変わりゆく河川敷

2012.Jan.29

3週間にわたる研修も、あと1週間を残すのみ。次の金曜日には大阪に戻らねばならないので、今日が最後の休日。

前日の積雪の高尾山で山地は懲りたので、今回は河川敷へ。先週見つけることができなかったクビナガヨツボシゴミムシを求めて、 以前1度だけ訪れたことがある下流域の流木溜まりを訪れてみることにした。


電車に揺られること1時間、最寄駅に到着。澄み切った空の下を歩いていく。

午前10時、目的地に到着。

2009年に訪れた時から、さらに地形が変化。写真中央付近にあったはずのヤナギの木が無くなり、水たまりの面積がかなり拡大している。

昨年もかなりの水が流れたようで、低いヤナギの木もことごとくなぎ倒されている。

朽木が流れてきていないか探索するが、この1本のみ。当然、目当てのゴミムシ類の姿はなかった。

流路が完全に変わり、大雨の時は必ず水が流れるようになってしまった。堤防完成前はもっと大規模な変化があったはずなので、これぐらいで驚いてはいけないのだが。

しばらく歩いて、以前に流木溜まりがあった場所に到着。さっそく探索を開始するが、見つかるのはこのような細い枯枝や枯草の塊が中心。ゴミムシ類が潜れそうな、適度に柔らかい朽木は見当たらない。

唯一のポイントは、オニグルミの脇にあった広葉樹の倒木。

ひっくり返してみると、見覚えのある大粒の糞が散らばっていた。

その下をそっとかき分けると、白いものが姿を現す。


カブトムシ幼虫

河川敷で世代をつなぐ個体群、まだ健在であった。流木が供給され続ける限りは安泰なのだが、この先はどうなるだろうか。

上流へ向かって歩き続けるが、適当な朽木が混じるエリアにはなかなかたどりつけない。

杭として使われていたとみられるスギの丸太。もう少し朽ちてくれればマシな物件になるのだが・・・。

仕方ないので、目先を変えて崖をちょっとだけ掘ってみる。


アオゴミムシ


ヒメキベリアオゴミムシ

5分ほど掘ってみたが、ゴミムシがほとんど出てこないので見切りをつけ、さらに上流へ向かって歩き始める。

しばらく歩くと、ヤナギ林が出現。

大雨で下草はかなり流されていて、とても歩きやすそう。泥に足をとられないように注意を払い、林の中へ。

ざっと見渡したところ、あいにく朽木はないようだ。

ヤナギの幹に溜まった泥や枯草を狙う方針に切り替えるが、先週と違って枯草主体で、泥がほとんどない。

たまに泥が溜まっている木もみつかるが、量が少なく、高い位置にあって乾燥気味。これも一応崩してみたが、マイマイカブリは出てこなかった。

仕方ないので、多摩川河川敷での課題のひとつ、フクズミコスカシバを探すことに。この時期は幼虫がまだそれほど活動していないはずなので、わずかに出ている糞をたよりに樹皮下に穿孔する幼虫を探す。

すぐに、糞がかすかに出ている部位を発見。神奈川県での経験からわかっているのは、表面が多少荒れている部分や、他の昆虫の穿孔部分の周囲から幼虫が潜りこむということ。

さらに、枝同士が接触している部分からも糞が出ている。穿孔する時が一番無防備なので、外敵に見つからないように場所を選んでいるはず。

糞が出ている部位は何カ所か発見したが、結局は幼虫の発見には至らず。別の幼虫(ハマキガ科?)が見つかるか、食痕が途中で途絶えてしまう例のみ。

そして、さらに上流へと向かうと石河原が出現。昔はこのような環境は河川の氾濫で定期的に作り出されていたはずだが、河川敷公園が多く整備された現在では、下流域でこのような環境はとても貴重。秋になれば、上流で生息が確認されているカワラバッタがここにも出現するに違いない。

これ以上先に進むのはやめて、堤防沿いに下流へ戻る。もう、クビナガヨツボシゴミムシは諦めて、お土産用のマイマイカブリを探す。途中でめぼしい朽木を見つけては河原に降りて崩すことで、少しばかり採集することができた。

最後に、堤防の外側に生えていたプラタナスで樹皮めくり。


プラタナスグンバイ

2002年に愛知県で初めて確認された北米原産の外来種。かなりの個体数が越冬していた。

変わりゆく河川敷の状況を頭の中にインプットしたことと、東京都産昆虫の写真がひとつ増えたことをめぼしい収穫にして、帰途についた。

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