも、実物は可憐で美しい。

11時20分、再び登山道に戻る。ここからは山頂までずっと土の道が続く。


クスノキ科の一種

林床に生える低木は、早くも芽吹き始めている。クロモジか、ヤマコウバシか、・・・・。

延々と続く植林も、山頂手前でようやく終了。

そして、ブナ林に突入。

気温は、15℃ (11:50)。山登り中なので、ちょうど良いくらい。

ブナはどれも芽吹き前。伐採を免れて生き延び、今年も空高く枝葉を伸ばすことだろう。

山頂に近付くにつれて、だんだんと空が明るくなっていく。まるで、守り神がついているように。

山頂を目前にして、階段が立ちはだかる。あと少しで訪れる達成感のため、ゆっくりと登っていく。

12時、山頂に到着。意外と早くここまで登ることができて良かった。

展望台に移動して、昼食。にわかに風が強くなり、少々震えながら急いで箸を進める。

展望台から職場方面を眺める。あいにく霞んでいて、肉眼でも飛行機の離発着は見えなかった。強風であまりにも寒いため、早々と撤収することに。

雨が降り出す前に下山するべく、ブナ林を抜けて別コースへ。

林道に出て、花を撮影したりしながら延々と下る。


タムシバ

冬枯れの山の中で輝きを放つ。


キブシ

ちょうど咲き始めで、小型の双翅目が訪れていた。目視でヘリグロチビコブカミキリを探そうとしたが、すぐに断念。

13時過ぎ、舗装道路から分かれて登山道に入る。お地蔵さんに見守られながら、急な階段を延々と下っていく。


ベニボタルの一種

間伐されたヒノキの上に静止していた。薄暗い林内で、その独特の鮮やかさが際立つ。これが、今日唯一採集した昆虫となった。

お地蔵さんコースの終点付近には、いくつか滝が見られる。


錦流の滝

すぐそばまで近寄ることができ、ひんやりとした空気が心地よい。

左から、一の滝、二の滝、三の滝。

林内では、ミツバツツジ類が鮮やかに咲き誇っていた。


一の滝

夏場に訪れれば、とても居心地が良いだろう。

登山はここまで。桜が見頃を迎えている境内を抜けて、バス停へ向かう。

秋には紅葉の名所になるそうで、カエデがたくさん生えている。


カエデ類の花

あいにくの天気で虫はわずかに双翅目が来ているのみ。こんな木を見つけたら、例年は長竿を伸ばして夢中で掬っていることだろう。今年は、また別の機会にしようと思いつつ、帰途についた。


長竿も叩き網も持たずに山登りをするのはあまり例がないが、採集欲がない状態でいるとまた違ったものが見えてくる気もする。睡眠不足の中、ゆっくりと登り降りしたのでかなり疲れたが、続けていけば、すぐに慣れることだろう。

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