よみがえる信仰の里山

2012.Feb.10

今年の冬は例年に比べて気温が低いが、寒さはこれからが本番。このところ暖冬続きだったので、ひと昔前はこんな感じだったのかもしれない。フユシャク類など一部を除いて昆虫は眠っているが、虫屋は活動中の人も多い。

3週間の研修の代休が1日だけあるので、せっかくだからどこかの里山探索へ。候補をいくつか絞った中で最終的に選んだのは、相方の実家へ向かう南海本線の車窓でいつも気になっていた、岸和田駅あたりで金剛山系の手前に見える丘のような山。情報を集めてみると、南方系の要素も混じる面白そうな場所らしい。特に狙いたい虫はいないので、下見をメインに訪れてみることにした。


電車とバスを乗り継いで、午前10時半に登山口に到着。ここから山頂へ向かって、舗装道路を延々と歩くことになる。

側溝は綺麗に掃除されており、初夏になればオサムシが容易に見つかりそうだ。

麓の方はカシ類など照葉樹林の様子が色濃く、見慣れたコルク質の樹皮を持つ木もクヌギではなくアベマキ。

樹液の痕跡を見るため近寄ると、フユシャク類がクモの巣にひっかかっていた。この林が昔から残っている証拠でもある。

道をどんどん進んで行くと、たまに竹林の中を通る。旺盛な繁殖力で山を覆い尽くすのではないかと懸念されているそうだ。

30分ほど歩いて、尾根沿いに出る。右手に和泉葛城山などの山々を望みながら、頂上へ向かって平坦な道が続く。

少し歩くと、急に右手の視界が開ける。

カーブの手前で足を止めて眺めると、眼下に縞模様になった山肌が広がる。

山全体を覆い尽くす勢いの竹林を伐採した跡だ。

残された樹木の面積を見ると、竹林の勢力がいかに強大だったかがわかる。多様性が失われつつあったこの山の植生を蘇らせようとの想いで、急斜面の中でよくぞここまで切り倒したものだ。

足元に積まれた竹を見ると、脱出孔があいているものが多い。大きさからみて、ほとんどがベニカミキリのもののようだ。6月になったら無数の個体がクリの花に集まることだろう。

その脱出孔のひとつに、蓋がされていることに気づく。これは中に何かいる証拠なので、ナタで慎重に削ってみる。

分厚い竹を削ると、坑道の奥から繭が出てきた。おそらく、ドロバチ類の繭だろう。何に化けるかを楽しみに持ち帰ることにする。

さらに歩くと、展望台に到着。時間は11時半、このあたりで昼食にする。

古くから歴史と文化の中心であったというこの山からは、岸和田市内が一望できる。海の向こうには六甲山もぼんやりと見えていた。

昼食後、せっかく来たのでオサ掘りでもしようと思い、場所を探す。

ちょっと歩いたところで脇道を見つけ、進んで行くと良さそうな場所に出る。

作業用レールが通っているが、この様子だともう使われていないようだ。

手鍬を取り出し、植物の根が適度に絡まった崖を掘っていく。

少し掘ったところで、溜まった土に埋もれかけた虫体を発見。土を払いのけて地面に置く。


オオオサムシ♀

生きているのを見るのはかなり久しぶり。マヤサンやイワワキなどを見慣れてしまったので、とても大きく感じる。

再び掘り始めると、すぐに追加個体。

前胸と上翅のへりに現れる青色が実に美しい。

続いて、崖の中の越冬窩にいる状態の個体も発見。土を慎重に取り除いて撮影しようとするが、急に動き始めて落下。

これもオオオサムシだった。


越冬窩

ここから顔を出している様子を撮影したかった・・・。

この後、さらに1匹を追加したがそれ以降まったく見つからず。


アオズムカデ

これは多数出てきた。


コマルハナバチ女王

オサ掘りの副産物として時々見つかる。今回は1匹のみ出てきた。

ある程度掘ったところで見切りをつけ、別のポイントを探すことにする。

少し歩いたところで、林内にアカマツの立ち枯れを発見。なかなか太い木なので、厚い樹皮下に期待が持てそう。

樹皮を剥がすと、予想通り。


マイマイカブリ

この山にもしっかり生息していることがわかって良かった。

マイマイカブリに満足して、この後は特に探索もせずに下山。

バス停から離れた場所に出てしまったので、地図を頼りに最初の場所へ向かう。

今年は各地で梅の開花が遅れているらしく、ここでもようやく咲き始めたばかりであった。

当然ながら、サクラはまだ蕾も小さいまま。それでもこの季節は条件反射で枝先を観察してしまう。

リンゴカミキリ幼虫の古い穿孔サインを発見。

大阪府産はまだ採集していないので、土手を登って探してみることに。

すぐに新しい穿孔サインを見つけたが、これは来年成虫になる若い幼虫のもの。

そして、こちらが今年成虫になる老熟幼虫のもの。

個体数は必要ないので、このくらいで止めておく。奥から2本目の左端から飛び出しているのは幼虫の腹部。老熟幼虫はそのまま、若い幼虫は生きた植物に移植して飼育してみることにしよう。

今日の探索はここまで。ロウバイの香りに遠い春の足音を感じつつ、帰途についた。

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