筑波山参り2015

2015.Feb.6

節分を過ぎ、梅の蕾もあちこちで膨らんできた今日この頃。にわかオサムシ屋としての活動はまだ少しだけ続く。

今回の目的地は関東平野の北東部に位置する筑波山。もちろん、ここを模式産地とするあのオサムシが狙い。色彩変異があるので、できることなら美しい黒緑型に出会いたい。東京からはちょっと遠いが成田からは意外と近いので、職場の後輩2名とともに車で出発した。


9時半、筑波山麓に到着。前夜から降った雪が山肌にまだ残っている。

凍結した山道を走るのは怖いので、午前中は河川敷へ。山での崖掘りは苦戦するだろうと予想していたので、まずは初心者でも比較的簡単に見つけられるマイマイカブリを狙う。目星をつけた場所に車を停め、長靴に履き替えて出発。

航空写真を見る限り良さそうな雰囲気だったのだが、ヤナギが生えているエリアはかなり狭い。立ち枯れや樹洞もかなり少なく、調べてみてもマイマイカブリの姿はない。下流に向かって移動していくが、良さそうな場所は見つからないまま引き返す。

車に戻る前に、ちょっと崖を掘ってみる。

合流する小さな川によって削られてできた段差に手鍬を入れる。


アオオサムシ

赤味が強い個体が出てきた。「木の根が絡まった場所」というキーワードとともに、皆でここを掘ってみる。


アオオサムシ

今度は鮮やかな緑色の個体が出てきた。その後、さらに1匹を追加したところで場所を移動することに。

少し下流に移動して、ヤナギが多く生えている場所に到達。枯草の状態や若木の少なさから見て、洪水で頻繁に攪乱される場所のようだ。時間はすでに11時、ここでマイマイカブリを見つけておきたいところ。

秋にも洪水があったようで、木の根元には漂着物がたくさん。「朽木」「部分枯れ」といったキーワードとともに、それぞれ朽木を割ったりしながら進んでいく。

しかし、ここで予想以上に苦戦を強いられる。カタツムリはそこそこいるし、マイマイカブリがいない方が不思議な環境。


マイマイカブリ

ようやく1匹を見つけたのは探索開始から50分後。

このヤナギの部分枯れに1匹だけ入っていた。

この後、追加個体を得ることなく車に戻る。一体、なぜ見つからないのだろうか。もしかして、攪乱が激しすぎたのだろうか・・・・。

昼食後、山に移動していよいよツクバクロオサムシを探す。道が整備されているということは一般の人も多く来るということなので、道路のすぐそばの崖は掘らず、ちょっと外れた場所を探して行く。

手始めに、みんなでこんな崖を掘る。


スジアオゴミムシ

狙いの種に匹敵する大きさだが、脚の色が違うのですぐにわかる。ほかにはムカデ、クモなどが出てきたくらい。

この付近で散り散りになって探索していくが、誰一人としてオサムシを掘り当てられない。道沿いの崖に多くの個体が潜っているからなのだろうか。1時間ほどでこの場所を諦め、次の場所へ移動する。

もう1つ目星をつけていた場所があったのだが、なんと積雪により通行止め。徒歩では行けるものの、雪に埋もれた崖を掘るのはあまりにも無謀。来た道を引き返しつつ、地図と周囲の樹相を比較しながら良さそうな場所を探る。

そして、とある林道へ。車の切返しのための空間があったので、そこを掘ってみる。

わりと柔らかくてオサムシの越冬に適した状態ではなさそうだが、木の根が入り込んでいる場所をピンポイントで狙って掘ってみる。すると、崩れた土の中に1匹の虫が姿を現した。


ツクバクロオサムシ

午後3時、ようやく本日最初の1匹。もっとも普通に見られる体色だ。

さらにその近くをピンポイントで掘ってみる。


ツクバクロオサムシ(黒緑型)

今度は色違いの個体。3年前には見つけられなかった色で、薄暗い林内でもとても綺麗に見える。

ここには生息していて掘り出せるとわかり、後輩たちも熱心に掘っていく。すると、後輩T氏もツクバクロオサムシを発見する。

これも黒緑型の個体。

掘り出したのはこんな場所。緩やかな斜面にコナラの根が絡んでいる。

その後、特に何も得られず日が傾いていく。ここで粘っても追加個体を得ることは難しいと判断し、最後の場所へ。

道路沿いにあるこの場所、一見するとオサ掘りできそうには見えない。普通なら何も考えずに通り過ぎるだけの場所。

しかし、ササの下にはオサムシが潜りそうな崖がある。周囲を見渡し、ここぞという場所に手鍬を入れる。


ツクバクロオサムシ

一掘りで見つけることができた。後輩を呼び、発見状況を見せながら解説。

さらに、わずかに場所を移してもう一掘り。

幅5mほどの範囲で、良さそうなのはここ。狙いを定めて手鍬を振り下ろす。

またしても一掘り。越冬窩がなんとか残る形で見つけられた。


ツクバクロオサムシ(黒緑型)

薄暗い林内で見るよりもさらに美しく見える。

この一帯で最後の粘り。ここの崖は意外と固いので、闇雲に掘っても出る場所ではない。越冬場所をピンポイントで察知できるかが命運を分ける。キーワードは「根際」、後輩もそれぞれ崖に向かって手鍬を振るう。

例えば、こんな場所。根はたくさんあるとはいえ、寄らば大樹の陰。


ツクバクロオサムシ黒緑型

例えば、こんな場所。左側に背負った石で、モグラの襲撃リスクは半減する。


ツクバクロオサムシ黒緑型

ここでは30分ほどでそこそこの個体数が見つかった。黒緑型の比率がとても高く、実に半分以上であった。3年前は木の棒で挑み、通常色をわずか2個体だったのが信じられない。

一方、後輩2名は残念ながら1匹も掘り出せず。全く同じ崖を探していても、掘る場所がわずかに違ったのだろう。単純作業に見えるオサ掘りだが、実はオサムシの気持ちを理解しないと意外と難しい。ここに来るのがもっと早ければ、結果は違ったものになっただろう。

これに懲りず、また一緒に採集に行きましょう。

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