奥多摩:晩夏のモミ林2013

2013.Sep.13

9月も中旬になるが、相変わらず残暑が厳しい今日この頃。晩夏に出現するトラカミキリの王様の話も各地から聞こえてきている。

今年は奥多摩で幼虫を偶然にも採集したが、残念ながらその雄姿を見ることができず、せっかく訪れたチャンスを生かすことができなかった後悔だけが残った。この時期、奥多摩ではもう発生が終わりかけで成虫を見つけるのは厳しいことはわかっている。それでも、成虫に出会える可能性が少しでも残されているならば、それに賭けてみよう。


成田から始発電車で出発し、奥多摩駅に到着したのは10時過ぎ。北東の空には雲が広がっている。

西の方はまだ青空が見える部分もある。これ以上広がらないでほしいのだが・・・。

バスに乗って、終点まで。平日なので集落も通過し、いつもの谷まで直行。


谷の様子

夏の日差しを耐え抜いたトチノキの葉が色づき始めている。

一刻も早く、モミ林へ到達するべく、早足で歩いていく。

しばらく歩くと、道路の真ん中に黄色と黒の虎模様が見えた。今日の狙いの王様かと一瞬ドキっとするが、そんなことはまずないので落ち着いて正体を見極める。

見覚えのある模様なので、遠目からでもすぐにわかった。


キイロスズメバチ♂

オスが出現するのは秋だけ。もう、その時期が来ているのか。

それでも、ほんのわずかな可能性に賭けて、登山道を進んでいく。

11時45分、モミ林に到着。

これが、早春に幼虫を見つけた木。

取り出した時の傷はヤニで塞がっていた。

少なくとも2年前の夏、この場所にオオトラカミキリが飛来したことは間違いない。今年も飛来してくれることを祈りつつ、探索開始。

登山道沿いに進み、モミが見えると近くまで寄っていく。

直射日光が当たっている木は優先的に見る。


少し古い羽化脱出孔

このあたりで見かけた食痕は計3本、それほど密度が高いわけではない。落ちた枝に食痕があることはよくあるので、目が届かない高枝にいるものが多いのかもしれない。

探索開始から30分、気づくと空はかなり白くなってきている。これ以上、気温の上昇は望めない。

それでも、太陽が出た時は日差しが降り注ぐ。だが、立っているだけで汗が噴き出すほどの暑さではない。正午近くなり、いつものように吹き始めた風が、沢筋の涼しい空気を運んでくる。


この林でもっとも太いモミ

胸高直径が1m以上ある大木で、樹冠から頭ひとつ飛び出している。さすがにこのサイズになると産卵対象にはしないと思うが、これを目印として飛来して、周辺の木に産卵するかもしれない。実際、幼虫がいた木はこのすぐ近くにある。

14時、普通ならもっとも暑い時間帯。だが、直射日光もなく、涼しい風が吹き抜けて、実に快適。残念ながら、オオトラカミキリが樹冠から降りてくる条件には程遠い・・・。

樹幹を照らす日差しも秋色を帯びるようになってきた。もう、これ以上ここに留まる意味はないだろう。

下山すると、ギボウシの花がひっそりと咲いていた。今まで視界には入っていたのだろうが、意識して見ると実に美しい。

道路に出ると、山が雲に覆われていた。これから天気が崩れるのだろう。

フジの周りでは新鮮なウラギンシジミの姿があった。

今年の夏も、あっという間に過ぎ去ってしまった。モミ林の王様は、また来年探すことにしよう。

inserted by FC2 system