渓流沿いの紅葉狩り

2011.Dec.9

人生に大きな変化があった今年も残すところあと1ヶ月。秋は山から下りてくるというが今年は残暑の影響がなかなか抜けず、紅葉は12月になってようやく平地まで降りてくるという記録的な遅れとなった。材採集シーズンは中盤を迎えているのだが、敢えて狙う虫は特に思いつかない。長引くシフト勤務で蓄積した疲労があるので、無理に冬山に挑むこともないだろう。気力の回復を一番の目的として、相方とともに関西の紅葉名所のひとつ、箕面へ。


電車を乗り継いで、12時半に箕面駅に到着。よく晴れていて絶好の紅葉狩り日和。

真っ先に目に飛び込んできたのはツタの葉。燃えるような赤に染まっている。

カエデは木によってバラツキがあるが、ちょうど良く色づいている株もある。

橋から渓流を覗きこむと、涼しげな水の音が響く。

しばらく歩くとコースが二手に分かれる。約2km先にある滝を目指し、足腰に負担の少ない渓流沿いのコースを進む。

最初はカシ類などの常緑樹が木陰を作る中をゆっくりと歩いていく。

開けたところに出ると、爽やかな青空が広がる。

見上げれば、色鮮やかなカエデ。

足元に眼を移せば、錦の絨毯。雨に濡れて色褪せつつあるのがまた趣を感じさせる。

しばらく歩くと、箕面公園昆虫館にたどり着く。橿原、伊丹と並ぶ関西の三大昆虫館のひとつである。渓流沿いで冷え切った体を温めるため、蝶の温室へ。

相方とともに南国の蝶へレンズを向ける。

オオゴマダラ、リュウキュウアサギマダラ、ツマムラサキマダラなどが優雅に飛び交う中、せわしなく飛び回るツマベニチョウに狙いを定めることにした。

ちょうど食事時間に入った個体を追いかける。

遠くへ行ってしまってもズームで捕捉。室内は光量が足りないので手ぶれを抑えるのに苦労する。

また戻ってきたところで再度挑戦。これが一番良く撮れた一枚。

すっかり温まったところで、再び目的地へ向かって歩き出す。

見事に色づいているカエデの木の下で昼食。奥に進むにつれて気温が低くなっているので、手短に済ませる。

再び歩き始めると、電柱が目にとまった。電灯があるのが見えた瞬間に視野が広がり、表面を一度に見渡す。


クロオビフユナミシャク♂

寒い時期を狙って成虫が現れる冬尺蛾の仲間。♀は翅が退化していて飛ぶことができないのがこの仲間の特徴。この先の電柱にもいろいろ貼りついているだろうが、帰りに見ることにして先を急ぐ。谷が深くなって日差しがほとんど届かず、じっとしているとかなり寒いのだ。

14時半を回る頃、ようやく目的の滝が見えてきた。


箕面滝(箕面大滝)

明治の森箕面国定公園の名所のひとつ。遊歩道の終点にはベンチが設置され、多くの観光客が写真撮影をしていた。

ネコと一緒にベンチに座って、しばらく滝を見物。

滝壺からは微細な水しぶきが絶え間なく舞っている。

カエデはすっかり葉を落とし、冬の姿になっていた。もう2週間ほど早く来ていたら、絶景が広がっていたことだろう。

日が傾いて気温がどんどん下がってきたので、早々と引き返す。もちろん、電柱には細心の注意を払いながら。


カバエダシャク♂

晩秋~初冬に出現するが、♀も翅があって飛べるため冬尺蛾ではない。


ナカオビアキナミシャク

これも晩秋~初冬に出現し、♀も通常の翅を持つ普通のナミシャク。


クロオビフユナミシャク♂

行きに見た個体とは別のもの。3種類のシャクガの中でこれがもっとも多く見られた。

最後に、相方が行きに気になっていたという脇道へのトンネルをくぐる。

トンネルを抜けると、そこには別世界が広がっていた。明治時代には高尾山(東京)・貴船(京都)と並ぶ日本の三大昆虫採集地。今では想像もできないほど各地に昆虫が溢れていて、虫屋がいくら採っても減ることなど考えられなかった、古き良き時代。その頃の面影と、当時活躍した有名無名の昆虫少年の残像を感じながら、冬に向かいつつある箕面の森を後にした。

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