2011.Jul. 31
7月も下旬になり、奥多摩ではリョウブやノリウツギが咲く頃になった。春の探索から3ヶ月、季節とともに人生の歯車が一気に進んだ。今回の奥多摩探索は、このことを報告することが一番の目的。どんなに天気が悪くても、とにかく登ってこよう。
春と同じく、前日に夜勤明けで自宅に戻り、荷物を背負って電車に乗り込む。6時間半かけて、東京の西の果てを目指す。
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21時半、奥多摩駅に降り立つ。
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いつものように、いつもの場所へ。
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スカシドクガ
純白の翅に黒点が1個見える。
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ノコギリカミキリ♂
ここではたまに見かける。
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カシワマイマイ♂
雌雄で斑紋がやや異なり、メスの方がカラフル。
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カナブン♀
ここで見るのは初めてかもしれない。
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ナカキエダシャク
ピントが合っていても手ぶれしているように見える不思議な斑紋。
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ヒメウスベニトガリバ
今日の新顔の中でもっとも美しい蛾。
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明日は天気が崩れるらしいが、気にせず眠りにつく。
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翌朝6時半、空は雲に覆われている。
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小雨が降る中、始発バスで出発。
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バス停を降りると、対岸の山々は霧に包まれている。昨晩に飛来した蛾が意外と多く残っているので撮影しながら歩いていく。
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バラシロエダシャク
今まで飛び古した個体しか見てこなかったので新鮮個体は美しい。
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セニジモンアツバ
腹部に銀色に輝く鱗粉が並んでいる。
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トガリバの一種(カギバガ科)
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集落のほぼ真ん中にある水場で、いつものように一杯。
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かつて村人全員で年1回登っていたという岩山は雲に包まれている。
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集落を過ぎてからは電柱にいる蛾を探す。
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マエキリンガ
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クルマスズメ
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シラフクチバ
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道沿いにあるカラスザンンショウは毎年ぐんぐんと大きくなっている。
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花は五分咲きくらい。晴れていればハナアブが結構来るのに、残念。
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谷の様子
前回が春だったので、一気に季節が進んだ気がする。
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気温は22℃、雨が降っている割にはそんなに低くはない。
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雨具のおかげで雨はまったく気にならない。湿度100%の斜面をゆっくりと登っていく。
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40分ほどで尾根に出る。とりあえず、花の状況を確認するため歩いていく。
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しばらく歩いて、手頃な樹高のリョウブの木に到着。
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花は満開。
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しかし、掬ってみても虫影はまばら、ピドニアすら入らない。これではノリウツギまで行っても仕方ないだろう。どうしてもたどり着きたい場所まで行くことにして、先へ進む。
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しばらく歩いて、植林の中にそびえるモミ立ち枯れに到着。天気が良ければアオタマムシが飛んできそうなものだが、今日はとても無理。
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代わりに、根元に残った樹皮が気になった。浮いている場所を探して、そっと剥がす。
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オオクロカミキリ♀
亜高山帯で死骸を見つけて以来、ずっと探していたのだがようやく出会えた。やはり生きていると迫力がある。
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さらに、近くの樹皮をもう少しだけ剥がす。
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これだけで来た甲斐があった。樹皮剥がしは終わりにして、先へ進む。
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今日の目的地に近づいたので、このあたりから探索範囲を広げる。
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根元に樹洞があるブナ立ち枯れ。かつて生きている頃に樹洞性の巨大コメツキムシを採ったが、もう長くは持たないだろう。今日は何が潜んでいるだろうか。
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オオキノコムシ
お馴染みのピーナッツの香りが漂う。
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オオヒラタハナムグリ♀
オスは花掬いでよく入るが、メスはこういう場所でないとなかなか採れない。
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次に、この倒木
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コモンホソナガクチキ
学生時代に立ち枯れで大量にいるのを見たので普通種と思っていたが、実はそうではないらしい。
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有名な巨樹のそばでひっそりとそびえ立つミズナラの大木。目視での探索がひと段落したところで立ち寄ってみた。いつもそこにいるはずなのに、見つからない時もある、不思議な木。今日は笑っているように見えた。
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さて、帰りはビーティングをしながら下っていくことにしよう。
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枯葉つきの倒木
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蔓が絡まった倒木
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叩く場所は無数にあるので、虫もそれだけ分散している。普段はまずやらないが、今日はひたすら叩いていく。
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エグリヒメカゲロウ
最初は枯葉かと思ったが、直立したので虫だと気づいた。
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ニセビロウドカミキリ
枯葉つき枯枝の常連。ビーティングで落ちた唯一のカミキリムシ。
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オオホシミミヨトウ
枯葉そっくりの翅でうまく隠れているのだろう。
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オバボタル
触角が雨に濡れてうまく伸ばせないでいる。
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ベニボタルの一種
普段あまり採らないが、今日は確保。
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オオチャタテ
いつも見るが、写真を撮ったのは今日が初めて。
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キアシヒゲナガアオハムシ
動きが速い虫もじっくり撮影できるのは雨天ならでは。
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見晴らしの良い場所まで進んだところで一休み。この雨具を着るたびに、院生時代の孤独な野外調査を思い出す。その反動もあって、あの頃は奥多摩に来れば初採集のカミキリムシが次々と採れた。
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たも網を長竿に持ち替えた今も、アマガエルの合唱が聞こえると暗い気持ちになる。苦しくも楽しかった時代だと頭ではわかっていても、そうなってしまうのだ。でも、悲しさだけはようやく忘れられる時がやってきた。そのことに、感謝しよう。
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バスの時間が迫っているので、休憩後は足早に斜面を下っていく。帰りを待っていてくれる人がいるので、滑落だけは絶対に避けなければ。
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舗装道路に戻ってきたら、あと少し。
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報告も終わったし、もしかしたら今年はこれが最後かもしれない。でも、それでもいい。少しだけ霧が薄くなった山並みを見ながら帰途についた。