青葉薫る天王山

2011.Jun.6

6月に入り、山は新緑から青葉へと移り変わる。梅雨入り前の爽やかな空の下、野にも山にも生き物が溢れ始める。京都からは初夏の風物詩であるホタルの便りも届き始めたこの日、体力作りと自然観察を兼ねて山へと足を運んだ。


11時、登山口へ。雨粒が落ちてくる不穏な天気ではあるが、とりあえず出発。

まずは舗装道路を進んで行く。途中で道を間違えたり、犬と戯れたりしながら山頂方向へ。


ウスフタスジシロエダシャク

道端のフジの葉に止まっているところを相方が発見。発見能力が前回よりさらに高まっている。

15分ほどで土の道へ。ここから林の中を登っていく。

7分ほどで、伐採跡地が見えてくる。右前方に見えるコナラにチョウがまとわりつき、樹液があることを知る。


ヒカゲチョウ

遠目からズームで撮って、その後に接近を試みる。

気配には敏感で、うかつに近寄ると飛び去ってしまう。相方はさらに、樹液に潜む虫影を発見。


ヨツボシケシキスイ

夏の樹液の常連である。流出量がこれから増えてくれば、群がる姿も見られることだろう。


ハラナガハナアブの一種

樹液を撮影している相方の足元に静止。近似種が数種類いるようなので採集しないと同定は無理。

樹液を後にして、伐採跡地へちょっとだけ足を踏み入れてみる。明るい林縁でヒカゲチョウ類やセセリチョウ類の姿は多いが、すぐに飛び立ってしまうため撮影は断念。


ベニカミキリ

なんとか静止している虫を発見して撮影。この山で勢力を拡大するタケ林で増えているのだろう。あまり長居することなく、登山道へと戻る。

11時30分、展望広場に到着。一休みして水分補給。

眼下に広がる淀川。天気は回復してきて、日差しが出てきた。

一休みの後、再び登山道を登っていく。道端にはツツジが咲き残っている。

11時45分、鳥居に到着。すぐそばのツツジに、大きな影が舞う。


モンキアゲハ

アゲハの中でも特に大型になる。これを見ると初夏が来たことを実感する。

さらに登山道を進んで行くと、竹林が現れる。

小規模な伐採で明るくなった場所には虫の気配が漂う。


センチコガネ

これも相方が発見。飛翔準備をしているところは初めて見た気がする。この後、飛び立っていった。

雲も薄くなり、日差しが降り注ぐようになる。


ナミハンミョウ

行く先を示して、飛び立つたびにキラキラと輝く。

ここも周囲より少し明るくなっている場所。光り輝く物体が地面すれすれを飛んでいるのに気付き、着陸地点まで追いかける。


オオセンチコガネ

これは採集しておく。

12時20分、山頂の広場に到着。

頂上の碑を写真に収める。

そして、昼ごはん。

しばらく山頂でのんびりした後、下山。

途中、登りとは別のツツジで虫影を発見。しばし撮影に集中する。


カラスアゲハ

せわしなく花を移動しながら吸蜜している。かなりピンボケだが、私の腕ではこれが限界。相方の技術と一眼レフの威力を思い知った・・・。

14時半、舗装道路まで戻ってきた。

ここでも相方は何かを見つけては撮影。コツをつかんでからはいろんなものが見えるようになったという。

まだ日暮れには時間はあるので、ちょっと寄り道。

芸術の世界に少しだけ足を踏み入れてみる。池では真っ白なスイレンが綺麗に咲いていた。

周辺視野を封印して山荘を鑑賞していたら、相方が何かを見つける。


ベニカミキリ

登りに見たのを覚えていて見つけたらしい。一度見たことがあると2回目は早い・・・。


サトキマダラヒカゲ

通路の手すりに止まっていた。このチョウを見ると樹液の季節がやってきたことを実感する。

庭園ではアジサイが咲き始めていた。もう少ししたら、梅雨が始まる。

山荘見学の後は、京都の中心部へ。

目星をつけた場所に移動し、夕闇を待つ。

あいにく気温が低くて、条件はあまり良くなかった。それでも河原に座って対岸を眺めていると、ほのかな光が草むらに明滅する。さらに待っていると、闇を舞う姿も何度か見ることができた。

4年前の6月は、佳境を迎えた修論研究の野外調査。農村の片隅で、独り野宿をしていたあの頃。ふと気づくと、闇夜の谷戸に飛び交う多数の光。その光はみるみるうちに激しく揺れ動いていった。

あれから4度目の夏。明滅の間隔こそ東と西で違うものの、眼の前で飛び交っているのは、あの夜と同じゲンジボタル。溢れる感情は、まったく違った一夜となった。

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