真夏の里山

2011.Jul.25

いつの間にか梅雨が明け、夏本番。平地では早くも虫枯れが始まり、虫屋はブナ帯・亜高山帯へと脚を伸ばすこの時期。

いろいろと忙しくなってきて、気がつけば前回の採集から一ヶ月。奥多摩探索に備えて足腰と勘を養っておくためにも、そろそろどこかへ行きたいところ。足慣らしでいきなり高い山に登ると本番までに回復できないので、無理は禁物。地図を見ながら目星をつけた貝塚市の里山へ、下見を兼ねて行ってみることに。


午前11時、最寄駅に到着。電車を降りて、住宅街から里山の方へ歩いていく。

雑木林にたどりついたが、あいにくの舗装道路。どこかに林内へ続く小道がないか探しながら歩いていく。

林縁を見ながら歩いていくと、先が折れたカクレミノの幼木を発見。

これはタテジマカミキリの可能性あり。慎重に食痕をたどっていく。

しかし、食痕の終点まで行っても幼虫の姿は見えない。おそらく途中で死んでしまったのだろう。また冬に来れば越冬している姿を見つけられるかもしれない。

しばらく舗装道路を歩くと、林の中に続く踏み跡を発見。ゆっくりとササをかき分けて進んでいく。

踏み跡の先にはアベマキがあった。

樹液も出ているようだが、昆虫の酒場になるには量が少なすぎる。スズメバチが来て傷口を広げてくれれば、クワガタも期待できるのだが。一応、何か来ていないか観察してみる。


卵嚢を抱くコアシダカグモ

このような習性があるとは知らなかった。


ニイニイゼミの羽化殻

泥にまみれているのが特徴のひとつ。

特にめぼしいものはいないことを確認して、さらに小道を進んで行く。

小道の突き当りには、ため池があった。水面をヒシが覆っていて、数匹のチョウトンボがヒラヒラと舞う。トンボの中では動きが緩慢な部類に入る本種でも、6.3mの長竿での採集は困難。


ショウジョウトンボ

縄張りを主張する姿を遠くからただ眺めるしかなかった。

来た道を引き返し、さらに進んで別の小道を見つけて進む。薄暗い林で特に見どころもないまま淡々と進んで行く。

林を抜けると水田が広がっていた。農道に沿って歩きながら、樹液でもないかと探してみる。

しばらく歩くと、大きなハンノキを発見。ハンノキカミキリがいないかと懸命にスウィーピングを試みるが、ゴマダラカミキリが飛んで逃げたくらい。

せめて食痕を見つけて生息の証拠をつかみたいと梢を眺めていると、先ほどの池でも見たチョウトンボがヒラヒラと舞っているのが目に止まった。


チョウトンボ

水生植物が豊かな池沼に住む、美麗種。あの池で溢れた個体が飛んできているのだろう。

結局ハンノキカミキリの生息痕跡はつかめず、再び農道を進む。

しばらく歩くと、樹液が出ているクヌギを発見。すぐに眼につくカナブン以外に何かいないか目を凝らしていると、伐採されて部分枯れを起こした枝に、きらりと光る甲虫を発見。


ヤマトタマムシ♀

夏の里山を代表する甲虫のひとつ。太陽光のもとでみるこの輝きは何度見ても飽きることがない。


カナブン

久しぶりに見るととても大きく感じる。このような濃い茶色は意外と見ないので採集しておく。

さらに農道を進むと、地面がむき出しになってかなり乾燥した場所に到着。一歩踏み出すたびに、足元から小さな甲虫が数匹ほど飛び立つ。


コハンミョウ

実は今まであまり縁がなかったハンミョウのひとつ。素手で捕まえるのはコツがいるが、長竿があればとても簡単。


ヌマガエル

そして、コニワハンミョウとともに跳ねまわるのがこのカエル。かなりの個体数が中干しで水量が減った水田に潜んでいた。

さらに農道を進むと、手が届く位置に樹液を発見。

驚かさないようにして、そっと近寄る。


カナブン

普通種ではあるが、こうして見ると実に美しい。


カブトムシ♀

里山を代表する昆虫のひとつ。夜になれば♂の姿も見られることだろう。

だんだん暑さでくたびれてきたので、駅の方角を目指して歩いていく。

最後に見つけたのが、このコナラの木。遠目からでも、何か大きな甲虫がいるのがすぐわかった。

この大きさと体型からみて、コクワガタではない。ミヤマカミキリ幼虫の食痕に逃げ込む前に、素早く取り押さえる。


ヒラタクワガタ♂

夏の里山を代表する昆虫のひとつで、子供たちの人気者。ペアで採れれば飼育してみようとも思ったが、♀には間一髪で逃げ込まれてしまった。子孫繁栄を願って、♂は元に戻しておくことにしよう。

わずか3時間ではあったが、泉州の里山の豊かさを垣間見ることができた。今度来る時は、相方も一緒に連れてくることにしよう。

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