小さな盆地と晩秋の景色

2011.Nov.26

今年も残すところあと1ヶ月余りとなった今日この頃。暖かさで遅れていた紅葉の便りが、ようやく里からも届くようになった。例年ならばオサ掘りや材採集など冬の採集に励むところだが、夜勤ありのシフト勤務による不規則生活で歪みが蓄積され、体調不良により採集意欲さえも著しく損なわれるようになり、採集に行けなかったことでさらに体調が悪くなるという悪循環。

あと半月持ちこたえれば約1年半ぶりに日勤へ復帰できるところまできたので、少しでも気分転換になるように最寄りの里山を下見も兼ねて散策することにした。


前日の夜勤のダメージが大きく、昼前にようやく目覚める。なんとか身支度を整え、最寄りのバス停に向かう。

12時半、予め目星をつけておいたバス停で下車。眼下に広がる水田へ向かって歩き始める。

もうすぐ12月だというのに、水田はまだ青々としている。なかなか寒くならないので、刈り株から二番穂が成長しているからだ。電気柵が張り巡らされているところを見ると、シカかイノシシが多いようだ。

四方を山に取り囲まれており、振り返ると和泉山脈の山々がくっきりと見える。

小さな盆地の大部分は農地で、水田の他にハス田もある。

そして、少ないながら畑もある。

しばらく歩くと、盆地から平野部へと続く道が現れたので少しだけ歩いてみる。

木漏れ日が路面に鹿の子模様を作っている。

少し歩くと脇道が現れたのでそちらへ進む。

この林の主な構成樹木はウバメガシ。潜在的な植生は照葉樹林であることがわかる。


クロコノマチョウ

落葉にまぎれて冬を過ごす、南方系のチョウ。

林内に仕掛けられた罠。水田での電気柵はイノシシを対象としたものだったことがわかった。

脇道は崖のそばを通っており、川を見下ろすことができる。河原に降りることができそうなので、先へ進んでみる。

浅くて流れも緩やかで、水遊びには適しているかもしれない。夏場にもう一度来てみることにしよう。

来た道を引き返して盆地まで戻り、目星をつけている場所へ向かっていく。古くから人が住みついていた土地らしく、遺跡もあることが道標からも読み取れる。


作業小屋と柿の木

丸々とした実の鮮やかさが青空によく映える。

盆地の真ん中を流れる川を渡る。

この環境だと、密かに狙っている水生昆虫が生息しているかもしれない。

眼を凝らすと、魚の群れが見えてくる。夏場にたも網を持ってもう一度訪れてみたいところだ。

川を渡り、再び舗装道路を歩いていく。

畔に帯状に生える濃い緑は、すべてヒガンバナの葉。お彼岸の頃に来れば、真っ赤な花が咲き乱れることだろう。

しばらく歩いて、林道の入り口に到着。メダケの生け垣があったのでニホンホホビロコメツキモドキでもいないか探してみたが、まったく痕跡が見つからないので見切りをつけて先へ進むことにする。

路面は砂利で簡易舗装されており、歩きやすい。側溝もあるので春と秋のオサムシ探しには良いかもしれない。


シロスジカミキリ幼虫が穿孔するコナラ

初夏になったら樹液も出て、いろいろな昆虫が集まってくることだろう。

しばらく歩いて、ため池に到着。そろそろくたびれてきたので、このあたりで遅めの昼食にする。

昼食を食べながらも周囲を見渡すと、日向で日光浴をしている昆虫がいくつか見つかる。


マユタテアカネ♂

もうすぐ冬を迎えるが、まだ元気に生き残っていた。


オオアオイトトンボ♀

こちらもまだまだ元気。

昼食後、さらに林道を進もうとも考えたが、次のため池まではかなりの距離がある。体力が万全ではないため、今日はここまでにして帰途につくことにした。

バス停まで戻って時刻表を確認すると、次の発車までだいぶ時間がある。周辺をウロウロするときれいな側溝があったので、覗きながら歩いていく。


ヤガ科の一種の幼虫

蛹化場所を求めて移動しているうちにはまってしまったようだ。

つかまえるとこのように防御姿勢をとった。帰宅後に調べて見ると、シロシタヨトウのようだった。


オオタコゾウムシ

シロツメクサなどを食べる外来のゾウムシ。なかなか立派な体格をしている。


セアカヒラタゴミムシ

畑でおなじみのゴミムシ。斑紋には変異があり、名前のとおり上翅に赤い紋がある個体もいる。

この他は特にめぼしい収穫もなく、バスが来たので帰途につく。来シーズン、夜勤の歪みが残っていなければ再び訪れてみることにしよう。

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