梅雨の合間の伐採地

2015.Jul.4

7月に入り、ここ数日は本格的な梅雨空。予定では今日も奥多摩にいるはずだったのだが、やむなく延期。代わりに相方が街中へ狩りに出るので、怪獣2匹とドライブへ行くことに。

北へ行って水田を見るか、南へ行くかで出発直前まで迷ったが、外に出て空模様を見た結果、南へ行くことにした。狙いは、遠い南の島からやってきたトラカミキリ。起源はよくわかっていないようだが房総半島南部に定着して久しく、発生時期にマテバシイの伐採木を見つければだいたい見られるという。雲行きを見る限り、わずかな時間だが日が差すことがあるだろう。その瞬間を狙って、出発した。


高速道路を順調に走り、南下していく。出発時にわずかに降っていた雨は止み、だんだん明るくなっていく。ただ、相変わらず空全体が雲に覆われていることは変わりがない。果たして、日が差す瞬間はいつ頃になるのだろうか。

あまり早く到着しても仕方ないので、サービスエリアでちょっと早めの昼食。苦手な長時間運転で疲れた頭もリフレッシュしたところで、地図を見て行先を考える。とりあえず、怪獣たちの運動を目的として大きめの公園に行くことにした。

11時半頃、公園に到着。車を降りてぐるっと一周してみるが、特に成果はなし。片隅に伐採木が置かれているかもと淡い期待があったが、古い枯木があるのみだった。

運動で怪獣たちも眠くなってきたところで、本気の探索開始。枝打ちや伐採といった人為は山奥では期待できないので、山間部の集落周辺に狙いを定める。地図を見て、近くにある集落のうち最も良さそうな場所へ移動してみる。

12時50分、狙い通り伐採地を発見。道路沿い50mほどと小規模だが、これだけあれば十分。雲もだいぶ薄くなっており、そろそろ薄日が差しそうな頃。怪獣1号は眠たいようなので、日陰に置いたベビーカーでお昼寝。怪獣2号を抱いて、探索開始。

樹種をざっと見ると、コナラ、マテバシイ、スダジイ、タブ、イヌマキ、クワなど。狙いのトラカミキリが好む樹種は入っているので申し分ない。


ゴマフカミキリ

今日のカミキリムシ第1号はこの個体。他にヒメヒゲナガ、トガリシロオビサビ、アトジロサビがすぐに視界に入った。伐採木上がにぎやかなので、一安心。

斜面の上に回り込んでみる。まだ下草がないところを見ると、伐採されたのはかなり最近のようだ。

マテバシイの切り株からはひこばえが伸びている。今年の春以降の伐採だろうか。


ムラサキツバメ

マテバシイといえば、この蝶。ここで発生しているのだろう、個体数はかなり多い。


ムラサキシジミ

この蝶も個体数が多い。同じく伐採後のひこばえで発生しているのだろう。

上からは斜面に積み重ねられた伐採木を一望できる。ただ、崩れる恐れがあるので見つけても採れるのは手前だけ。

状況を確認したところで、怪獣2号を抱きながら伐採木をじっくりと巡回していく。

1周目、ムシヒキアブ、エグリトラカミキリなどが視界に入ったくらい。乾燥を好むトラカミキリが材上に出現したのは良い兆候だ。このまま晴れてくれれば、きっと・・・。

2周目、少し視野を広げてみるが、状況に変化なし。さきほどより少しだけ雲がまた薄くなった感じがする。

そして、探索開始から25分、3周目に突入した時のこと。

細い枝が積み重なったところで、ついに黒い虫影を発見。腹端から産卵管を伸ばしてフェロモンを出すような仕草で、動き出す気配はない。近寄っても逃げないが、怪獣2号を抱いていては撮影は不可能。最初の1匹ということで、手を伸ばす。


アマミトラカミキリ
(ムネモンアカネトラカミキリ屋久・奄美・沖縄亜種)

ようやく見つけた個体ということで、かなり大きく、そして分厚く見える。かつて石垣島で1回だけ出会ったことがあるが、その個体より大きい。天候回復の可能性に賭けてわざわざ来た甲斐があった。

この個体が止まっていたのが、中央付近にある細い枝。雨宿りから出てきて、活動を始める直前だったのかもしれない。

この伐採地にいることがわかったので、追加を求めて探索にも熱が入る。

探索を再開して目に留まったのは、伐採木置き場の外れに積まれたマテバシイ。風通しが良く、いち早く乾きそうな位置にある。そんなことを思った瞬間、虫影が見えた。

つい先ほどまで影も形もなかったはずだが、いつの間に飛んできたのか。怪獣2号にはちょっと地面に降りてもらい、カメラを持って近寄る。

曇天なので気配にも鈍感で、かなり近寄っても微動だにしない。さきほどの個体よりさらに大きく、実にかっこいい。

2匹目も無事に採集し、探索を再開しようとするが、怪獣2号は抱っこに飽きたようで降りようとする。

斜面の上に降ろしてみると、いつものように発掘作業を始めた。こうなると動かないので、探索に集中できる。

気がつくと、薄い雲の間からわずかながら日が差し込んできた。どのくらい続くかわからないが、今日一番のチャンスが来たことは間違いない。集中力をさらに高め、視野を全開にして、探索を再開。

まずは、枯葉が目立つこのあたり。材の上にいるというイメージが強いが、それは晴天時の話。雨の時はどうしているか考えると、こんなところも見てみる価値はある。

枯葉の陰から視線を感じる。

そろそろ活動を開始しようと、周囲をうかがっているところだったか。

天気の回復に合わせて怪獣1号も目覚めたので、ベビーカーを移動。二人とも足腰は丈夫なので怪我をすることはないだろう。探索を再開する。


エグリトラカミキリ

マテバシイ伐採木の上を歩いていたところを採集。かなり太いのでクロトラカミキリかとも思ったが、やはりエグリトラだった。

次に目を留めたのは、このコナラ伐採木。キッコウモンケシカミキリがあちこちで歩いている。それを気にしないようにして、枝を眺めていく。

込み入った小枝の向こうに、トラカミキリのシルエットが浮かび上がった。このトラカミキリらしい姿が一番好きだ。すでに活動状態に入っているようで、手を伸ばすとすぐに落下した。しかし動きはまだ本調子ではないようで、眼で追えるほどの速さ。枯葉の間から飛び立とうとしたところを確保した。

続いて、そのすぐそばの立ち木。この位置からでも、黒い影が幹に止まっているのが見える。

どこかから飛来し、一休みしているのだろう。

もう少し良い角度で撮りたかったが、気配に気づいて逃げようとしたので手を出す。気温が上がって、全体的に敏感になってきているようだ。

その後、追加はないまま時間だけが過ぎていく。気がつくと薄日は消え、再び雲が厚くなってきて、怪獣1号も「帰ろう」と言い始めた。怪獣1号の言う通り、これ以上粘っても無理だろう。

14時50分、2時間ほどの探索を終えて帰途につく。かなり行き当たりばったりの採集行だったが、南国生まれの立派な姿を見られて良かった。

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