2014.Jun.21-22
梅雨といえば古来から長雨がしとしと降り続くものだったはずだが、近年は長い中休みと集中豪雨の繰り返しのようになっている。今週も梅雨の中休みで、東京は真夏のような日が続いた。
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奥多摩探索のうち、もっとも調査が手薄だったのが6月。カエデ咲く5月と、夏の花が次々に咲く7月に挟まれていることと、梅雨でピドニアの季節という印象が強かったからだ。
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梅雨時に出現する数多くのカミキリムシに出会うためには、まず回数を重ねてこの時期の微妙な季節進行を把握するところから。天候の悪化が予想されるが、雨は降っても植物の様子はしっかり把握できる。ビーティングが中心になることを覚悟して、寝袋とともに奥多摩行きの電車へ。
20時半、奥多摩駅に到着。キャンプ場がにぎわう季節になったからか、駅舎のライトアップは復活。
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いつもの蛾像収集ポイントへ。
夕立があって路面が濡れているが、蒸し暑いのでかなり期待できる。そう思ってトンネルに入ると、無数の蛾が壁面に張り付いている。久々に見る光景に興奮しながら、未撮影種を中心に次々とカメラに収めていく。・
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シロスジアツバ
初めて見るアツバの仲間。頭部に角のような反り返った突起物がある。
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キマダラオオナミシャク
夏の到来を告げる大型のナミシャク。羽化後数日といったところか、とても色鮮やか。
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キクビゴマケンモン
地衣類のような模様をしているヤガ。何度か見ているが、緑色をしている蛾はついつい撮影してしまう。
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クロモンコヤガ
初めて見るコヤガの仲間。似ているキモンコヤガもすぐ近くに飛来していた。
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道路沿いにはのぼりが立てられており、そのひとつが絶妙の位置。外灯に集まった蛾がたくさん止まっている。ほとんどが撮影済だが、1種だけ未撮影のものがあった。
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トラフツバメエダシャク
なんとなくトラフシジミを連想させる模様。その存在を知っていつか見てみたいと思っていたが、ようやく出会えた。
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トンネルに戻ると、雨につられて体が軟らかい生き物が姿を現した。
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ヤツワクガビル
陸生の大型のヒルの仲間で、この個体は体長10cmほど。もう10年ほど前、昆研の先輩が林道で見つけて採集して持ち帰り、ミミズを丸呑みする衝撃の場面を部室で観察したのが懐かしい。
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22時頃、寝袋に入って朝を待つ。キャンプ場で騒ぐ若者が静かになった頃、雨粒が屋根を叩く音が聞こえてきた。
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5時半、起床。
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雲が山肌の至るところに見られ、弱い雨が降り続いている。
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これは、予想通り昼間の採集成果はあまり期待できそうにない。始発バスまでまだ時間があるので、少しでも蛾像収集するためトンネルへ。
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ゴマケンモン
何度も見ているが、この緑色の蛾はついつい撮ってしまう。昨夜見たキクビゴマケンモンに良く似ているが別種。
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カバイロモクメシャチホコ
なかなか渋い模様をしたシャチホコガ。昨年はカメラを向ける前に逃げられていたので、ようやく撮影できてよかった。
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6時半、始発バスでいつもの場所へ。
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バス停で雨合羽を着用し、集落の中を歩いていく。集落の中心にある八重桜には青葉が茂る。
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谷底からは雲がゆっくりと立ち上る。雨は一向に止む気配がない。
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外灯を見ながら歩いていくが、蛾も雨でほとんど飛び去ってしまったようだ。雨がかからない場所にうまく止まった個体を見つけては撮影していく。
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オオカギバ
なかなか大型で、岩肌に溶け込むような模様をしている。シャクガ科に似るが、カギバガ科。
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ナミスジキヒメハマキ
繊細な網目模様が入った味わい深いヒメハマキ。今までハマキガをあまり撮影できていなかったので、見つけたら積極的に撮る。
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谷の様子
青葉濃い山肌のあちこちから雲が立ち上っている。
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今日は尾根筋ではなく、林道へ。ビーティングネットを準備し、出発。
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橋を渡ったところから原生林が出現する。ここから本格的にビーティング開始。
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林道脇にはショウマ類の花が点々と咲く。初めて訪れた12年前からだいぶ数が減ったが、最近また少し増えてきた気がする。今日の狙いのひとつ、モモグロハナカミキリはこういう場所にいるはず。葉の裏で雨宿りをしているところを狙い、こまめに叩きながら歩いていく。
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林道の至るところには水溜りができている。たまに整備をしているのだろうが、その数は年々増えている気もする。
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歩いていくと、斜面の木が倒れている場所がいくつか見られる。この冬の大雪の影響だろう。こういう明るい空間ができると、そこに虫が集まってくる。
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大雪の威力を物語る電柱も2本ほど見られた。
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肝心のビーティングの成果だが、ここまで何一つ採集していない。ハサミムシの姿がやたらと目立つくらい。もともと雨の日のビーティングは修行の要素がかなり強い。
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いつもとは違う林道へ。この時期、薄曇りで気温が高ければ某ハナカミキリで有名な場所。
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しかし、予想以上にウツギの花が少ない。本線上でも年々少なくなっている気がする。花が少ない分、そこに集中するので採集はしやすいとも言えるが、繁殖に必要な栄養分を得る花が少ないことは、長期的にはとても危ない状況だと思う。
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相変わらず何も採らずに歩いていくと、キリの木が目に留まった。林道から見下ろす位置に生えており、葉の一部に手が届く。山地のキリといえばあの虫、ということで葉を見ていく。
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クロタマゾウムシ
すぐに、目的の虫は見つかった。まん丸で虫糞と間違えそうな姿だが、これでもゾウムシ。
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擬死するとますます糞にしか見えない。これが、今日初めて採集した虫となった。
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さらに歩いて作業小屋まで到達したが、雨は弱まるどころか強くなっている。時間は9時半、これ以上先に進んでも状況は変わらないとみた。残念だが、ここで引き返すことにしよう。
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帰りながら、林道沿いのポイントを覚えていく。もっとも良さそうなのは、この目線と同じ高さにあるクマノミズキ。長竿を伸ばせば木全体に届く。
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残念ながら、まだまだ蕾固し。平地ではクリとほぼ同じ時期に咲くので、ここで開花するのは7月に入ってからだろう。
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下り道はあっという間に歩けてしまうため、1時間も経たずに分岐を通過。水溜りはさらに大きくなっている。
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行きに気づいて、帰りに寄ろうと思っていたアワブキに立ち寄る。
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葉先が不自然な形になっているのは、巣をつくって潜んでいる虫がいるから。
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アオバセセリ幼虫
この縞々模様、図鑑でよく知っていたが実物は初めて見る。これも7月になったら林道沿いを飛び回ることだろう。
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集落に戻ってくる頃には、雨が小降りになってきた。朝の時点でこの状態だったら望みはあったのだが、天気ばかりはどうしようもない。この時期の林道の様子を下見できたことを成果として、来年以降にまた挑戦することにしよう。
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午後の第1便のバスに乗って帰途についた。