2012.Jun.28-30
早くも夏が到来した南西諸島を除いて、日本全国ほとんどが梅雨の真っ只中。恵みの雨を存分に吸いこみ、山々はさらに緑濃くなる季節。そして、梅雨空から太陽が顔を出すと、雨宿りしていた生き物が一斉に姿を現す。
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過去に記録があるカミキリムシすべてに出会うための奥多摩探索も、今年で11年目。残された種類が少なくなるにつれて難しくなっていくのだが、今までなかなか訪れることができなかった時期と環境を狙うことは少しでも早道になるはず。天気図を見ながら梅雨の晴れ間を予想して、和泉国を出発した。
夜勤明けで電車に揺られること6時間、21時40分に奥多摩駅到着。節電のためか、誘蛾力の高い駅名を照らす電球は消えていた。
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ひとまず、いつものトンネルへ蛾像収集へ。ここは生活道路なので電気はついている。
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ライトを片手に、壁をゆっくりと眺めていく。
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今夜は月齢もよく気温もそこそこ高く、わりと良い条件。一番大きいオオミズアオから、前翅長1cmにも満たないミクロレピまで、わりと多くの鱗翅目が集まってきている。見慣れた顔が多いが、何度通っても新顔が見られるのは蛾の奥深いところ。その中で、今回のお気に入りは次の2つ。
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マエヘリモンアツバ
紫と茶の絶妙な組み合わせの渋い蛾。羽化直後の新鮮な個体のようで、鱗粉のひとつひとつが輝いて見える。
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ミドリリンガ
古ぼけた外壁に突如として浮かび上がった鮮烈な緑色。これも羽化直後らしく、この時期の青葉のように艶を放っている。緑色の蛾といえばアオシャク類が有名だが、それとは違う輝きを持つ蛾である。
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1時間半ほどの蛾像収集を終え、いつもの場所で眠りについた。
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翌朝、5時起床。予想通り、雲の間から青空が見える。
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朝食を食べながら準備を進め、駅前で掲示物を確認。事前情報のとおり、6月初めの豪雨による通行止めはまだ解除されておらず、目的地まで3分の1までしかバスは動いていない。そこから先は予定通り歩いていくことにして、6時始発のバスに乗る。
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バスの折り返し地点で降り、迂回路を目指す。
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集落にさしかかると、白い花で覆われた素敵な路肩が現れる。
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ユキノシタ
これだけ群生していると見事なものだ。
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しばらく歩いて、植林へと続く迂回路へ。
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林内の小道には木材チップが敷き詰められ、電球も吊るされている。通勤で奥多摩駅に向かうとみられる人とも何名かすれ違った。途中まで車で来て、夜はまたこの道を歩いて帰るのだろう。
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普段は通る人もほとんどいないような旧道や作業道だが、数年に一度の割合で発生する通行止めの際には、このような形で役に立つ。
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トンネルを抜けて橋を渡る時には、澄んだ清流が目に飛び込む。
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そして、青葉の道をひたすら最奥の集落目指して歩いていく。
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歩き続けること1時間・・・
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7時45分、ようやく集落に到着。
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青空も広がってきて、夏の日差しが降り注ぐ。
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畑の脇にあるクリはちょうど満開。これなら、林道の奥のクリも少しは咲いているはず。
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集落を後にし、原生林を目指して歩いていく。
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途中、以前から気になっていたエリアへちょっとだけ寄り道。
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奥多摩では貴重な、斜面に広がる草地。10年の月日を経て、アザミ類がだんだんと勢力を拡大してきている。
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葉をみると、見覚えのある食痕。過去に一度、目撃しておきながら取り逃がしているカミキリムシのものに違いない。発生のピークであることを期待して、周囲の葉を慎重に見て回る。
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すぐに、葉裏に静止する個体を発見。さて、前胸の色はどうだろうか・・・。
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ヘリグロリンゴカミキリ
標高600mではさすがに平地で見られる種類と同じだった。
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今度は逃がさぬよう確実に捕える。実は、密かに狙っていた奥多摩自己初採集。前胸が黒いものも奥多摩にはいるはずだが、それはヒマワリの種とともに来年以降の課題へ。
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寄り道から戻り、いつもの場所へと向かう。
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谷の様子
緑濃い、梅雨時の広葉樹林が広がる。
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「気温は....」と思ってカメラを構えるが、そこにあるはずの温度計がない。誰かが持ち去ってしまったのだろうか....。感覚では、20℃は超えているはず。
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外灯の下には例年通りミヤマクワガタの頭部が落ちていた。鳥の餌食になる個体がいるということは、順調に発生しているようだ。
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今回は、林道を攻める。いくつかの採集イメージを抱いて、谷筋の林道へと足を進める。
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橋を渡って対岸に渡ると、そこは砂利道。
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落石防止柵も少なく、上を見上げると緑の中に吸い込まれそうになる。
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林道脇に眼を戻すと、遠目からでも目立つ白い花。
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アワブキ
良い具合に咲いているが、甲虫の集虫力が弱いのが難点。
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シナノキ
林道序盤での狙いは、シナノキの葉を後食に来るカミキリムシ。奥多摩で未採集のヒゲナガシラホシ、シラホシキクスイなどが狙い。
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まず、葉をじっくりと観察。葉脈沿いに食痕があれば、成虫が来ている可能性が高いのだが、美味しそうな青葉の部分をいくら眺めていても線状の食べ痕は見当たらない。
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次に、ダメもとで長竿を伸ばして掬う。もっとも可能性が高そうな枝から掬っていくが、甲虫はテントウムシのみ。あとはシナノキでお馴染みのタケウチトゲアワフキが入ったくらいであった。
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目星をつけていた何本かのシナノキで試してみたが、結果は変わらず。数年前には食痕が見られたのだが、今は条件が合わなくなってしまったのだろうか。
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しばらく歩くと満開のウツギが残っていたので、ちょっと目先を変える。長竿を伸ばし、ひと掬いですべての花序を納める。
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オオトラフハナムグリ
(オオトラフコガネ)
花掬いではたくさん採れるが、久しぶりに見るととても立派に見える。
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ニンフホソハナカミキリ
ちょっと日陰の花掬いでは無数に採れる、お馴染みの種類。
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さすがにこの程度の花の規模ではこれが限界。すでに盛りを過ぎている株がほとんどなので、ここでの花掬いは諦めて先へ進む。
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林道脇の草むらを眺めながら歩いていくと、ハチの仲間が結構飛んでいるのに気づく。その多くは狩りバチや寄生蜂で、眼を離すとすぐにいなくなってしまう。しばらくして眼が慣れてくると体の斑紋が見えるようになり、これぞと思うものに狙いを定めて網を振り抜く。
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ハバチの一種その1
なかなか大型でかっこいいので、迷わず持ち帰る。
(大阪府のハバチ・キバチ類に載っているオオコシアカハバチか?)
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ハバチ科の一種その2
触角、翅、腹部、どれも前者とは違うので迷わず採集。今まであまり手を出していなかった分野だけに、見るものほとんどが新鮮。
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林道を歩き始めてから50分、再び橋を渡る。
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ここから先は落石防止網が張り巡らされているため、林縁と林道の距離が遠い区間が長く続いている。工事により斜面の木々は皆伐されるため、ピドニア採集で有名だった頃の面影は薄い。
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それでも、年月とともに木々は成長し、やがて花をつける。このノリウツギも、奥多摩に通い始めた頃とは見違えるほど大きくなった。
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開花時期はおそらく7月中旬~下旬。一体、どんな虫が訪れるのだろうか。
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そんな花咲く季節を思い浮かべつつ、林道脇の下草を観察しながら歩いていく。この時期に出現するであろう、とあるカミキリムシを探して。
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ホソオビヒゲナガ♂
カミキリムシと同じく、鱗翅目の中でも特に長い触角を持つヒゲナガガの仲間。
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トゲカメムシ
わりと普通にいるようだが、意識して見るのは今回が初めて。
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フキバッタ類の幼虫
これを見るたびに狙いのカミキリムシではないかとドキドキしてしまう。
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こんな調子で日陰と日向が交互に繰り返される区間を延々と見ていくが、結局狙いのカミキリムシの姿は見られなかった。記録はあるので分布は確実なのだが、時期の問題か、眼力の問題か。
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林道を進んでいくうちに、だんだんと日差しが強くなってチョウも飛ぶようになってくる。
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シータテハ(夏型)
実は奥多摩で見るのは2回目。キタテハに似ているので今まで見過ごしていた可能性もある。
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ミドリヒョウモン
吸水のため地面に降りてきたところ。こちらは毎年のように見ている。
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だいぶ歩いたところで、ウツギがある程度まとまって咲いているところに到着。オレンジ色のカミキリムシを連想することが多いが、今回はあいにく条件が合わない。
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ベッコウハナアブ♂
一応覗いてみるも、ハチとハナアブくらいしか見当たらない。ピドニアくらいいてもいいようなものだが・・・。
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林道入り口から歩くこと2時間半、立派なサルナシの株に到着。
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花はちょうど咲いているようだが、なんだか花粉の色が毒々しい。
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花に集まるピドニアと、葉脈をかじる黄色いカミキリを狙って長竿を振るうが、ピドニア1匹すら入らないという信じられない結果。でも、本命の花はもう少し先にあるので気を取り直して先へ。
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さらに先へ進むと、小規模な土場を発見。おそらく、林道工事で斜面を伐採して出た枝をここに集積しているのだろう。ちょっと覗いたらヒメハチモドキハナアブが無数にいた。樹種はツガと広葉樹がいろいろ混じっているようで、そこそこ良さそう。まだ午前中ということでカミキリムシは期待できないので、帰りに見ることにしよう。
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林道入り口から2時間40分、ようやく本命のポイントに到着。カーブのところに立つ、手頃な高さのクリの木。リョウブもツルアジサイも咲いていない今、これが咲いていれば絶好のポイントになるはず。
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まずは開花状況を確認するため木を見上げるが、どうも様子がおかしい。2007年はほぼ同じ時期で咲き始めだったので、満開とまではいかなくてもそこそこ期待していた。
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残念ながら、開花まであと数日というところ。今年は季節がここ10年の平均よりも遅れ気味なのか・・・。
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完全にアテが外れたので、林道をさらに奥へと歩いていき、なにか良いポイントはないか探すことに。
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オオバアサガラ
ピドニア採集に向いている花として有名。試しに網を伸ばしてみるが、入るのはチャイロヒメハナとフタオビヒメハナくらい。そんな中、変な動きをするハチが飛んできたので、すかさず網を振り抜く。
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ヨコジマナガハナアブ♂
スズメバチ似の大型のハナアブ。なかなかかっこいいので見つけるとつい採ってしまう。
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集虫力に関してはあまり良い花ではないので、待つことはせずに先へ進む。林道のかなり奥にある原生林へ、わずかな望みをかけて。
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クリの木から歩くこと20分、原生林の入り口へ到着。以前来た時に見つけたイヌブナの倒木が目印。
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さっそく、斜面を登っていく。
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イヌブナの倒木はさすがに腐朽が進んでいて、キノコに集まる虫がわずかにみられる程度。昨年ならば、セダカコブヤハズカミキリが見られたに違いない。
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しばらく登ると尾根に出る。すぐに、ブナの大木が眼に飛び込んできた。
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ブナの大木
巨樹とまではいえないものの、なかなかの大きさだ。
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夏の日差しを受け止めて、柔らかな光を林床に送り届けている。
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大きな木もそこそこあるので、尾根沿いを中心に探索。
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広葉樹立ち枯れの根元の樹皮が浮いていたので、そっと剥がす。
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オオキノコムシ
ブナ林を代表する昆虫のひとつ。手に乗せて撮影していると、独特のピーナッツの香りが漂った。
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しばらく尾根沿いを徘徊していると、獣道を発見。どこに続いているのか、とりあえず進んでみたが、これが失敗だった。
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いつの間にか道が消え、ガレ場を下ることに・・・・。
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なんとか斜面を下りきり、林道に戻る。夏の日差しで路面が白くなり、乾燥が進んで行く。
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林道終点まであと少しというところで、これ以上先に進むのが嫌になる。時間はもう12時半、花掬いの黄金時間はとっくに過ぎてしまった。沢筋の木陰で休憩しながら水分補給をして、下りながら土場を目指すことにしよう。
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太陽の勢いはますます強くなり、ダートの路面と木々の影のコントラストが激しい。
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しばらく歩くと、林道の脇に真新しい立て札を発見する。そこにはこれまで気にも留めていなかった脇道があるではないか。その行き先は、なんとなく心を惹かれる。ちょっと寄り道してみることにしよう。
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まずは植林の中を進む。木はそれほど細くも太くもなく、林道ができてから植林されたものなのだろう。
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しばらく歩くと、平坦な場所に広葉樹林が広がった。
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ブナの大木
周りの木と比べるとかなり太い木がそこそこ生えている。
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川が近くなっているため、湿度もそれなりに保たれているようだ。
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何か良い物件はないかと歩きまわっていると、雰囲気の良いブナの立ち枯れを発見する。
そっと根元に近寄り、その大きな幹を根元から梢へと仰ぎ見る。
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逆光に眼が慣れてくると、はるか上から何かが歩いてくるのが見えた。
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射程距離に来たところで、長竿を伸ばす。
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オオホソコバネカミキリ♀
ブナ林を代表するカミキリムシのひとつ。久しぶりに見るその姿はかなり大きく感じられる。
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再びブナを見上げると、もたれかかっているミズナラとの接触部分に黒光りする物体を発見。動き出す気配はないので、長竿で突いて落とす。
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ミヤマオオハナムグリ♀
上翅は点刻が少なく艶々しているのが特徴の、山地にしかみられないハナムグリ。生息しているとは思っていたが、ようやく出会うことができた。
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さらにブナを見上げてみるが、さらなる発見に至ることはなかった。他に倒木などもあったが鮮度がいまいちで、セダカの姿はみられない。植林さえなければこの環境が林道のすぐそばにも広がっていただろうと思いながら、来た道を引き返して林道へと戻る。
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涼しい林内から一転して、炎天下を歩いていく。
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そして、行きに見ていた土場に到着する。
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もうカミキリムシの産卵時間帯になっているはず。期待を抱きながら材の表面を見て回る。
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キスジトラカミキリ
かなり敏感でこれ以上近寄れず、採集しようとしたら飛び去ってしまった。
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ヤツボシハナカミキリ♀
古めの材に産卵中のようだ。
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キモンカミキリ♀
細い枝に飛来したところを採集。
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そして、もっとも個体数が多かったのはハナアブだった。
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遠くからじっとこちらの様子をうかがい、間合いを詰めようとすると飛び去る。
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正面からはまず不可能なので、横から攻めると少しは近寄れる。しかし、気温が高く敏感になっていて、これが限界。
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ヒメハチモドキハナアブ♂
腹部が細くなっており、かなり完成度の高いアシナガバチ擬態。こんなところに集まるからには、産卵に来る♀を待ち受けるのだろう。
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他にめぼしい虫はいないので、またゆっくりと林道を歩いていく。
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林道中盤の工事現場
落石防止柵を設置するため、斜面がすべて伐採されていた。こうして車は安全に通れるようになるのと引き換えに、林縁は遠くなり、路面はますます乾燥が進んでいく・・・。
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林道脇のウツギの花
遠くなった林縁から、必死に枝を伸ばしている。何もいなさそうだが、一応長竿を伸ばしてみる。
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トワダムモンメダカカミキリ♂
材では何度か出たことがあるが、野外では初採集。これで奥多摩で野外採集していないメダカ系はタイワンメダカのみとなる。
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さらに歩いて林道起点が近づいた頃、路肩のヨモギが眼に留まる。食痕を頼りに眺めていくと、やはり予想通りの虫影があった。
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ヘリグロリンゴカミキリ
開けた場所ということで林道沿いは好適な生息環境なのかもしれない。
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トリアシショウマ
梅雨時であれば、Pidoniaが集まっている花。今は虫の姿はない。林道工事とともに一時はだいぶ姿を消したが、少しずつ復活してきている気がする。
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ニホンジカ
約10年前、奥多摩の林床の様子を大きく変えてしまったのが本種とされる。住みかを追われて本来住むべきところではないところに進出した結果、スズタケの消滅やマダニ増殖など、予想外に大きな影響が現れてしまった。
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18時頃、林道起点まで戻ってきて一休み。衣服に染み込んだ汗を蒸発させて夕暮れを待っていると、なにやら黒い影がたくさん集まってきた。
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ゴマフアブの一種
山地でよく見る吸血性のアブ。久しぶりにみるその姿に最初はしげしげと観察していたが、やがて尋常ではない数の個体が頭上を飛び始める。網を振っていくら掬っても、次々と集まってきてキリがない。
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日が完全に沈んであたりが闇に包まれる頃、ようやくゴマフアブの襲撃は終わった。すっかり体力を使い果たしてしまったので、明日に備えて今晩は思い切って眠ることにしよう。
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