2015.Feb.1
2月になり、そろそろ1年でもっとも寒い時期。にわかオサムシ屋としての次の活動場所は、鬼怒川河川敷。多摩川では見られない、青や緑の美麗なマイマイカブリと、航空写真を眺めて目的地を決め、期待を胸に始発電車に乗り込んだ。
時間の都合で駅からはタクシーを使い、現地に到着したのは8時40分。遠くには雪化粧した日光の山々がはっきりと見える。路線バスの7倍以上の運賃はかなりの痛手だったが、2時間半の採集時間と考えれば安いものか・・・。
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長靴に履き替えて、さっそく河川敷に降り立つ。
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地面は雪で覆われており、倒木はとても狙う気になれない。
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幸い、アカマツの立ち枯れはそこそこあるので調べてみるが、乾燥が激しく、オサムシ類の姿はまったくない。
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この場所は粘っても時間の無駄と判断し、もう少し湿度がある場所を求めて道沿いに歩いていく。
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ササが生えている場所に出たところで、本格的に探索開始。
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笹薮の中の倒木
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笹薮のそばの倒木
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倒木を中心に探していくが、朽ち方が固いものが多い。オサムシが潜り込めそうな物件にはなかなか巡り合えないまま、時間ばかりが過ぎていく。
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ようやく、良さそうな朽木を見つけた頃には9時半を回っていた。大きなヤナギの倒木で、腐朽部が折れて人の頭くらいの高さにある。
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ウスバカミキリの幼虫が内部を食い進んでいるようで、食痕があちこちにある。その一部を指で掘り進んでみる。
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すると、黒い塊が姿を現した。
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マイマイカブリ
ようやく最初の1匹に出会えた。青みが強い個体だ。
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追加を狙って掘り進むが、その先は狭くて固く、とてもマイマイカブリが潜れる状態ではない。こんな良さそうな物件なのに1匹しか見つからないとは、越冬場所が豊富にあって分散しているからか、それとも虫そのものの密度が低いからか・・・。前者であることを期待して、さらなる優良物件を探して先へ進んでいく。
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寄り道しながらしばらく進むと、ヤナギの大木が根元から折れているのを発見。
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近寄ってみると、材部にはカミキリムシ幼虫の食痕がたくさん。強度が落ちて、強風に耐えられなくなって倒れたのだろう。そして、この食痕はオサムシが潜り込むには絶好の場所。なんとなく、このあたりから潜り込みそうな場所の木片を剥がしてみる。
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すると、食痕の中に黒い塊が複数あるのを発見。
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アキタクロナガオサムシ
これが、今日の狙いのオサムシ。金剛山以来4年ぶり、東日本では初めての遭遇となる。もう少し山側で探す予定だったので、河川敷にも生息しているとは意外。
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上翅の縁のわずかな青い輝きがとても美しい。
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周囲を見渡すとアカマツがそこそこ生えていて、立ち枯れもある。追加を狙って、このあたりを重点的に探すことにしよう。
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まずは、この立ち枯れ。
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近づいて、まずはじっくりと観察。オサムシが潜り込むなら、ここか。
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手鍬を振り下ろすと、朽木の中に空洞が現れた。
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アキタクロナガオサムシが2匹潜んでいた。
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つづいて、この立ち枯れ。
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潜り込もうと思う場所は、この樹皮下くらいしかない。
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樹皮を剥がすと、空洞が現れた。
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またもアキタクロナガオサムシが2匹潜んでいた。
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このペースで行けば次々とアキタクロナガが見つかりそうなものだが、実際は不発の立ち枯れも多い。
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不発の立ち枯れの例1
樹皮がほとんど脱落していて、乾燥しきっている。
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不発の立ち枯れの例2
これも乾燥が激しく、樹皮下に何もいなかった。
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ちょっと目先を変えて、根返りを掘ってみる。
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クロナガオサムシ
このあたりはトウホククロナガオサムシの分布域でもあるが、ただのクロナガもいる。
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引き続き、アカマツの立ち枯れを探して奥へと進んでいく。アカマツといえばマイマイカブリの越冬も十分期待できるはずなのだが、なかなか見つからない。さらに運の悪いことに、誤って湿地帯に足を踏み込んでしまう。長靴の中に侵入した水によって、足指の感覚が徐々に失われていく。
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そんな中、ようやく見つけたのがこの立ち枯れ。
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樹皮が今までの株よりも分厚い。期待を込めて剥がしてみる。
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マイマイカブリ
樹皮を剥がした際に木屑が大量に降りかかって、こんな姿に。気温が低いからか、しばらく身動きしなかった。
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その後、しばらく探したがマイマイカブリはこの2匹のみ。時間もなくなってきたので、対岸に最後の望みを託す。
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橋を渡り、対岸の河畔林に到着。残された時間は約2時間。マイマイカブリだけに狙いを絞る。
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堤防近くの林は、憎きニセアカシアの林。「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されている樹種である。朽ちても固いため、河畔林がこの樹種に置き換わると昆虫類の越冬場所が極端に減る。この場所で粘っても無意味なので、水辺の方にあるヤナギらしい枝ぶりの林を目指す。
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水路をひとつ越え、ヤナギ林に突入。ざっと見渡した限りでは、立ち枯れや倒木はほとんどない。こういう状況では、あれを探すしかない。
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ヤナギの根元の泥溜まり
他に越冬場所がない時、探索する価値がとても高まる物件だ。北向きなので若干凍結しているため、手鍬で慎重に崩す。
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すると、すぐにマイマイカブリが出現。
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少し緑がかった個体のようだ。泥を落とせば、きっと美しい姿がみられるに違いない。
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続いて、このヤナギの根元。
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水分含量が多いようで、かなり固く凍結している。手鍬で削るようにして掘っていく。
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少し掘ると、またもマイマイカブリが出てきた。
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このような調子でヤナギの根元を掘っていくが、泥溜まりの規模がさほど大きくなく、マイマイカブリが入っていないものも多い。
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そろそろバスの時間が迫っているので、最後にこの根返りを調べる。
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マイマイカブリ
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トウホククロナガオサムシ
最後になんとか掘り出せて良かった。
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狙いのアキタクロナガとマイマイカブリに出会えて、今日は満足。寒さでほぼ失われていた足の感覚が少し戻って来たところで帰途についた。