2015.Feb.9
今住んでいる住宅地が造成されたのは、成田空港の開港の少し前。それ以前は雑木林と畑と谷津田が延々と続いていたらしい。今でも自転車で5分も走れば、当時の様子を感じ取れる景色が広がっている。
昔と大きく違うところは、水路も川もしっかりと護岸されてしまったこと。多様な生き物が住むことができる、農地に隣接したゆったりとした空間、その多くが失われてしまったことを、訪れるたびにいつも想像する。
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それでも、わずかに残った隙間で今も健在な生き物もいる。今日の狙いである、マイマイカブリもそのひとつ。このあたりでは田園地帯を流れる小川が住みかのひとつ。生活場所となる河川敷の草地は狭いが、流路に沿って延々と続いている。活動期にはカタツムリを求めて細長い生息域を散り散りに移動しているが、冬の間は越冬に適した場所に集まっているはず。そんな場所を見るべく、自転車に乗って出発した。
自転車でしばらく走ると、あらかじめ目星をつけておいた場所に到着。このあたりの河川敷の木は護岸工事の際にほとんど伐採されたようだが、伐採を免れた幼木が成長したとみられるものが点々とみられる。さっそく、そのヤナギの木に近寄ってみる。
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大きな枝が折れて枯れている。これはマイマイカブリの越冬場所になりそうだ。
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まず、折れた部分のカミキリムシ食痕と木屑を少し崩してみる。
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やはり、マイマイカブリが潜んでいた。
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続いて、少し上の方に視線を移す。樹皮を少し剥がしてみると内部は柔らかく朽ちており、湿度もある。これは越冬に適した状態のはず。マイマイカブリが潜り込みそうな場所を1ヶ所選んで掘ってみる。
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すると、マイマイカブリが1匹出てきた。この環境なら集団で越冬していると見込んだが、なぜかこの1匹だけ。
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頭胸部は鮮やかな青色。渡良瀬遊水池などで見るような美しい個体だ。
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この木をくまなく探せばそこそこ追加は得られるだろうが、越冬場所が限られていることを考慮してこの木の探索は打ち止め、次の木を探す。
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川沿いの道に戻って少し歩く。この一角だけヤナギが少し生えているものの、みんな背丈が低い。
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そんな中、ふと目にとまったのがこの部分枯れ。直径10cmにも満たないが、材の中心部に空洞があるようだ。
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少し削ってみると、空洞は意外と奥まで伸びている。
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LEDライトで内部を照らしてみる。
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やはり、マイマイカブリが潜っていた。しかも、複数個体がいるようだ。
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ピンセットを取り出し、1匹ずつ引っ張り出してみる。
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採っても採っても、まだ中に潜んでいる。
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おまけでオオクチキムシも2匹入っていた。
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この狭い空間に潜っていたマイマイカブリは2桁に達し、その多くが♀だった。青みの強い個体が多かったが、緑がかった個体もいた。綺麗な個体だけ選別し、残り半分以上は逃がすことに。最初に見たヤナギにあった樹洞に放り込んでおいた。そして、水辺に出てみる。
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この川の先には、利根川がある。その利根川は、渡良瀬遊水池や鬼怒川ともつながっている。今日見た綺麗なマイマイカブリたちの中には、洪水で上流から流れ着いた個体の子孫も混ざっているかもしれない。河川敷でのマイマイカブリの流れを思い浮かべながら、帰途についた。