桜咲く能勢妙見山

2011.Apr.20

平地ではすっかり葉桜の季節が訪れている今日この頃。色とりどりの若葉が、平地の雑木林を鮮やかに覆っていく。里を埋め尽くした緑が山奥へと広がっていくこの時期、一足先に駆け上っていく桜色を追いかけるべく、能勢にある桜の名所を訪れることにした。


電車を乗り継いで、12時に登山口へ。昼前に降っていた雨も、今は止んでいる。カメラを準備して、登山を開始。歩き始めてすぐに、斜め前方の畑に動く影を発見する。


キジ

里山を代表する鳥のひとつ。近寄って撮影しようとすると、うまいこと身を隠してしまった。

山裾へ向かって進んで行くと、能勢でおなじみの台場クヌギが姿を現す。この木は昨シーズンに相当量の樹液を供給したらしい。

道標に従い、舗装道路から登山道へ入る。

道はしっかり整備されていて、雨上がりでも登りやすい。

道の両脇には、立派な台場クヌギが点在する。

能勢の人々の暮らしを支えてきた、威厳ある姿。二つとして同じ形がない不思議な姿を眺めながら歩みを進める。樹洞の主の姿はもうほとんどお目にかかれないことを想いながら。

視線を左右に向けると、ヤマザクラがあちこちで満開。あいにくの曇り空で、網膜に映るその美しさが切り取れないのは残念な限り。

わりと急な山道を登っていくと、時おり木々の間から遠くの街並みが見渡せる。

採集道具は一応持ってきてはいるが、取り出さない。まずは山頂に到達することが最優先。でも、立ち枯れの樹皮で気になるところをついついめくってしまう。


イシノミの一種

相方が発見したので記念撮影。まったく動く気配がないので、そのまま元に戻しておいた。

山道が少しずつ緩やかになってくる頃、天気が少しずつ回復。

ヤマザクラの鮮やかさも、少しずつ切り取れるようになってきた。

やがて、道が平坦になる。シカの食害防止の囲いが付けられた幼木が立ち並ぶエリアに到達。

ベンチでちょっとだけ休憩してから、出発。

ここからは緩やかなアップダウンの繰り返し。尾根沿いなので見晴らしが非常に良い。

目的地となる広場にも、桜はきれいに咲き誇っている。

キノコや樹木の写真を撮りながら、歩みを進めていく。


フタホシシロエダシャク

植林の境界部分の幹に止まっていた。気温が低く、まったく逃げる気配がない。

やがて道は急になり、薄暗い植林を通り過ぎる。そこを抜けると、頂上目前の駐車場に出る。

駐車場から少し歩いて、神社の脇で荷物を置く。サクラはそこそこ植えられているが、ほとんどが蕾。

14時、少し遅めの昼食。寒さに震えながら急いで食べて、山頂へ。

ここが最高点(660.1m)

その脇には、伐採を免れたブナがそびえ立つ。

展望ポイントから眺める川西市方面。だんだん薄日が差してきて、里の方から明るくなっていく。

ちなみに気温は5℃ (14:46)。雨上がりということもあり、吐息が白い・・・。ここにいても桜は撮れないので、さっさとリフト乗り場へ向かう。

平日ということで、人はまったく見かけない。ゆっくりと空中散歩を楽しむ。

約8分で、終点に到着。咲き始めの山頂付近と違って、ちょうど見頃を迎えている。

休憩小屋で一服して冷えた体を温めているうちに、太陽が顔を出す。残された短い時間で、今年の桜の撮り納めへ。

展望ポイントを中心に、その日一番の景色を切り取れる場所を探る。

帰りの時間が迫ってくるにつれて、青空が広がっていく。

そして、雲を吹き飛ばす強烈な風も吹き付ける。対岸の山に点在する桜色を横目に、ケーブル乗り場へと向かう。

1925年開業の歴史とともに、一気に下界へ。後ろ向きに座り、遠ざかる桜をカメラに収める。

スタートしてしばらくは、まだ桜色。

中間付近で桜色の車両とすれ違う。

麓につく頃には、すっかり葉桜。これから本格的に芽吹きが始まり、緑が里から駆け上がる。山肌一面が新緑に覆われる頃には、たくさんの生き物で溢れかえることだろう。


今までの採集中心の山登りでは、さほど気に留めていなかったヤマザクラ。ひとたび長竿、叩き網、ナタ、手鍬をおいて歩いてみると、古来より人々を酔わせてきた艶やかさに眼を奪われてしまった。すっきりした青空の下で見られなかったのは残念だが、それはまた来年のお楽しみとしておこう。

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