奥多摩:冬の始まり

2013.Nov.14

11月も中旬になり、平地でも紅葉が真っ盛り。木枯らしも吹いて冬の気配が感じられるようになってきた。秋には材採集をしようと思っていたがなかなか時間がとれないため、せめて今年の春に目星をつけていた材だけは回収しに行くことにしよう。12月になってすべてが凍り付き、ナタで朽木が削れなくなる前に。


成田から終電に乗り、日付が変わる頃に奥多摩駅に到着。いつも通り駅舎は暗く、人影もまばら。

写真を撮ろうと思った時に、デジカメのメディアを忘れてしまったことに気づく。紅葉の写真もいろいろ撮ろうと思っていただけに残念だが、後の祭り。内臓メモリでの撮影枚数は大幅に少ないため、画質を低く設定。かなり冷え込んでいるので蛾の飛来も少ないとみて、適当な場所で寝袋にくるまり、仮眠をとる。

朝5時、起床。寒くてまともに眠れていないが、朝食をとって身支度を整える。バスの発車まではまだ時間があるので、いつもの場所へ蛾像収集へ。

到着時の予想通り、蛾の数はかなり少ない。カメラの画質設定を元に戻し、めぼしい種類だけ撮影していく。


ヤマノモンキリガ


アオバハガタヨトウ


ノコメトガリキリガ

この顔ぶれ、冬の訪れが感じられる。

空が明るくなってきたところで始発バスに乗り、最奥の集落へ。

終点で降りて、集落の中を歩いていく。山の上の方はすでに冬景色で、集落付近は紅葉の盛り。


ニホンザル

珍しく集落内の畑付近で群れを見かけた。小柄な個体は怯えながら逃げていったが、ボスらしき大型個体は悠々と歩いて去って行った。

7時、いつもの谷に到着。紅葉は道路沿いの位置まで降りてきており、右手前のトチノキは完全に落葉。


エゾクシヒゲシャチホコ

フサフサの襟巻をまとった冬のシャチホコガ。登山道に向かう途中の自動販売機の明かりに飛来していた。

登山道から林内へ。落ち葉の量が多くて道がわかりにくいが、何度も通っているので迷うことはない。撮影枚数が限られているので、立ち枯れや倒木の位置を覚えつつ淡々と登っていく。

途中、もっとも気になったのがこのモミの倒木。

渦巻の中心部には大きな穴が開いていた。来年の夏、夜になればヒゲナガカミキリが群がっていることだろう。

途中でシナノキの部分枯れを採集したこともあり、9時になってようやく尾根筋に到着。

紅葉は盛りを過ぎているが、まだまだ見上げると天井は色とりどり。

標高を上げていくと、だんだんと落ち葉の量が増えていき林床が明るくなる。

そして、8月2日に聞いた巨大な音の発生源に到着。このエリアの象徴でもあるミズナラの巨樹、幹の半分が折れて地面に倒れていた。

樹冠部から見える青空の広さが、この折れた幹がいかに大きかったかを物語っている。

どんな大きな木でも、いつかは倒れてしまう。この巨樹のそばで笑みを浮かべるミズナラに見られながら、先へと進む。

さらに標高を上げると、ほとんど落葉したミズナラ林に出る。このあたりに目星をつけた材があるので、記憶を頼りに探す。

材を発見。ある虫が産卵に来るように、発見場所からやや北側に位置を変えておいたもの。

樹種はホオノキ。こうなるとわかりにくいが、春先に冬芽で樹種を確認してある。

樹皮にはフトカミキリ亜科とみられる産卵加工がある。

何か所か折ってみて、食痕のある部分だけを持ち帰る。このエリアでも記録がある、あの美麗種が出てくることを願うばかり。

その後、尾根筋から外れて北斜面を進みながら標高を上げていく。

広葉樹の切り株が良い具合に朽ちていたので、ナタで崩す。


ハナムグリ類の幼虫

ある程度まとまった個体数がみられ、朽木の固い部分を食べていた。このエリアに生息するハナムグリ類は全種採集したが、何に化けるのだろうか。いくつか持ち帰って飼育することにする。

さらに標高を上げていくが、落葉した冬の林の姿はあまり変わり映えしない。

林床の湿った部分には霜柱が成長していた。朽木はすでに凍結していて、もう歯が立たない。

小さな沢に出たところで、斜面に生えているイヌブナをちょっと調べてみる。


フジミドリシジミ卵

わりと簡単に見つけることができた。産卵する際に枝の勢いをしっかり見極めているようで、同じ木でも卵がある枝は限られていた。

12時、尾根筋に戻って昼食。風も穏やかで、暖かい。


セアカツノカメムシ♀

広葉樹枯木の上で日光浴。体色も褐色に変化しており、越冬の準備は整っているようだ。

目的は達成したので、昼食後はゆっくりと下山。

標高を下げると、最後の紅葉が太陽で輝く。

俗世を離れて見る紅葉は、とても美しい。

15時、舗装道路に戻ってくる。日が傾き、気温は急激に低下していく。

今年の奥多摩探索はこれでおしまい。長い冬が終わり、未見のカミキリムシが姿を現す頃に、また来よう。

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